「日常」を乱すということ

夕飯の買い出しに出た日曜の夕方のこと。
路地の角で女性二人が何か話しているのに遭遇。
揉め事・・・?いや違うっぽい。
すれ違いざま、片方の女性の顔を見ると何か心配気な様子。
何気にもう一人の女性も見るとー白杖を持っていた。
あぁ、心配してるのだなと合点。
歩道幅も狭いしねと思いながら追い越して先を行く。

しばらくしてふと振り返ると、
先ほどの白杖の女性が一人で車道を歩いている。
え?一人?さっきの女性はどこにいった?
勝手に知り合いと想像したその人は赤の他人だったようだ。

”これは放っておけないよねぇ?”と、もう一人の自分が問う
そうだよねーでもエスコートしたことないよ
”そういうことじゃないでしょ”
・・・わかったよ

意を決して声をかけると、その女性は恐縮しながら
じゃこの先にあるバス停までお願いできますか、と仰ってくれた。
あ~あのバス停ですね、わかりましたと言いつつ
何気に行き先を尋ねると駅とのことだったので、
結局、私の都合で駅まで歩くことにした。

そうして彼女と一言二言話すうちに気付いた。
そう、バス通りの歩道にも今歩いてる舗道にも
点字ブロックがない、ことに。

雨の日はどうしているんですか?
「バスか、タクシー使ってます」
そうですよねぇ(そうですよねって相槌、何?)

駅前の交差点を渡り、バスターミナルに近づと、
「〇〇〇の横ですか?」
ふいに彼女が問いかけてきた。
はい、右に〇〇〇です。もうすぐバス乗り場です。

はたして目的のバス乗り場に案内し、彼女と別れた。

なぜビルの場所を確認したんだろう?
ふと疑問が湧いてきた。
もしかしたら、いつもと逆のルートを歩いていることに
気づいたのかもしれない。
いつもとは違う雰囲気で何かを察したのかもしれない。

ってことは、いつも降りている降車場に向かうべきだったんじゃないか?
いや、そもそも乗りたかったバス停に案内すべきだったんじゃないか?

右手の袖をふわっと掴んでいた手。
段差が一番怖いと言う優しい口調。
そんな彼女の日常を、邪魔したのかもしれないなぁ。



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