安全装置とは何か、電気制御設計をいま一度考えてみる
FAにおいてもそうでなくても、機械には必ず非常停止スイッチやその他の安全装置が組み込まれています。
そして安全装置がはたらいた時、当然ですが機械は緊急停止します。
これだけ聞くと実に当たり前のお話なのですが、緊急停止せよといってもすぐに止めるわけにいかなかったりするのが機械というものでもあるわけで、このことは電気制御を設計するうえで非常に重要です。
電気制御設計たるものFA機器を動かすことばかりではなく、安全に停止させるにはどうすればよいか、そもそも安全とは一体どういうことなのかいま一度考えてみるというのも一興。
ということで、ちょこっと書いてみました。
車はすぐに止まれない
いきなり交通標語みたくなってますが、いったんFA機器を車におきかえてみましょう。非常事態だからといって走行中にエンジンを止めて外部に脱出するなんて光景は映画ぐらいでしか見たことありませんよね。
それに、もし本当にエンジンを止めてしまったとしてもその瞬間にスピードがゼロにはなりません。当たり前ですが慣性がはたらく限りそのまま走って、そのあとで止まります。
瞬間的にスピードがゼロになる場合があるとすれば、それこそ何かと衝突した時です。そのとき搭乗者がどういうことになるかはご想像のとおりなわけで。
安全に停止させよう
先の車の例えについては、機械でも同じことがいえます。
いきなりモーターの電源を遮断しても惰性で動きますし、急ブレーキをかければワークや機械そのものが破損し復旧ができない、なんて結果をまねくことが往々にしてあるのです。
緊急停止する場合であってもすぐに止めてよいものはすぐに止める、すぐに止められないものは壊さないように減速して止める、このような配慮をしながらハードとソフトの両面で電気制御設計を進めていく必要があるのですね。
再起動についても考慮が必要
緊急停止したあとは、当然のことながら処置が終わりしだい再起動することになります。
朝一の稼働開始時点ではワークがない状態でなおかつ原点位置からスタートしますが、緊急停止からの再起動はワークが残っており原点以外のポジションから再開します。
ワークをすべて取り除いて原点復帰してから再起動、という方式が一番無難ですが、それができれば苦労しないんだよと言いたくなるような造りをした機械や設備、ラインも世の中には数多くあるわけで。
イレギュラーに強くあらねばならないのが電気制御設計の難しいところではありますが、だからこそ腕の見せ所でもあります。
安全装置が故障することだってある 〜フェールセーフの考え方
基本的にあってはならない話なのですが、安全装置の故障や断線によって正しく機能しなくなることも時にはあります。あっちゃいます。
そしてここで本当にあってはならないのは「安全装置がはたらかなかったので機械が止まりませんでした」という事態です。これがあると最悪人命に関わる重大な事故につながります。
そこで、a接点だb接点だというお話が出てきます。制御担当でなくてもFAに携わる方は聞いたことがあるのではないでしょうか。
たとえば非常停止スイッチをb接点で使えという話はよく耳にすると思います。b接点で使うということは、たとえば断線があると非常停止スイッチが押された状態と同じになります。つまり機械は動かなくなります。安全です。
これがa接点で使うよう設計してしまうと、非常停止スイッチを押しても断線しているので電気信号が通らず、スイッチが押されたことが認識されません。つまり機械は止まらず動き続けます。危険です。
このように、トラブルがあった場合に安全側にはたらくような仕組みにしようやって考え方をフェールセーフといいます。
危険な操作が出来ないように 〜フールプルーフの考え方
人間という生き物は、とかく近道作業をしたがるようにできています。
楽をするために機械を作るぐらいですから、楽に動かそうともしたがる、そういうものなのです。
精神論で近道作業を防ぐことは残念ながらできません。近道作業をやめようとはどこのどんな現場でも言います。貼り紙もあります。
しかし、それだけで近道作業による事故を防げないことは歴史が証明しています。
近道作業が物理的にできない制御構造を考える必要があるのです。
たとえば安全カバーを全て閉じていないと起動出来ず、起動中に安全カバーが外されると緊急停止するような構造にします。
たとえば起動スイッチを左右に離して2つ用意し両手で押して起動させる構造にすることで、手を入れたまま装置が動き出すことがないようにします。
このように、安全のために間違えた操作が出来ないような構造にしようやって考え方をフールプルーフといいます。
めんどくさいから止めたくないという心理 〜真・フールプルーフ(?)
人間という生き物は、それでも近道作業をしたがるようにできています。
安全装置が壊れて機械が動かなければ、安全装置をショートさせて無理やり動かそうとします。
起動スイッチが左右に離れてて作業がやりづらいなら、片方のスイッチに何かを挟んでスイッチ一つだけ押せば楽に動かせるじゃんとか考えちゃったりします。
ワークが詰まって取り出さなきゃなんて時は侵入検知がきいてラインが止まったらめんどくさいから安全柵をよじ登って取りに行こうとします。
高所作業車を使うのがめんどくさいからフォークリフトにパレットを何十枚も積み上げて天井の照明交換のリフト代わりにしようとしてしまいます。
熟練度や精神面の問題ではなく、人間というやつはそういうふうにできているのです。
まさに愚か者(fool)です。
が、それでも事故がないように安全について考え続けねばならないのが電気制御設計でもあるのです。
まとめ
安全に動かせ、安全に止めろ、安全に再起動させろ、安全装置が壊れることも考えろ、安全装置を外せないようにしろ、人は楽をしたがるもんだ・・・
なんかもう無茶苦茶だろと言いたくもなるような話ですが、安全について考え何かしら答えを出すというのは電気制御設計の奥深さと面白さが垣間見える作業でもあります。
フェールセーフとフールプルーフの考え方はとても大事です。
しかしそれだけでは本当の意味で安全とはならず、実際の制御設計にほどよく活かしてはじめて安全に使える機械として仕上がっていくのです。
電気制御設計において、切っても切れない安全についてのお話でした。
それでは
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