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みさとかりん
2024年4月21日 21:54
第一部 五王君 三章 風の峡谷 2峡谷からの風だろうか。湿った匂いを乗せた西風が、シスプの村に吹き寄せていた。予告もなく現れた彼にシスプの村の人々は何事だろうと首を傾げた。「ガラシスは、無事か?」いつもの土色のマントを羽織った旅人の出立ちではあったが、珍しくお供を連れている。そこに、長身で長い黒髪を後ろで結い上げた細い吊り目の女が音もなくスッと現れた。