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しなやかに…

 あの日にあのおチビちゃん達に出会っていなければ…?
見えても見ないフリが出来たなら?
あのしなやかで自由な種族が嫌いだったなら…?
 こんなに辛く哀しい想いはしなかったのだろう?

 おチビちゃん五匹は未だ目を開けずに、出産で体力がない母のオッパイにしがみついている。
 そんなおチビちゃんを見て無視を出来るのだろうか?
 私の目の前から居なくなり、他の場所に行けるだけの体力があったのだろうか?
 あの日あの瞬間に、おチビちゃんの母親に差し出したミルクは間違いなのだろうか?

 数十億円をかけて設立された建物には、動物保護センターと表記せれている。
 殆どの人は保護してくれる場所だと思い込まされ、希望を感じてしまう。
殆どの動物は保護されないし、断られる…。

 市民の為の市役所の役人さんは、優しくそして冷たく語る。
「エサをやらないで…。」
死にそうなおチビちゃんを「見守って下さい。」と、まるでコンビニのマニュアルの様に淡々と…。

 私は好きだが、嫌いな人もいる。他の種族が好きな人もいるのが“世間"だから、自分の思いとは真逆な決断をしないとならない…。
 少なくとも、このおチビちゃんの達の未来をを託して市役所に相談したけれど…、マニュアル通りの対応に心が凍る。
 「もしも、このおチビちゃん達を保護して動物保護センターで預かった場合、引き取りての飼主がいない時は殺処分ですけれど…、どうしますか?」
 質問するお役人さんに、決断を迫られる。
 言い方を変えれば「殺すか、殺さないかは貴方次第ですけれど…!」

 “自由な種族保護は出来ないルール"、逆に言うなら自由に時間を過ごせるけれども、険しい生きる道が待っている。

 世の中の1人に過ぎない私が差し出したミルクを美味しそうに飲むおチビちゃん達に束の間の楽園を見させてしまった…。
 そして、味合わなくてもいい辛さや生きる険しささえも…。
 そして私は、空のミルクの皿を見る度に私の心が血を流す…。

 この生き延びた小さな命のおチビちゃんに差し出したミルクは愛だったのか…? 偽善だったのか?
 そんな思いを巡らしながら、私の眼はあのおチビちゃん達を探している。

 拝啓
 おチビちゃん達、元気にお過しですか?
 あれから、どんな時間を過ごして育んでおりますか…?
 しなやかで自由に過ごしている事を願ってます。

…………………… END ……………………



 


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