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ブラックバードと紅の鳥

ホワイトバード


 雪が舞い散る冬になると、わざわざ寒い所へ白鳥が渡って飛んでくる。
寒がりの僕には理解できないが、きっと理由が有るんだろう。
 最近は鳥インフルエンザとかで川辺でエサはやらなくなったけど、少し前はパンのミミとか、エサをやっていた。
 そこにカラスも必ずやって来てエサを食べる光景を見て、“カラスも腹減ってるんだな〜”と僕は呑気に思っていた。
 黒い、縁起が悪い、汚い、ずる賢いなど、“強烈なイメージ”を持たれて忌み嫌われるカラス。
 確かに集合し団体行動をし、食べ散らかしておまけに“フン”までお土産に置いて行くとなると迷惑な鳥だ。
 餌がないから生きる為に必死なだけにも思える。

 「お父さん、白鳥さん遠くから飛んできたの?」と息子の涼太が小さな体で質問した。
「そうだよ。遠い国から来たんだよ。」と答えた僕だった。
「たくさん、たくさん食べてね。」と涼太の気持ちが、私の寒さを柔らかく包んでくれる。
涼太が僕に“純粋”に問いかけた。
「みんな白鳥さんにだけエサやってて、カラスさんはお腹すいてないの? カラスさんにはエサをあげちやイケナの?」
 すると近所のおばあちゃんが聞いていて、「白鳥さんは綺麗でしょ、カラスさんは黒くて汚いでしょ。」と……!
おばあちゃんの主観を言い放った。
 涼太が、「でもね、カラスさんは黒く光っていて綺麗だよ!」
 おばあちゃんは「そうね!」と、言葉を捨てながら離れていった。
 涼太が不思議顔で、「おとうさん、白は綺麗で黒は汚いの?」と……。
僕は「どちらも鳥だよ、おばあちゃんの偏見だよ。」と言った。
涼太が、「おとうさん、へんけんって?」
"しまった"偏見なんて使ってしまった言葉を使ってしまった。
 「おなじ鳥さんなのに白鳥さんは綺麗で、カラスさんは汚いと決めつけてしまう事だよ。」と……! 

 あのおばあちゃんの言うのは、“偏見”と“差別”じゃないのかな?

 年老いたおばあちゃんのイメージは、これからも変わらないだろうし、イメージは狸やネズミなどの死体を突く姿を見てのものだろう。
 生態系の中でそう言う役割を担っている事も確かだ。
 イメージは自由でいいけれど、ちゃんと“本質”を観ないと、せめて観ようとしないといけない。
 

 涼太の様な純粋な視点を、残念にも僕は大人になるにつれて少しずつ失ってしまった事に気づかされた。
あのおばあちゃんの様に……!
 一部分を見てそれが全てと決めつけ、本質も観る事もせずに見た目だけで判断してはいないか?
 
 カラスを尊ぶ国はこの世界中には、沢山ある。
 この国でも“八咫烏”と言う3本足のカラスを崇拝するのに、単純に黒いからと言うのは余りに雑かなと思ったりする。


紅の鳥

 この時代には“劇的な変化”が、サラリと起こっている。
 電話が持ち運べる様になったり、世界の至る国を旅行しなくても見られたり、自動車が電気で走って見たりと変化は至るとこにあり全ての事や物の固定観念が壊されている。
 時代と言っても一秒ずつの積み重ねの連続の積み重ねで意識してはいない。
 翌年も渡り鳥がやって来て寒い冬が来るな〜と空を見上げたら、天からは冬のお知らせの様に雪が“ひら、ひら”と舞って来た。
 白い雪降る空をワインレッドの鳥の大群が川辺の方へ向かって飛んでいって、あまりにも鮮やかさに目を奪われた。

再来 


 「パンのミミを持たなきゃ」と、去年より少し大きくなった涼太が僕を見上げて言った。
「持ったよ、鳥を見に行こう」と僕は返事し、川辺までの歩いて10分程度の道程が今の僕の幸福な時間だ。
 川辺へ着くと去年会ったおばあちゃんが、元気に鳥達へエサをやっていて見た目より優しい人なのかもしれない。
 よほど印象が強かったのだろう、おばあちゃんが涼太を見て「大きくなったね」と言いながらあの紅の鳥と白鳥へエサをやっていたが、紅の鳥の方へたくさんエサをやっている。
 鮮やかなワインレッドに目を奪われれ、おばあちゃんが「ま〜、綺麗な鳥だね」と言いながら、餌付けする場所から少し離れた所で涼太がいつものように優しく「食べてね。」と……。
 「おとうさん、カラスさん黒から赤色に変わったんだね!!」と、涼太が言うので僕は「えっっ…!!」と、驚きよく見たら“紅の色のカラス”で驚いた。


価値観


 それはすぐにニュースやインターネットで世界に“あっ”と言う間に拡散され、最初はフェイクニュースと疑われたが“本当だ”とわかると、いろんな国から“紅のカラス”を見ようと訪れるようになった。
 国の観光資源と国会で決まると、忌み嫌われ“害鳥”扱いから、“保護鳥”に……。
人間都合で運命が左右される。
 生きる為にゴミ箱にエサを求めていたカラスだったが、待遇が変わりエサは与えられるようになった。
ゴミ箱は荒らさないようになり、エサを求めて移動しなくなったカラスは電線に止まり休憩する事もなく“フン”も街から無くなり、無害鳥になり多くの人から愛された。

 
 僕は年老いて涼太が結婚し、この冬に“孫の翔太”を連れてお嫁さんと一緒に帰省した。
 何も変わらない田舎であの川辺もあのままだ。
 僕は涼太と涼太のお嫁さんと翔太と一緒に鳥を見に行ったら、どこかの親子が先に川辺で“パンのミミ”を餌付けしていた。
 あの時に戻ったかのような錯覚を覚え、涼太と目を合わせた。
 
 多くの人が“紅のカラス”に餌付けしてる中で、少し離れて餌付けしている親子がいる。
 親子の子供が「パパ、どうして赤い鳥さんだけにパンをたべさせるの?、白い鳥さんがかわいそうだよ!」
 近所のおじいさんがそれを聞き子供に話しかけ「赤い鳥さんは綺麗だろ、白い鳥さんは羽が白いだけだろ!!」と…。
 

  …………………… 終 ……………………




 


 



 
 

 

 






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