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「ねえキスしよ」(Y#5)

 僕は大体は女の子のプレイスタイルに合わせるようにしている。彼女はいわゆる攻めるタイプの嬢だった。だから彼女に身体を委ねた。

 本当に攻めるのが得意だったのだろう。僕が果てても攻め続けようとした。「もう無理」と僕が悶えているのを見て笑顔を見せるのだった。

 プレイ中も力が入ると「力抜く!」と言われた。「そんなこと無理だわ」僕は可笑しくて笑ってしまった。今まで女性と肌を合わせている時にはない感じだった。小さな子供が友達と遊ぶ感覚に近かった。

 事後に話す時間もたくさんあったので、「友達と遊びでエッチなことしてる感じかな」と伝えた。「うちら波長が合うねん」それは楽しい時間だった。

 僕は女の子に警戒されないのか、女の子は自分の仕事の経験談を赤裸々に語ってくれることが多い。

 関西から来ていることがわかったので、向こうの花街についても聞いてみた。彼女は僕がいつか行ってみたいと思っている飛田新地についてもよく知っていた。聞けば勤務していたことがあったようだ。飛田の歩き方をレクチャーしてくれた。「新地なら飛田より松島の方がいいかもしれんね」そんなことも教えてくれた。

 幼く見えるが風俗嬢としてのキャリアはあると思っていた。話を聞いていて納得してしまった。

 差し入れは用意しないので、帰り際に多くはないがチップを渡した。「これは要らんて」と返してきた。チップを返してきた女の子は初めてだった。「何かの足しにして」と言って、胸元が開いたワンピースだったので無理やり胸の谷間に突っ込んだ。「お心遣いありがとう」最後にはそう言って受け取った。

 人には貸しは作りたくない性格に見えた。それで生計を立てる風俗嬢らしくはなかった。寧ろそれを生業としているからこそのプライドかもしれない。もし演技であるとしたら上手いとしか言いようがない。

 「波長が合う」と言ってくれた女の子にはシンパシーを感じてしまう。僕はその一言に弱いのだ。

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