隔離生活日記@モントットーネ②
みなさんご機嫌いかがですか、中部イタリアは人口1000人弱の村で新型ウイルスのため、隔離生活を余儀なくされている翻訳者の飯田亮介です。とりあえずうちの村も感染者が1名ほど出ているようなのですが、大きな町の入院先での院内感染だそうです(だから物理的には村にいませんが、家族が隔離されている模様です)。例に漏れず高齢者のため、村人のつどうフェイスブックのページでも、みんなが心配しています(今回はとにかくフェイスブックが大活躍しています。コンテ首相もライブで演説を放送するくらいで)。
とりあえず僕は元気です。運動不足ですが、元気です。ちょっと困るのは、娘たちが学級閉鎖で四六時中家にいるため、なんだか来る日も来る日も週末か、下手をするとバカンスシーズンのようで、こちらもなんだか気分が浮ついて、落ちついて仕事ができないことくらいです。もしかしたらその辺の浮ついた気分には、感染に対する弱冠の恐れもあるためかもしれませんが、どうなんだろう、あまり実感はありません。
ちなみにここ2週間ほど僕は、パオロ・ジョルダーノがコロナウイルスの流行について書いたエッセイ集を訳してきました。版元の早川書房の山口氏も「世界初のコロナ文学」(大きく出ましたね...)と銘打ってそろりそろりと宣伝活動を始められた模様です。
なので、僕も近日中にこちらで紹介できると思います。こうした日々に心を落ちつかせる役に立つ一冊だと思います。知識はやはり力です。自宅隔離・外出制限の日々を有意義に送るための鍵となる作品です。乞うご期待。
さて本題ですが、これは僕の勘違いについて触れた日記です。やはりコロナウイルスに関する話ですが、お断りしておきたいのは、ジョルダーノの最新作を読むのにここまで細かな(?)知識は必要ありません。もっと大きな視点からの評論ですし、物理学畑出身の作者ですが、本当に物事がわかっているひとは、たいがい難しいことをシンプルに説明できるものです。どこかの村でのんびりしている翻訳者とは大違いです。
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さてこのところ、今日は感染者が増えた、今日は減った、と、どうにも毎日気になってしまう感染者データの統計ですが、「累計感染者数」と「現在の陽性患者数」というふたつの値の推移の意味について、ずっと勘違いをしていたことに今日、気がつきました。
恥をさらすようですが、誰かのお役にたつかもしれませんので、誤解の状況と原因、わかったことをこちらにまとめておきます。主にイタリア語表記のデータを見て考えたことなので、もしかしたら細部で日本と表現方法が違っているかも知れません。(↓のリンクはイタリアの感染状況を示したマップです。ジョン・ホプキンス大学の感染マップを元にイタリアの市民保護局が編集したもののようです)
(↓こちらは世界の感染状況)
ここで言う「累計感染者数(totale casi, total confirmed cases)」とは、流行が始まって以来、これまでにいったい何人が感染したと判明しているのか、その合計です。つまり延べの感染者数です。亡くなっても、治っても、いったん感染すれば1人としてカウントされ、そのままとなります。現在の陽性患者数だけではなく、流行が始まってからこれまでに感染して死亡した患者数(totale pazienti deceduti, total deathes)と回復した患者数(totale pazienti guariti, total recovers)の累計も含んだ数字です。
この値は日本では単純に「感染者数」と呼ばれるか、またはやはり「累計感染者数」と呼び、新規感染者数(1日ごとの新規増加数)と区別しているようですね。「PCR検査陽性数者」とも。
一方、現在の陽性患者数(attualmente positivi)というのは文字通り、現在、何人の陽性患者がいるのかという数字です。まだ生存していて、回復もしていない感染患者さんの数です(これがtotale positivi, total positiveとも記されるのが少々ややこしいところかもしれません)。
こちらは日本では単純に「患者数」と記されることも多いようです(参考:厚生省のサイト)。
仮に昨日の累計感染者数が5人(昨日の時点での陽性患者数が3人+昨日までの死者数の累計が1人+昨日までの回復者数の累計が1人)、今日は10人(陽性6人+死亡2人+回復2人)であったすると、このように考えればいいようです(昨日の患者のうち1名は今日までに死亡、1名は回復したものと仮定しています)。
累計感染者数
昨日 5(陽性3+死亡1+回復1)
今日 10(陽性6+死亡2+回復2)
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10-5=5
この5は「この24時間で新たな感染者が5人見つかった」ことを意味します。
つまり
→現在の感染スピードは5人/日
となります。
これを僕は、「今日と昨日の陽性患者数の差は6-3=3人だから、この24時間で新たに3人が感染したのではないか、つまり感染スピードは3人/日ではないか」と考えてしまいました。違います。
ぜんぜん違います。 父ちゃんしっかりしろ!
今日の投稿は早い話が「昨日の時点で陽性だった患者のうちには、今日までに回復した者もいれば、死亡した者もいる」それを理解できなかった僕が甘かった、ということです。たぶん数学ができる方ならば、何を今さらという話ではないかと。すみません、昔は数学もけっして苦手じゃなかったんですが、イタリア語の文法に脳のギガをだいぶ食われてしまったようです(このギガ、用法違うかも)。
累計感染者数
昨日 5人(陽性患者3+死亡1+回復1)
今日 10(陽性6+死亡2+回復2)
この例の場合、具体的には、こういうことです。
死亡者と回復者の累計が昨日にくらべて今日は1名ずつ増えているので、昨日「3人」いた陽性患者のうち1人はまだ陽性のまま、1人は死亡、1人は回復した(いちおう陰性になった)ということになります。
すると今日の陽性患者「6人」のうち「1人」が昨日からの患者、残り「5名」が新たな患者(24時間で増えた感染者数)ということになるわけです。
一方、陽性者数の推移(variazione totale positivi)については、6-3=3で、感染者数がこの24時間で3人増えた、ではなくて、「治療の必要な患者が3名増えた」と理解するのが正しかったのです。
なので、こちらの差は
→治療の必要な患者の増加の目安
ということになります。医療器具・ベット数などの不足と関わってくる部分です。医療システムの健全な運営を左右する数字です。
(ややこしいですが、「昨日に比べて今日の陽性患者数は3人多い」と考えること自体は間違っていません。ただし、増加のスピードは3人/日ではなく、あくまでも5人/日です)
累計感染者のうち患者・死亡者・回復者の割合を変えてみてもおなじはずです。試してみましょう。
昨日の時点での陽性患者が全員死亡し、5人患者が増えた場合
昨日の累計感染者数 5(陽性患者5+死亡0+回復0)
今日の累計感染者数 10(陽性患者5+死亡5+回復0)
この場合は、感染者数が昨日より5名(10-5)増え、治療の必要な患者数には変化なし(5-5=0)。
昨日の患者が全員回復し、5人患者が増えた場合
昨日 5(陽性患者5+死亡0+回復0)
今日 10(陽性患者5+死亡0+回復5)
この場合も感染者数は昨日より5名増え、治療の必要な患者数には変化なし。
どうでしょう、あってますかね? まだ間違ってたりして。。。厳密に言えば「人数」をみんな「件数」にすべきだったりもするのかな。
このサイトなどを参考にしました(イタリア語)
https://www.corriere.it/salute/20_marzo_26/come-si-legge-bollettino-protezione-civile-coronavirus-14768dbe-6f32-11ea-b81d-2856ba22fce7.shtml
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