父の資格 4
中学生になっても、りんは相変わらずだ。
悪いことに亜季はりんに何か取り柄があると信じて疑わない。
こいつの取り柄は、俺を怒らせるのが天才的に上手いってことだけじゃねぇのか、と銀次郎は思う。
りんのせいで己がこれまでに培って来た哲学も精神論もどれだけ脆いものかと思い知らされる。
ほんの一時、俺にほんの一時でいいから心の平安をくれ。
家に帰ると未だに幼児みたいに猫を相手に遊んでいる。ひどいときは折れた傘と遊んでいる。
あらゆるコネと金を使って高校に突っ込もうとしたが、あいつは最低ラインの点数すら取れなかった。
金を渡した教授に「ちょっと、この点数じゃね、ごめんね、林君。」と言われた時の俺は偉かった。こんな屈辱に耐える精神力があるとはな。
亜季とりんに「俺が何とかしてやる」と豪語していた銀次郎は、その日、家に帰る車中でこの過酷な現実を二人に告げる困難に一人煩悶した。
―あろうことか亜季は、あははははと笑った。
りんに伝えると
「わぁ、凄い!0点だったの!?」と言った。
「さぁ、0点かどうか分かんないけど・・・」
腹を立てようにもどこに腹を立てるべきか分からぬまま、まともに答えてしまった。
どう慰めればいいのかと悩んでいた自分が行き場を失って亡霊のようにさ迷っている。
「なんだ。」りんは言う。
「知ってる?ちゃんと書いた答案で0点取るのって、ちょ~難しいんだよ。答えのどれかは大概合っちゃうの!」
大丈夫だ。りん。0点が取れなくたって人は生きて行けるさ。誰だって完璧じゃないからな。
俺だって、0点を取れなかった・・・銀次郎は亜季の所へ飛んで行って「馬鹿野郎!だから学校に行かせろって言ったじゃないか」
と怒鳴った。