ぶっきらぼうな。あの人の話
彼は、60歳代、男性、独身。
仕事は、主に電話での受付業務。
特技は、車などを修理できること。
言葉は雑、対応も雑、身なりも雑、雑、雑。
そんな彼には、苦情が来る。
職員からも、電話の相手先からも、苦情が来る。
なんども、何度も、なんども、苦情が来ても、彼は変わらない。
そんな彼は、たまに話しかけてくる。
口数は少ないが、いろいろな人に話しかけているのをよく見る。
そんな彼と自分の伴侶は、たまに一緒に勤務をする。
伴侶は、「いつもご飯を一緒に食べたがるんだよね~」と楽しそうに話す。
伴侶は、そんな彼が呟いた一言について何気なく話す。
「皆が自分を嫌がるんだよね~。辞めさせたいんだろな。そろそろ辞めようかな」と…
そんな彼は、その後も、何年も何年も、働き続けている。
伴侶は、そんな彼に車を直してもらったことがある。
一度目は、成功!!!
そんな彼に、後日、自分から礼を言う。
「伴侶がお世話になって、有り難うございます」
そんな彼は、頭を掻きながら照れたように笑う。
伴侶は、そんな彼に、またまた車の修理を依頼する。
二度目は、失敗!!!
伴侶は、「参った~。車が動かず、歩いて帰ったよ」と楽しそうに話す。
そんな彼に、後日、自分は会釈をする。
そんな彼は、頭を掻きながら気まずそうに会釈をする。
伴侶は、懲りず、そんな彼に3度目となる車の修理を依頼する。
三度目は、作業半分、一旦、終了!!!
小鳥たちが彼を見つけるとドンドンと寄ってきたそうだ。
伴侶は、そんな彼について「小鳥に餌をやるから、たくさん小鳥が寄ってきて作業が進まなくて~」と楽しそうに話す。
突然だった。
本当に突然だった。
そんな彼が、事故にあった。
「伴侶がお世話になった」とお礼を伝えることができなくなった。
人を慕う彼。
小鳥を慕う彼。
周りの人に嫌がられていると思っても働つづけた彼。
彼を慕う人たち。
彼を慕う小鳥たち。
そんな彼は、不器用なだけだった。
周囲の人になんと言われようとも働き続けた強い彼。
彼が生きた証を、伴侶とともにココロに刻む。
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