バースト・ジェネレーション presents BURST 公開会議 #12 #パゾリーニ #ソドムの市 #ピスケン #釣崎清隆x #TSOUSIE #ケロッピー前田 2022年1月27日配信 予習編

90年代からゼロ年代にかけて、最も過激なストリートカルチャー誌として時代を疾走した『BURST』のオリジナルメンバーがお送りするネット配信トークイベント。シリーズ「90年代サブカル講座」第6回は、残酷映画の超問題作『ソドムの市』(1975)とその監督ピエル・パオロ・パゾリーニ(1922-1975)を取り上げます。

予習編

【ソドムの市】
快楽主義の極限を見たいなら『ソドムの市』(1975年)を避けて通ることはできない。1785年にサドが獄中で書いた名著を奇才パゾリーニが映画化したものだが、監督が公開前に17歳の少年に惨殺されたことで、タナトスにあふれた禁断の作品となった。

映画『ソドムの市』とは?

マルキ・ド・サド著・澁澤龍彦訳『ソドムの百二十日』(河出文庫)は、序文のみだが具体性に長けた訳でいい知れぬ興奮を誘う。一方、完訳の斉藤晴夫訳『ソドムの120日』(青土社)は、その著作の全貌に迫っている。この世には見てはいけない、知ってはいけないものがある。旧約聖書に登場する快楽主義の街ソドムは、サドが精密に文章化し、パゾリーニが映像化することで時代を超えた。

作品は4部構成、「地獄の門」「変態地獄」「糞尿地獄」「血の地獄」と続く。サドの原著と読み合わせると、放蕩の限りがある種の人体実験のように周到に準備された上、ひとつひとつ実践されていく過程がわかる。サドがルイ十四世の統治下末期を舞台にした作品は、パゾリーニによって、ナチス政権下の北イタリアに作られた暫定政権に置き換えられた。4人の権力者たちが選りすぐりの少女少年たちを快楽のための生け贄とする。血も凍る残虐行為が平然と行われるラストシーンに誰もが震撼する。舌を切り、焼印し、目をくり抜き、頭皮を剥がれる。過酷な拷問シーンに込み上げる興奮の正体は何だ。この映画は、人間の残虐性を目覚めさせる。

パゾリーニ監督のもう一つの名作『テオレマ』(1968年)は、ある青年が金持ち一家のもとに滞在し、母、娘、息子、父、家政婦と性的関係を持ち、突然去っていくことでその家庭を崩壊させるというもの。変態描写が鋭い。

映画史上、最も観てはいけないと言われた“傑作”

 21世紀のネット時代にあって、いまだ禁断の書なぞ存在するのだろうかと思われるかもしれない。しかし、それでもなお、どす黒い光沢を放ちながら、ドンとその座を譲る様子もなく、幾度となく読み直されてきたのが、『ソドムの百二十日』である。そして、その映画版『ソドムの市』は、イタリアの奇才パゾリーニ監督の遺作として、誰をも侵犯することのできない世界を守り続けてきた。
 『ソドム』の著者マルキ・ド・サドは1740年生まれ。フランス貴族の出身で裁判所名誉長官の娘ロネーと結婚するが、5ヶ月後に娼婦との度をこした放蕩のかどで投獄され、のちに乞食女を鞭打ちしたローズ・ケレル事件、カンタリス(催淫剤)入りボンボン事件、鶏姦事件などの罪に問われ、逃亡、投獄を繰り返し、1789年フランス革命の後しばらく自由の身となるが、再び投獄され精神病院で74歳に没した。『ソドム』が書かれたのは1785年、バスティーユ牢獄に捕われていたとき、全長12メートル10センチの巻紙に蟻のような小さな字で書かれ、獄中に隠されが、行方不明となり、長いときを経て、1904年に初めて出版された。訳者の佐藤は「考えるすべての異常性欲を描写しようとした」と解説し、澁澤も「性倒錯現象の集大成」「クラフト・エビングやフロイト以前の貴重な資料」と評している。
 一方、『ソドムの市』の監督ピエル・パオロ・パゾリーニは1922年イタリア生まれ。詩人から映画監督に転じ、娼婦などを扱った作品で人気を得て、1964年に『奇跡の丘』でキリストのマタイ伝を映画化してスキャンダラスな存在となった。75年、彼は『ソドム』公開直前に虐殺死体で発見され、映画にも出演していた17歳の少年が逮捕されたが、右翼グループによる犯行という説も流れた。監督が亡くなったことで、映画版もその原作以上に凶悪な“禁断の作品”となった。
 また日本では、1979年に大阪で三菱銀行人質事件を起こり、犯人が女性行員たちを全裸にして人の壁を作ったり、男性行員同士に耳の削ぎ落としを命じたりして戦慄が走った。実際、犯人は映画『ソドムの市』を観ていたのだ。そのことで、『ソドムの市』の悪名はますます強固なものとなった。
 さて、そろそろあなた自身が禁断の扉を開くときだろう。快楽主義の極限の向こうに何を見るか、それがあなた自身の姿なのだ。

バースト・ジェネレーション presents
BURST 公開会議 #12 #パゾリーニ #ソドムの市

2022年1月27日 19:00 – 21:00
@阿佐ヶ谷TABASA
https://www.asagayatabasa.com 

観覧 チャージ1000円+ドリンク

配信アーカイブ
https://www.youtube.com/channel/UCW3AzE0jXZh4fSEUTfhgQKA

出演
ピスケン 元BURST編集長
釣崎清隆 死体写真家
TSOUSIE BURSTカバーガール
ケロッピー前田 身体改造ジャーナリスト

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