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魔境アラザルド

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長篇小説『魔境アラザルド』をまとめています。 序章より順番に1〜並べておりますので、読みやすくなっていると思います。現在は毎月下旬頃に1話のペースです。まだまだ続きます。詳しくは…
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2023年8月の記事一覧

魔境アラザルド2  幻影騎馬団①

魔境アラザルド2 幻影騎馬団①

第一部 五王君
 一章 幻影騎馬団

    1

その黒い巨大な竜巻は、突然姿を現す。

アルーウェン大樹海は、活火山ガランディ山の麓に広がる巨大な森だ。
黒い溶岩の塊でできた城のような形状のごつごつとした広大な岩場と、その手前に広がる針葉樹の深い深い緑の森とで成る。
ユスはそこに程近い町だ。交易が盛んで、行商人が行き交い、市場や交易品の店も数多く、いつも賑わっていた。
マリュネーラ・プトラは1

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魔境アラザルド3  幻影騎馬団②

魔境アラザルド3 幻影騎馬団②

第一部 五王君
 一章 幻影騎馬団

    2

太陽が沈みかけ、すべての影が長く地表に伸びる。

父の遺体は、エリンフィルトの計らいで、まずアルーウェン大樹海のすぐ近くにある名も無き共同墓地へと移送してもらい、更にその墓地の端の方に簡易なお墓を建ててもらった後、土中にも埋めてもらった。
無論、すべて魔法でだ。
マリュネーラは父と最期の別れをし、近くに咲いていた白い小花を摘んで、お墓の前に手向け

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魔境アラザルド4  幻影騎馬団③

魔境アラザルド4 幻影騎馬団③

第一部 五王君
 一章 幻影騎馬団

    3

月が煌々と照らす惨状、破壊された町。
瓦礫と死体。
ユスの町は、沈黙の支配下に落ちていた。
時々通る追い剥ぎや盗人の影。
罪と生きることの狭間。

彼は、すべてを焼き尽くす。
彼は魔王。
私のただ一人の主人。
私の神。

一人の魔人が、過ぎた災厄の跡を、表情を変えることもなく通っていく。
彼の名はレーリック。またの名を『朱燎』という。自分の魔境を

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