最高裁国民審査について訴えます~尾島明・今崎幸彦両裁判官に✖を!
性同一性障害特例法を守る会
来る10月27日投票の衆議院選挙と同時に、最高裁判所判事の国民審査が行われます。私たちは性同一性障害当事者として、国民審査で尾島明・今崎幸彦両裁判官の不信任をするように、すべての国民に訴えます。
私たちの会は性同一性障害当事者が「特例法、とくに手術要件を守る」ことを掲げて作られました。署名活動などを通じて私たちは手術要件の維持を最高裁に対して訴えてきましたが、しかし、昨年10月26日の最高裁大法廷決定では、手術要件のうち「生殖能力の喪失要件」については十五人の最高裁判事の全員一致によって「違憲」の判断をしてしまいました。そして「外観要件」については3名の裁判官が「違憲」の意見を述べましたがそれを採用せず、広島高裁へ差し戻され、今年7月10日の差戻審決定では外観要件への憲法判断なしに原告の請求を認めてしまいました。
「男性器ある法的女性」を最高裁は認めてしまったのです!
この裁判で「生殖能力の喪失要件」に違憲判断を行った裁判官には、今回の国民審査によって国民からの「No!」が付きつけられなければなりません。
この決定から、すでに手術を済ませて戸籍性別を変えている性同一性障害当事者にとって、つらい日々が始まりました。
「トランスジェンダーなんて、女湯や女子トイレに侵入したがるヘンタイだ!」
「女になりたい、と主張して女性に近づくのも、性的な関係を強要するためでは?」
などなど、この決定に相次いで起きた、ススキノ首切り殺人、埼玉のNPOで起きた女装者暴行事件、さらに「トランスジェンダー」と言い訳する幾多の女湯突入事件などから、私たちの「評判」は地に落ちてしまったのです。
この責任は最高裁の決定にもあるのです!!
私たちは手術要件の維持を訴え、手術要件こそが私たちの立場を守る「盾」だと主張しました。しかし、その「盾」を「人権尊重」から最高裁はあえて破壊する暴挙に出たのです。「生殖能力喪失要件は違憲」と「外観要件をしっかり守る必要はない」という誤ったメッセージが、一部の不心得な人々を元気づけ、このような犯罪に走らせることに繋がった、という重大な責任が最高裁にはあるのです。
これは女性・女児たちを直接危険にさらすのと同時に、私たち平穏に暮らす性別移行者の立場を悪化させて、世論からの「新しい偏見」を生み出すことに繋がったのです。最高裁が国民世論から遊離し、「司法の暴走」とも評されるような「先進的に過ぎる過激な判断」を行ったツケを、今国民が払わされているのです!
また同時に、この判決は性同一性障害特例法の「改正」論議に火をつけることになりました。しかし、手術要件が緩和されたことによる、新しい条件を議論する基盤はまったく整っていません。ジェンダー医療に長らく携わってきた専門医の間でも、困惑の声が広がっています。今までは手術要件によって、性別移行の真剣な意思を確認できたがために、精神科医による「診断」は比較的緩やかなもので大丈夫だったのです。しかし、手術要件が緩和された場合には、精神科医に求められる責任は今までとは比較にならないほど強いものになります。
特例法を改正するのならば、どんな町医者にでも書くことができる現状の診断書ではなく、一定の専門資格をもった医師のみが診断書を書けるように資格を新設しなければなりませんが、この資格の議論もようやく専門医の間で必要性が議論されてきたばかりです。先走った最高裁の決定によって、社会のあらゆる場面で後手後手に回らざるを得ない、危険で無責任な状況が起きてしまったのです。
このような責任は昨年10月の最高裁決定を下した裁判官すべてに求められるべきです。ですので、今回の国民審査では、この判断を下した二名の裁判官、尾島明・今崎幸彦の二名について、国民からの「NO!」の声を突きつけましょう。
残念なことに、この決定の裁判長である戸倉三郎最高裁長官は定年により退官、さらに外観要件について違憲の反対意見を述べた三浦守・草野耕一・宇賀克也の三名の裁判官については、2021年に国民審査を受けているために今回の国民審査の対象ではありません。大変残念なことですが、現在も最高裁に席を置くこの三名の判事に、国民からの拒絶の声を直接届けることは今回はできません。国民審査の制度もどうにかすべきでしょう。
しかし、この決定に加わった尾島明・今崎幸彦の両名の不信任率が明らかに高ければ、三浦・草野・宇賀を始め他の裁判官に対しても強い圧力になることは予想されます。ですので、今回については、新任の裁判官である他の4名を含めた
・すべての最高裁判事に✖
ではなく、
・手術要件に違憲判断を下した尾島明・今崎幸彦の両名に✖
を私たちの国民審査での不信任の基準にしようと、すべての国民に対して訴えます。
女性たちの安全を明白に傷つけ、私たち当事者の状況を悪化させた、誤った司法の責任を追及して改善する責務は、国民自身にあるのです。
私たち性同一性障害当事者のこの訴えにぜひ耳を傾けてください。
以上