
司法の暴走に対する警鐘 ~最高裁国民審査の結果について
性同一性障害特例法を守る会
私たちは性同一性障害当事者として、2023年最高裁における特例法手術要件(不妊要件)の違憲判断の責任を問うために、10/27に行われた衆議院選挙に伴う国民審査で、この裁判に関わった尾島明・今崎幸彦の両裁判官を不信任するように、国民の皆さまに訴えました。
残念なことに、国民審査の「不信任」は過半数という高いハードルが設定されているために、両裁判官の罷免には至りませんでした。しかし、国民審査の結果を見れば、
尾島明 11.00%
宮川美津子 10.52%
今崎幸彦 11.46%
平木正洋 9.97%
石兼公博 10.01%
中村慎 9.82%
と、私たちが不信任を呼び掛けた尾島明・今崎幸彦両裁判官の不信任率がトップ2,11%台と高いことが分かります。前回2021年の国民審査で一番高い不信任率は7.82%、前々回2017年では8.58%と、今回の国民審査ではどの最高裁判事も前回・前々回のトップの不信任率を越えた不信任率となっています。さらに言えば、最高裁長官としてもっとも責任ある立場である今崎幸彦長官がトップの不信任率であることについても、最高裁自体が国民から強い批判の目で見られている証拠でもあります。
また、今まで一桁後半で推移してきた平均の不信任率も、今回は10%を超えました。けして「不信任にならなかったから、信任された」と居直ることのできない深刻な不信任率であることを、最高裁は自覚すべきです。
このような事態を招いたのは、まさに最高裁自身です。私たちの立場からすれば「トランスジェンダー」を巡る裁判で、最高裁が暴走した結果がこれなのです。経産省トイレ裁判・特例法不妊要件違憲判断~差戻審で「男性器ある法的女性」出現という、女性たちに不安を与える、国民感情から遊離した判断を最高裁が繰り返したがために、このような「不信任!」の声が国民から突きつけられたと、私たちはこの結果を解釈しています。これを最高裁はしっかりと自覚すべきです。
これ以上性同一性障害特例法の形骸化を進めてはなりません。
最高裁に対して国民が強い警告を発したのが、この国民審査の結果です。
もちろん、国民審査という制度も形骸化している、という批判も以前から上がっています。何も書かなければ信任、不信任にはわざわざ✖を付ける必要がある、という投票形式にも問題があります。
さらに、特例法不妊要件に違憲の判断を出した大法廷では、宇賀克彦・三浦守・草野耕一の3裁判官は、外観要件にも違憲の少数意見を出しています。もし、今回この3裁判官が国民審査の対象であれば、必ずや今崎長官以上の強い国民の批判と不信任の声を受け、下田武三判事の国民審査(昭和47年)の15.17%を上回り、罷免の可能性もあったことでしょう。
このように一旦国民審査を受ければ10年間改めて国民の審判を受けないでいい、という憲法の規定もどうにかすべきです。毎回、全ての最高裁判事が審判を受ける制度の方が、より国民の良識に近い判断を最高裁ができる保証につながるのではないのでしょうか。
私たち性同一性障害当事者は、いわゆる「トランスジェンダー」の横車によって特例法がゆがめられ、私たち当事者と社会との約束であった特例法が、本来その対象外であったはずの「トランスジェンダー」たちに乗っ取られようとしていることを危惧し憂慮しています。女性たちは「女性スペースが奪われる」「女子スポーツが侵略される」と「トランスジェンダー」に強い警戒感を抱くようになり、その結果、特例法と手術要件によって社会と調和して生きてきた私たちも、「トランスジェンダー」と社会との対立に巻き込まれて多大な迷惑を被ることになったのです。
あの違憲判決以降、私たちに対する社会の目は格段に厳しいものになりました。私たちから「手術要件」という自らを守り、社会から信用される「盾」を奪い、女性たちの当然の権利を無視することで社会不安をかきたてた最高裁に対して、女性たち同様に私たちも強い怒りの念を抱いております。この責任を最高裁はけして逃れることはできないのです。
「人権尊重」「諸外国はずっと進んでいる」などとのキレイ事にそそのかされて司法が歪みつつあると、正確に状況を理解し始めた国民は、司法への不信の感情を不信任というかたちで表明したのです。海外の状況にも当事者の現実にも眼を閉ざして、イデオロギーに閉じこもっているのは、国民ではなくまさに司法の側なのです。
今回の国民審査の結果を、最高裁は真摯に受け止めて、過ちをこれ以上拡大しないように慎重な判断をするように、最高裁ならびに法曹界に当事者として警告いたします。
以上