小説:狐012「名詞の性」(1210文字)
「走る、は男性かなー」
ダークマターの研究者・ヒトエさんが言い放つ。黒いハイネックのニットを着ている。
「まあ、ちょっと偏りがあるような気もするけど、うん、まあ、男性でいいと思う」
と多浪中のタロウさんが受ける。ウーロンハイに口をつける。
「じゃあ、歩く、は?」
「歩く、は、中性じゃないかな?」
「中性は無しって言ったじゃん」
「あ、そっか。うーん、どちらかというと女性かな」
「そうしておこうか。じゃあ、待つ、は?」
さっぱり何のことか分からない。宇宙物理学を突き詰め