【詩】存在の密度
となりにマンションが建った
夜に溶け込んでなんとも希薄だ
いずれ人々が住み明かりがともり
笑い声がこぼれてくることだろう
この希薄さはいまだけのもの
家が家として機能してしまったら
存在の密度は濃くなってしまう
たとえ人が立ち退いたとしても
もとの空き家に戻ったとしても
密度は変わらず濃いまま
ことによるとさらに深くなる
やがて自らの密度に耐え切れず
取り壊されて更地になるのは
家も人も同じかもしれない
人は非常に密度の濃い生き物だ
それゆえ重く抵抗も激しい
人もこのマンションのように
生まれたての空っぽのまま
広々とした存在に戻れたなら
どれほど心地いいだろう
月明りのにじむしずかな夜更け
わたしは街をそぞろ歩きながら
この身を少しずつ溶かしていく
少しずつ
少しずつ