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「ねえキスしよ」(Y#3)

 「こんばんは〜」

 ショートカットで金髪の華奢な女の子がそこには立っていた。

 部屋に招き入れてソファに腰掛けて、「綺麗な子が来て驚いたよ」好みの顔ではなかったのだがとても可愛らしい子だった。「えへへーありがとう」くしゃくしゃな笑顔でそれに答えてくれた。

 挨拶もそここに会計をお願いされた。渡した金額を数えて紙幣をテーブルの上に扇型に並べた。こんなことをした女の子は初めてだったので「仕舞わないの?」と聞いてしまった。

 「前に仕舞った財布から客にお金取られたことあんねん。それからは帰るまではこうやっておくねん。これなら何かあればすぐにわかるんよ」

 なるほどと感心してしまった。仕舞わずに逆に出しておくことで取られることを防止する。これも派遣で働く女の子の自衛手段なのだ。

 「お兄さん、現金持ちすぎだから気いつけな。客のお金や持ち物を取る子もいるから」確かに見ず知らずの人間と密室で会うことをしているのだから気をつけなければいけないのかもしれない。

 急に関西の言葉に変わったので出身を聞いてしまった。予想通りの所からここへ来ていた。それくらいわかりやすいイントネーションだった。

 それでも東日本に出稼ぎに来ると標準語にしているようだった。特にこの土地でも「怖い」と言われてしまっていたようだった。

 「全然大丈夫だから。気を使わなくて良いよ。むしろ自然な方が良いな」

 高校生の時に短期だが住み込みのバイトをした時に彼女の出身地の人が一緒だったこともあってイントネーションには馴染みがあった。
 
 「お風呂準備してくる」また標準語に戻っていた。

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