たまにはいつもしないことを
京都には100円で入場できる美術館があります。
しかも市民府民であるかどうかに関係なく大人子供も関係なくみんな100円なのです。
そんな美術館の名は「陶板名画の庭」。
地下鉄烏丸線北山駅3番出口から徒歩1分、開園100周年を迎えた府立植物園の隣に位置します。
「美術館」とは書きましたが、建物があってそこに美術作品が飾られているような場所ではなく、屋根のない所謂「屋外美術館」に陶板画が飾られているというような場所でした。
普段、休日は自宅でゴロゴロしたり家事をしたりするだけで終わってしまっていたので、表題のとおり「たまにはいつもしないこと」をしようと思い立ち、絵心の「え」の字もありゃしないのですが、魔が差すままに赴くままに芸術鑑賞に洒落込むことにしたわけです。
市内には他にも美術館は複数ある中でここを行き先にしたのは、どこかの記事でこの屋外美術館について取り上げている方がいて興味を抱いたからですね。
屋外美術館という奇抜さのみならず、施設設計は建築家である安藤忠雄氏によりなされたそうで、加えてそのような場所に誰もが100円で入場できるという点は自分の関心を引くには十分すぎる内容でした。
少しぐずつきだした空模様に一抹の不安を抱きながら受付窓口で100円と引き換えに入場券を受け取り、中に入ります。
結論から言えば、展示作品数としては5、6点の陶板画が展示されているのみで、作品を鑑賞して帰るだけなら15分もあれば充分な規模感でした。
展示されている作品についても、「最後の晩餐」をはじめとした「The・芸術作品」のようなものもあり、芸術に対する造詣など小指の先ほどにもない私みたいな人間でもサクッと楽しめます。
とかなんとか書いておきながら、その実、私は芸術を楽しむというよりかは「陶板名画の庭」という空間を楽しんでいたように感じます。
先述のとおり、施設は建築家である安藤忠雄氏による設計とのことで、壁面は化粧打放面(壁面に塗装やタイル貼り等をせず、コンクリート面をあらわにしたままの状態)が目立ち、無機質な印象も受けましたが、今思えば展示されている陶板画を活かすためだったのかもしれません。
そんな無機質な背景に大小様々な陶板画が展示されているのです。また絶えず滝のように水が流れているので、水の鳴らす音が都会の喧騒(北山通なので喧騒という程でもないですが……)を打消してくれて、別世界にひとときだけ紛れ込んだような印象でした。
私は土曜日の午後に立ち寄りましたが、人はまばらでごった返しているようなこともなく、休日でも充分に落ち着けました。
芸術鑑賞というよりかは、ベンチに腰を落ち着けてボーッとしていたという方が正確かもしれません。なんだかんだ30分くらいゆっくり過ごしていたような気がします。
正直なところ、普段しないことをたまにしてみたからといって、殊更に何かしら心情の変化が生じるわけもなく、新鮮さを噛み締めるということもないわけなのですが、小さな行動変化の積み重ねが気付かぬうちに大きな軌道の変化に繋がることを信じて、これまでなんとなく避けていたことや億劫に感じて目を背けていたことを少しずつでもしていきたいですね。
魔が差すままに何かをしてみるのもたまにはいいものです。