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ドライブ アイランド【第六章 消えゆく現実】
扉の先で待ち受けていたのは、さらに異様な空間だった。そこは時代も場所も歪んでおり、あたり一面にひび割れた建物が散らばっていた。かつてこの島に住んでいた者たちの残骸のようなものが、どこかで彼らを見つめているような気がした。
「この島は、一度壊れたのよ。」
サチは静かに呟いた。「誰も知らない、秘密の歴史がここにはある。誰もそれを語らず、ただ忘れ去られることを選んだ。」
「でも、それがどうして私たちに関係あるんだ?」サトルは叫びそうになったが、サチは振り返らなかった。
「触れてはいけないものに触れてしまった。それだけよ。あとは、島が私たちを飲み込むだけ…」
その瞬間、サトルは何かが彼の背後で動くのを感じた。振り返ると、闇の中から何か巨大な影が蠢いていた。それは形のない存在で、ただ島の過去の亡霊のようなものだった。
「走れ!」サチが叫んだ。
二人は逃げるようにしてその場を駆け出した。周囲の風景が次第に崩れ始め、闇が迫り来る。サトルは必死で走り続けたが、背後から迫る何かが次第に近づいてくるのを感じた。
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終焉の地
洞窟から外に飛び出した二人は、ついに島の高台にたどり着いた。そこには、朽ち果てた灯台が一つだけ立っていた。息を切らしながら、二人はその灯台に逃げ込んだ。
「ここなら…大丈夫かもしれない。」サチは苦しそうに息を吐いた。
だが、サトルはもはや何も信じられなくなっていた。この島で起こったすべてのことが、彼の現実感覚を失わせていた。彼はサチを見つめ、問いただした。
「サチ、俺たちはどうなるんだ?」
サチは静かに目を閉じた。「この島からは、もう逃げられないのかもしれない。でも、少なくとも…一緒にいることができる。」
その言葉は、サトルにとって救いのようでもあり、絶望のようでもあった。
静寂の終わり
夜が明け、瀬戸内海の波音が再び静かに響く中、灯台の頂上から見える風景は、何事もなかったかのように美しかった。だが、サトルとサチはもうその風景を見つめることができなかった。
島は、彼らを永遠に飲み込んでいたのだ。
そして、すべてが静寂の中に消えていった。
ここから先の物語は、既に語られたものとは異なる。サトルとサチは瀬戸内海の静かな波音の中でその島の真実に囚われ、彼らが知ってしまった闇は、ただ彼ら二人を飲み込むだけでは終わらなかった。島の過去は、未来へも続いていたのだ。