嬢をめぐる冒険(N#4)
ドアを開けると黒いパーカーを着て、フードを被った女の子が立っていた。
「こんばんは」
お互いに挨拶を交わす。嬢からよく聞く話だが派遣型の風俗店を利用する客は挨拶すらまともにできない人間がいるらしい。逆に挨拶できない嬢もいる。
彼女は被っていたフードを脱いだ。ようやくお互いの目が合った。その瞬間に彼女の動きが止まり驚きの表情に変わった。
「お久しぶり。誰かわかるよね?」
「わかりますよー。今日出勤する予定じゃなかったから、日程合わないと
思ってました」
「サイト見たら出勤になっていて、時間もできたから会いに来たよ」
「今日は仕事でこっちに?」
「いや遊びかな。イベントに顔出さなきゃいけなくてね」
「本物のNちゃんだ」
「本物のNちゃんですよ〜」
彼女はとても可愛らしい女の子なのだが、表情豊かという感じではなかった。いつも表情は柔らかいがあまり表情が変わらない。特に目が動かないのだ。それを怖いと思う人もいるかもしれないと思っていた。そんな女の子なのだが驚いているのがこちらにも伝わってきた。
ベッドに腰掛けて話は続いた。喜んでもくれているようだった。急に我に帰って「お店に連絡だけ入れちゃいますね」と入室連絡をお店に入れた。
お互いに以前に話した会話のことをよく覚えていた。派遣型の風俗を利用して、最初からこれほど自然に過ごせたのは初めてのことだった。
面白かったのは出稼ぎに来ていた店と在籍している今日利用しているお店はコンセプトが大きく違っていたことだ。出稼ぎに来ていた店は至って普通のデリバリヘルスだが、今日のお店は過激サービスを売りにしているお店だった。