「恋するピアニスト フジコ・ヘミング」を見て
60代になって評価された遅咲きピアニスト、フジコさん。
波乱万丈の人生を送り、今年4月、92歳でこの世を去った。
映画は死去するまでの4年間を撮影した作品だ。
90代のフジコさん。演奏は間違えるし、曲のテンポも独特だ。
なのにフジコさんのファンは多い。
その魅力はなんだろう?
テレビ番組で対談した美輪明宏さんは、
フジコさんのことを「子どもみたいな純粋な魂を持った人だった」と追悼した。
私もそう思う。
とてもチャーミングな女性だなと思った。
ぶっきらぼうなのかと思いきや、とても愛嬌がある。
他人に知られたくないような、「己の弱さ」「不安」や「初恋」の話もしてくれる。
80~90代になり己の体形や容姿に自信がなくなってきたことも
笑いながら話してくれる。
それでも「今、恋をしているの」という彼女は
とてもかわいらしいなと思った。
フジコさんの世界感も素敵だ。
部屋の設え、置物も、彼女のお気に入りのもので溢れている。
まるでアンティークショップにいるような居心地の良い空間だ。
洋服もこだわっている。
アンティークの衣類をほどいて、自分で仕立て直しているのだという。
90代でも髪を脱色したり、リボンなどで飾りつけたり。
何歳になってもオシャレさんだなと思った。
そして一番尊敬したことは、90歳になっても精進しているということ。
毎日ピアノのレッスンは欠かさないという。
老いも感じて悔しい思いもしているであろう。
それでも表現者として高みを目指すフジコさんは、
とてもキラキラしていた。
もし彼女が自分の近所で居酒屋を出していたら、
何度も会いにいきたくなるようなそんな人だった。
残念ながらこの世を去ってしまったが、
映画を通じてフジコさんへの思いを馳せたい。