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幻魔 鬼武者というゲーム
幻魔 鬼武者は初代Xboxで発売された初代鬼武者の海外発売版である。
日本では20万本出荷(確か)し、初代Xboxのゲームとしては日本売上1位の記録を誇る。とは言え初代鬼武者の5分の1に満たない数字であり、プレイした人は少ないはず。
ゲーム内容を知りたい人も多いと思われるため、前回と同様、世間の評価ではなく個人的な評価だけれども紹介させていただく。
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初代からの変更点
幻魔鬼武者はバイオハザードでいうディレクターズカット版であるが、かなり多くの追加要素があり、初代をプレイした人でも新鮮な気持ちでプレイできるゲームとなっている。んもースタッフさん頑張りすぎ。
以下に主な変更点を箇条書きします。
全体的な難易度向上及び「難しい」モード追加
ムービースキップの追加
溜め攻撃の追加
緑魂の追加
攻略ルートのアレンジ
雑魚敵1体、ボス敵2体の追加
左馬介の鎧の変更・追加
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細かいのも他にありますが、重要なのはこのあたりですかねえ。
上記の多くの追加要素が付与され、華々しく販売された「幻魔」はまさに「鬼武者」の完全版と言え⋯る訳ではありませんでした。
実のところ、幻魔は幻魔で問題点を含むゲームとなってしまっていたのです。
結論から言うと、鬼武者HD発売の際、「初代じゃなくて幻魔を移植しろよ」という意見を目にしましたが、私は初代の移植で良かったなと思っています。どっちも移植しろという意見には、まあ同意。
何が良くて何が良くなかったのか?ということで今回は変更点を好き・嫌いに分けて紹介していきます。くどいですが、評価サイトの評価とは異なる完全に個人的な評価であり、世間の評価と違うようです。
筆者が好きな変更点
・全体的な難易度向上及び「難しい」モード追加
前回の記事で初代の問題点として難しいモードがなく簡単であることを挙げましたが早速この部分にメスが入りました。海外仕様ということで張り切っているのか、何だか難しすぎる気がするがとにかく私は嬉しい。
幻魔の簡単モードが初代の普通モードに匹敵する難しさ。その上に普通、難しいと2段階の難易度があり、かなり歯ごたえのあるゲームとなっている。メガドライブのゲーム並みに上方向のみに豊富な難易度。
・ムービースキップの追加
よくぞ入れてくれた。言う事無し。
・攻略ルートのアレンジ
割と新鮮な気持ちで楽しめました。序盤から結構変わっており、かえでルートなんてガラリと変えています。新マップも若干用意されており、新しい最強防具を取得できる隠しダンジョン・隠しボスの追加もあり。
ただ、アイテム配置の変更があってもキャラのセリフは変更されていない。
「滝の裏に斎藤道山の宝がある」とのセリフがあり、初代では滝の裏に最強の鎧が置いてあるのだが幻魔では火縄銃が置いてある。これが宝でいいのか⋯?
・雑魚敵1体、ボス敵2体の追加
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雑魚敵として闇傀儡が追加。後のシリーズにも出てくる。正統派剣士キャラだがいきなり床から出てきたりウロウロしてたり新しい挙動をする。倒れても追い打ちできないのが若干鬱陶しい。
そしてボス敵①として綾女の追加。見た目は可愛いが通常攻撃が無効の驚異的な強さを誇る殺人人形。分かりやすく言えばバイオ3のネメシスのオマージュ?キャラで色んなところに現れたり、扉を越えて追いかけてくる。とはいえ出現場所は固定なので一度覚えれば簡単に対処可能。周回ごとに配置がランダムなら楽しめたかもしれない。一応倒すと大量の魂を落とすが正直割に合ってないかな。
最後に、ボス敵②として鬼の鎧の追加。魔空空間クリア後、追加のダンジョンをクリアした先にようやく現れる。倒すと最強の鎧を落とすが、ここまでやってこんなもん?な性能。なお本人の性能について、こいつも正統派剣士だが近距離攻撃の他に遠距離掴みや全方位オーラ放出などの搦手を使い、所見では対処が難しい。⋯が、体力が低すぎてすぐ死ぬ。2番目のボスより体力低い。直前に戦う綾女の方がよっぽど強いので印象に残らない残念なボス。
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追加敵に関してはあまりいいこと書いてない気がしますが、いずれも個性的で気に入っています。
左馬介の鎧の追加・変更
海外ウケを意識したのか、拾える鎧が忍者コス・西洋風甲冑に変更され、更に最強の鎧である鬼神大鎧が追加されました。見た目的には楽しくて新鮮。
筆者があまり好きではない変更点
ここからはなぜ幻魔が鬼武者の完全版とはなり得なかったのか、解答編です。上記のいい点を打ち消すほどの問題点だと個人的には思っていますが、どこでも幻魔って高評価なんだよなあ⋯
・溜め攻撃の追加
幻魔では攻撃のレパートリーとして新たに溜め攻撃が追加されました。これは後年作でも修正を加え採用されています。
幻魔の溜め攻撃の特徴としては最初から3段階の溜め攻撃ができ、1段階チャージで牽制攻撃、2段階チャージでダッシュ攻撃、3段階チャージで広範囲攻撃を放つというもの。
この3段階目の広範囲攻撃が曲者で、率直に言うと強すぎ。炎龍剣の3段階溜め攻撃だけでガンガン進めます。RTA走者もこればっかり使ってるからやっぱ効率求めればそうなるんだなと。この技一つの追加で鬼武者の絶妙な戦闘バランス(前回記事参照)が簡単に崩壊し、敵から離れて溜めて近づいて溜め攻撃を放つ作業ゲーと化した。
・緑魂の追加
攻撃を当てると敵から緑魂が出ることがあり、5個集めると一定時間無敵・攻撃強化・体力回復する。後のシリーズの「鬼武者変身」の原型だろう。本作品ではラスボス戦後のムービーで初めて鬼武者変身するため本作は「鬼の解放」としてその辺りを濁している。
後の作品にはない独自要素として綱引き要素があり、緑魂はザコ敵も吸ってきて、吸われると敵が強化される。×ボタンを連打するとそれを阻止して魂をこっちに引き寄せられる。
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何が問題かというと、この緑魂、結構な頻度で出現するのだ。その度に相手に吸われないようボタン連打しなければならない。皆さんボタン連打って楽しいですか?私は嫌いです。疲れるし。
魂を吸われないためにはかなり頑張ってボタン連打する必要があり、結構しんどい。戦闘テンポも削がれる。緑魂を吸って強化された敵を倒すと経験値魂を多く落とすため、あえて吸わせる手もあるがその状態で囲まれるとかなりしんどいので、大体の状況でボタン連打するのが無難に落ち着く。
この綱引き要素は2以降には引き継がれなかった
最後に
溜め攻撃と緑魂の追加は鬼武者のゲーム性をひっくり返してしまった。これが私が「幻魔鬼武者」を手放しで称賛できない理由である。
しかし、本作で振るわなかった追加点は次回作で大きく改善することになった。そのため、「幻魔」がここで出たことはシリーズにとって大きな意味があることと思う。
個人的には初代の方が好きだけれども、スタッフはより歯ごたえのあるゲームを作ろうと努力したに違いない。そのスピリットは確かにこのゲームをプレイすることで感じられる。初代に飽きたら是非プレイしてもらいたい佳作。
次回の記事では鬼武者2について書きたいと思います。
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