おはなし 迷い猫
迷い猫 作:米田太郎
スーパーのレジ脇のガラス窓にチラシが貼ってあった。
「迷い猫預かっています。」スズキ 123-45XX
鋭い眼光のその雑種は迷い猫には見えなかった。
目が合った!?
「おい、あんた。」
「えっ私?」
「あんただよ。助けてくれ。俺は迷ってねぇ。ちょっと休んでただけなんだよ。それがオリに入れられるは、写真撮られて街中に貼られるは、笑いもんだよ。助けてくれよ。」
「私が?」
「逃がしてくれりゃあいい。後は好きにする。」
「う、うん」
子猫を引き取るのはよくある話だけど、などと思いつつ
「プププ・・・もしもしスズキさんですか。あのー私が猫の・・・」
名前はトラ。勝手につけた。以来時々家の周りで見かける。トラは知らんぷりだけど。