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嬢をめぐる冒険(N#9)

その後は彼女と会えるタイミングは巡ってはこなかった。東京の在籍店にもあまり出勤していないようだった。

ガチ恋でもないし、まったく依存もしていない。それでもふとした時に思い出してしまうのだった。

わかるのは彼女がお店に在籍しているか、出勤しているかくらいのことしかない。それがなくなれば自然と忘れていくのかもしれない。あくまでお金と時間を使った遊びなのだ。販売が終わってしまう商品と同じである。

僕の地元の彼女が出稼ぎに来ていた店は閉店してしまっていた。支店だったらしく本店は少し離れた街に残っているようだった。

僕は女の子に頼まれると口コミを書いてあげることをよくしていた。閉店してしまったり、在籍がなくなってしまうと女の子の写真は掲載されなくなる。それでも口コミの文章だけは残るのだった。彼女に書いたものも文章だけが残されていた。

ある日、女の子に口コミを頼まれた。その次の日の朝に文章が審査されて承認されたか確認するために口コミのページを眺めていた。すると目を疑うものが飛び込んできた。不思議なことに彼女に書いた口コミのところにサムネイル写真が表示されていた。クリックすると「ページありません」と表示される。「バグなのか?」と思い、本店のページを見てみた。

 彼女は出勤になっていた。

本店ページに登録があれば支店ページにも同時に表示されたりするような仕様なのだろう。支店のページも基本情報だけの色気のないページだけは残されていた。

少し遠いが仕事が終わってからでも行けない距離ではなかった。しかし、写メ日記もまだ掲載されていなかった。しかも出勤は平日の4日間だけのようだった。「ダミー出勤かもしれない」そんなことも考えたが、一度は在籍から消えていたはずなのだから店が勝手に写真等を掲載していることになる。出勤時間が過ぎてサイトに変化があるか様子を見ることにした。

見かけたのは偶然でしかなかった。出勤したとしても4日である。気づかないまま時間が過ぎ去ることだってあったはずだ。ネット上の情報なんてそんなものだ。サムネイル写真の変化に気づいくことができたのは、彼女が然りげなくではあるが僕の頭の中に住み着いているからだろう。

 「波長が合っていると思います」

最初に出会った夜の彼女の言葉が頭を侵食していった。

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