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革を縫う。手縫いについて
ghoeの製品は全て手縫いで仕立てております。
常連さんや日頃からご覧くださっている方はご承知のことと思いますが、初めてご来店の方に手縫いである事をお伝えすると、皆さん驚かれます。
ミシンに比べて手間のかかる縫製でありながら、手縫いにこだわるのは何故か。
手縫いのメリットとして「美しさ」「耐久性」そして「仕立ての自由度」があるからです。
同じパーツでも部位ごとに最適な力加減で糸締めできることで、美しく、耐久性の高い縫いになります。
力いっぱいグイっと縫い締める事もあれば、優しく革の様子を伺いながら優しく縫うこともあります。例えるならば、釣りでいう「アワセ」の感覚です。ガチっと、はたまたフイっと、魚の様子を見ながら針をかけるあの感じに近いです。
角度のある箇所や、とんでもなく分厚い革も綺麗に縫えるため「手縫いだから実現する」設計も可能。表現の自由度が格段に広がるのです。
その時々の革の性質や厚みと表現したいイメージを踏まえて、ピッチや糸の種類と太さを選択し、その箇所に求められる役割によって縫い方を考えます。
曲げ伸ばしが繰り返される折り目付近だけはピッチを狭めて糸を締め気味にしたり、平面の部分は均等な見え方を意識したりと、小さな小物でも箇所ごとに変えております。
見た目の綺麗さと強度には相関があると考えております。
理屈の通った破綻のないステッチは強いのです。
手縫いの世界は奥深く、強く印象に残っている縫いがたくさんあります。
先生の鞄、西洋アンティークの鞄、明治初期の小物、最近は趣味で革をやっている方が鞄の一部分だけをつくったその縫い目に心動かされました。
手縫いについて、あくまで製作の一要素ということも含めて、お伝えしたいことはたくさんあります。また詳しく紹介してまいります。
先日、長財布を手縫いしている映像を撮ってもらいました。
製作の空気感が伝わると嬉しいです。
(過去のブログ記事に加筆して公開)