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【詩】夜に飛び交う蝶

 満月に近い月が白い光で地上を仄かに照らす
 縁側で冷酒を呑んでいた私も白に包まれる
 庭の草木に紛れた虫が活き活きと鳴いている
 こんもりと茂った紫蘇は花開き 白さを際立たせた
 そこにちらちらと見え隠れする小さなものに目が留まる
 見た目は蛾のようで 葉の裏に隠れ 花弁に舞い降りた
 蜜を吸っているのだろうか 不思議な思いで見つめていると
 いくつもの蛾が同じように飛び交い 足場の悪い花に身を寄せる
 何とは無しに眺めながら 虫の鳴き声に耳を傾け 酒が大いに進む
 ほろ酔い気分の思考で蛾を見ていると 可憐な蝶に思えてきた
 程よい暗さの薄化粧のおかげで 八杯目の酒が身体を巡る
 蛾のような蝶 蝶のような蛾 頭の中で入り混ざって横に手を伸ばす
 握った酒瓶を軽く振った 沈黙は金という言葉が頭に浮かぶ
 ふらつく足で立ち上がり 空瓶を握って楽しい一時に背を向けた

 心の片隅では また明日 としっかり呟いて

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