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ミロのビーナスからロダンまで

きれいだなあ・・・
どうして、こんなに見事な彫刻ができるんだろうか・・・
どんな人が彫ったんだろうか・・・
その時、どんなことを考えていたのだろうか・・・

「信仰の対象」を彫る時は
樹や石の中に眠っている像を掘り出しているのだという声も聴く・・・

しかし、ギリシャやローマの彫刻が、信仰の賜物だという気はしない。
あまりにも「人間臭い」からである・・・
プラトンがいうように「美のイデア」への憧れが原点かもしれない。

彫刻といっても「神殿や墓」に刻まれたものがすべてではないだろう・・・
戦争に勝った記念に「凱旋門」が造られたように・・・
もっと自由に、「感性」にそって彫られたものがあったハズである・・・

教会建築の一部としての彫刻


中世の彫刻は、信仰の証のような作品が多く、巨大なものより、木彫りで品のあるものが多いです。大小の教会建築の内部を飾るものが多く、現代風に言う独立した「作品」はありません。

十字架上のイエス像

勿論、聖人をはじめ、信仰の力を強めるための彫刻は、数知れず、素晴らしい「作品」もありますが、今回は外します。

ルネサンスとは「再生」という意味です


痩せたイエス像の「現世否定の美」から「現世的肉体的な美」の再生・復活です。
ギリシャ・ローマの絵画は残っていませんから、作品は彫刻です。
山から掘り出したものが多い(発掘品)だからです。数は少ないですが、そのレベルの高さに圧倒されます。ヘレニズム時代のものが多いですが。

ラオコーン

作者不詳ですが、魅力的ですね。
圧倒的な肉体美が、きわだった造形でコントロールされています。
トロイ神官のラオコーンと二人の息子が、トロイの木馬に危険性を指摘したので、ギリシャ軍の守護神(アテナ)が彼らをとらえ、海蛇に苦しめさせたという像です。
発掘(ローマのブドウ畑)に立ち会ったミケランジェロが、素晴らしさに驚愕し、大きな衝撃と影響を受けたことは有名です。

私もヴァチカンの美術館で初めて見ましたが「唖然」としました。
男性の色気のある肉体美が、ミケランジェロの「その後の造形」に強く影響したことがわかります

瀕死のガリア人

もう1つ。「瀕死のガリア人」です。ローマの捕虜になったガリア人の像ですが、気品もあり、素晴らしい彫刻です。こうした作品の背景には、傑出したレベルが高い作品が沢山あったハズです。
 
ヘレニズム期はさらに
[体や衣類の曲線が派手になり、前後左右どこから見ても美しい彫像]が特徴です。

サモトラケのニケ

フランスのルーブル美術館に行くと『ミロのヴィーナス』と『サモトラケのニケ』の存在感と美しさに圧倒されますね。

勝利の女神ニケは、運動具メーカーのナイキのデザインになっていますし、映画「タイタニック号」の象徴的な画面でも印象に残ります。

ルネサンスの巨匠たちの作品
ルネサンスの美を生み出すスポンサーのメジチ家の存在も忘れることができません。天才たちは、それぞれ個性的です。

ダ・ビンチは、万能の天才で、絵画はその中の1つにすぎませんでした。ミケランジェロは、自分は彫刻家だといっています。彼のピエタの聖母マリアは恋人の死を悲しんでいるマリアの感じです。実際に観ると随分小さな作品です。大理石だから、ひときわ美しさが際立ちますね。

ピエタ

彫刻家ミケランジェロの存在は、「ダビデ像」を抜きにしては考えられないです。本物はフィレンツェのアカデミア美術館にあるが、巨大な作品です。

ダビデが強敵を前にして立ち向かう姿ですが、
この像についてはいろいろなコメントが出されているので、いまさら私が触れるまでのことはないでしょう。
1501年から1504年にかけて制作されたので、すでに500年以上経過していますが、一目見ただけで威圧される迫力です。

ダビデ像

この時代にあって、男性の全裸像で、割礼がされていないということで、話題になったことだけ触れておきましょう。彫刻家にとって「至高の美」は、人為的な処置は許されなかったのでしょうが、

私は、ミロのビーナス(女性の裸像)を知っていたと思いますから、ミケランジェロは、当然意識して裸像を制作しただろうと思います。

 近代彫刻はロダンから

新しく経済的な実力を持った市民たち(ブルジョワジー)は、絵画だけでなく、彫刻にも関心を寄せました。これの相応して優れた作品がたくさん生まれましたが、そのきっかけを逞しく謳いあげたのはロダンです。

カレーの市民

「カレーの市民」という作品は、百年戦争でイギリスに敗北したカレー市を救済するために、「英雄的自己犠牲」を献じた6人像を製作することを、市はロダンに依頼しました。

意気軒高とした勇者の像を期待したのに、ロダンが製作した作品は、悩み・苦しむ「人間像」だったので、市は怒ってしまい、受け取りを拒否したというエピソードもあります。

実際に、カレーの港町に行ってみると、敵国イギリスに近く、城壁に囲まれたカレー市への入場を許可する「鍵」を預かった市民の代表者の悲痛な気持ちがわかるようなきがします。

この英雄的な行為を称賛する声に対して、ロダンは「個人の内面」をほり起こした作品を提示したのですから、賛否が同時に起こったのも理解できます

ここにロダンの近代性を見ることができます。内面を凝視する彫刻です。明らかにルネッサン期の彫刻とも、宗教性が高い作品とも異なりますね。

貴方は、どのように受け止めますか?

考える人

そして、ロダンといったら「考える人」ですね。
彼の「地獄門」の入り口の小さな像ですが、現在では、像が独り歩きして、あちこちにレプリカを見ることができますが、
この像の「右手」の位置が不自然ですね。

ここが、ロダンのロダンたる造形美ですが、このポーズをやってみて下さい。とても、考えるどころじゃないですね。肩が凝っていまいます(笑)

正直言えば、ロダンは「暑苦しくて」「押しつけが多い」と感じます。
その点、ブールデルの方が洗練されていて近代的ですね。

ブールデル

彼の作品は、上野の国立西洋美術館をはじめ、日本に沢山あります。
ご覧になった方も多いでしょう。
近代彫刻には、宗教色はありませんが、作家の自己主張が強いですね。

ヘンリー・ムーア

そして、ヘンリームーアなど、新しい抽象的な彫刻が沢山生まれました。
これについては、改めて書きます。

直島の地中美術館は抽象的な彫刻の殿堂

草間彌生

抽象的な彫刻が、集まっているのは、瀬戸内海の「直島」です。
安藤忠雄さんが設計した「地中美術館」は、環境に配慮して造られたものですが、今度、新しい美術館を造るのだと、友人・知人たちがいっています。

豊島アート

私は「豊島」のアート空間が好きです。 
  

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