私は京都に行ったことがない
私は修学旅行を小学生の頃に原爆ドームを見た一回しか体験していない。だから京都に行ったことはない。茶道の先生から京都は夏は暑くて冬は寒いことと聞かされたことと、ネットで人が多すぎて堪能できない話と京都語は難しい話を見ただけだった。
学生時代から精神疾患になった私には修学旅行に行く選択肢はなかった。お先真っ暗なのにそんなお金はという気持ちと、好きでもない人間との外出にそんなお金を使うなんて勿体ないの気持ちの半々であった。
私は今もお金があるわけではないが、たまに京都を行ったことがある場所にするか、行ったことない場所にするかで悩むことがある。私の想像する最高の京都が消えることは惜しいと思う。私の想像する京都とは和風な音楽と景色で想像したもので、現実には音楽ではなく人のガヤが響き、視界も人だらけなのだ。ポケット金銀とか、レトロスペクティブ京都が私の中で特殊に組み込まれている京都で、私はこのネオ京都で茶碗蒸しを食べて湯に浸かり、布団に入って、一人満足してしまった。30秒の存在しない京都旅行。現実には風呂も布団もフラッシュバックで居心地悪いので、架空の京都でしか味わえないのだ。
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