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「なんでも好きなことしてあげる」(K#4)
次の月も東京に出向く予定があった。お店のサイトを調べてみると在籍から彼女の名前はなくなっていた。
連絡先の交換もしなかったし、2度会っただけだったが、個人を特定できるほどの情報を残していた。
辞めた理由は当然のことだがわからなかった。奨学金の返済の目処が立ったのかもしれないし、僕にはわかり得なかった。
僕に心許してくれてはいたんだろうとは思った。高学歴で頭の良い子だった。あまりに心許しすぎて話しすぎたと思ったのかもしれない。冷静になったときに、我に返って退店した可能性だってあったのかもしれない。
落胆するよりも、寧ろ少し安心した。
僕の方が冷静さを持ち合わせてはいたようだ。思えば15年以上前の話だ。彼女も40歳に近い年齢になっているのかもしれない。歳を重ねてどんな女性になっているのだろうか。おそらく夜職からは足を洗っているのではないかと思う。
恋愛でもないし、ただの嬢と客の関係でしかなかったはずだ。それでも僕の記憶に明らかな爪痕を残していったのだろう。今でもふとした瞬間に彼女を思い出してしまうのだ。