半フィクション②
あー学力がなくてもお喋りが上手な方が生きやすくて、楽しそう。
お洒落のセンスがあったり、運動ができたり。
凄く気が利いたり、面白い返しができたり。
私はテスト勉強は得意だけど、多分地頭はバカなんだ。
いざ、テストが始まると脳の後の方の少し意識の遠いところで問題を解く。
記憶の反射で問いに対して答えを記入していく。
物凄い回転率でどんどん考えずに問いていく。
もちろんこの技を獲得するにはとんでもない時間をかけて、何度も何度も問題を解く。
問題集を何周もする。
そうすると反射で解けるようになる。
中学生の膨大な時間の大半を、そうやってテスト勉強に費やした。
それが私の中学時代。
学力は高いけど、果たして…。
今の私は空っぽ。
「装飾今年はどんな感じ?」
夏休み、衣装リーダーのまなかが、クーラーの効いた教室で大きな布を広げながら私に聞いてきた。
「去年よりは順調かな」と私は答える。
まなかは去年の私の駄目リーダーぶりを知っている。
プランニングが出来ない。
デザインのセンスがない。
自分の思いや状況が言語化出来ない。
出来ないことだらけなのに、人を巻き込むことも下手くそで。
あまりの要領の悪さに他のリーダーが結局たくさん手伝ってくれて、何とか形に出来た結果だった。
私がした事といえば…何だろう。
最初の段階で出来上がりのデザインを決めただけじゃない?
……………あまりにポンコツ。
同じ歳なのに、クラスメイトとの人としての出来の違いに落ち込んだ。
私の今までの人生って何だったんだろう。
私って人としての器に底がないみたい。
他の皆はこれまでの16年の歴史をきちんと積み上げて自分のものにしてるのに、私にはこの16年の歴史が透明で空気みたいに空っぽに感じた。
そう思うと今までの私の人生が無意味みたいに思えて、自分が惨めで可哀想で不器用ながらに頑張って生きてきた過去の自分が悲しくて泣けた。
こんな話は、クラスメイトには話せなかった。
クラスメイトが実りある人生の学びの時間を得ている時、私は自分の人生の空虚さの悲しみから思考が動かなかったなんて。
また友達との差が広がった気がした。
私はいつになったら追いつけるのだろうか。
一生同じレベルには立てないと思った。
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