Lain所感①

『serial experiments Lain』というゲームを購入しました。
 前から気になっていたゲームで、やっとのこさプレイすることが出来ました。合間合間に少しずつ遊び、感想が溜ってきたので思った事を吐いていきます。
 ※ネタバレをふんだんに含みます。ご注意ください。

・PS1のゲームそのもの

 先ず、本作はPlayStation®(以下、PS1)のゲームなのですが、……再生機が!ねえ!PS1も持っているしモニタもある。しかし!赤白黄のあれ!あのキンググリオークみたいな端子がねえ!
 そこであっと驚く主婦の味方、HDMIですね。PlayStation®3(以下、PS3)ですね。

 PS3を引っ張りだしてからに、HDMIを普段使いのPCのモニタに挿し、起動!懐かしいですね、壁紙には遥か昔に設定したエ○フェンリートのルーシーがいました。
 PS3を持ち込んだことにより、PCから繋がれる配線が更にゴッチャ!になりますます部屋が玲音の部屋じみてきました。多分その内ナイツに石投げられて窓割られます。PS3ってこんなアチイの!?ってくらい焼肉プレートだったので、エアコンと扇風機を併用して室温を下げました。

 PS3でPS1/PS2のソフトを遊ぶ諸準備として、PS3内にPS1/PS2の仮想メモリーカードを作らなければなりません。
 PS1の発売日が1994年、PS3の発売日が2006年、たかだか12年の差の機体なのに、次々世代機に機能丸々が内包されているなんて、時代の遷移を感じますね。皮肉なのは、そのPS3も2023年現在、もう17年前の機体だということです。

・serial experiments Lainの操作感

 操作性、悪ッ!!!
 上下左右ボタンを押してから1~2秒後に反応するペルソナちゃん。
 L1,R1ボタンを押すと本体機が応答する。一瞬ディスクを読み込む(?)音が聞こえるんです。こちらはペルソナちゃんが2~3秒後に反応します。
 上書きセーブ一つにしたって『press START button to OVERWRITE』。いやお前、アメリカ語かい!!

 昔のゲーム特有の、「こちらが寄り添わないといけない感」がありますね。
 私が物心ついた頃のプレステ機はPS2でしたが、PS1/PS2のセーブデータ管理画面のような、なんだかメタ的に怖い、安心できない、気を抜けない感があります。それを思い出しました。あれですあれ。真っ暗闇のなかセーブデータがふよふよ飛んでいる奴です。緊張の連続ですね。
 ……と、思っていると知らぬ間に「プレイヤーの入力が一定時間ない時に映像を再生する」条件を満たしたようで、ランダムで断片的な映像が流れます。やはりあるのか、こういうのが……。序盤も序盤でプレイヤーは世界観の読み取りを行っている最中だというのに、血溜りとか銃とか、起承転結でいう「転」「結」っぽい物騒な部分が否応なく流れてきます。トガってんな~!

 一旦動作確認のため『press START button to OVERWRITE』で上書き保存をし、仮想メモリーカード内を覗いてみると……

感動しました。

 いいですね。
 この一見何を言っているの……?なやりたい放題は、更に私に懐かしさを引き起こしてくれました。
 『[lain]進行度10%』 とかでいいのに、
 『連続ゲイム小説[lain] 第1回:がっくり度10%』 と、
 アノ、ゴメンナサイネあなた何を言ってる方なの?と心の中のアッコさんが出てきてしまいました。しかも10%の1が半角っぽいのがまた面白いです。
 こういう遊び心は必要ですね。陳腐な言葉でいえば『アングラ感』があっていいです。

・ゲーム中身の感想

 こっからは真面目に感想を書いていきます。あいどうも、すいもはん。特に琴線に触れたものを二つ紹介します。

Lda018:
 玲音が風邪を引いた時に限ってお母さんは優しくしてくれる。このプロットが非常に刺さりました。
 体外的に発露した脆弱に対してのみ他人は優しくしてくれるし、逆をいえば体内的脆弱に対しては他人は汲み取ってはくれない。これを非常によく表していると思います。
 しかしてお母さんを悪者だとは思いません。優しくしてくれるだけ良き親だし、社会は「体内的脆弱に対しては他人は汲み取ってはくれない」のが当たり前だからです。そこまで他人を解剖の目で覗くのは不健全だし、何よりその複雑に奥まった意思をこちら側で勝手に考えても切りが無いし、専門医はともかく素人がやったとて妄想の域を出ません。これはLainというゲームがリリースされて四半世紀経ついまでも変わらないと思います。四半世紀前に比べ精神的な病/体内的脆弱に寛容になった今日ですが、この在り方は変えない方が健全と思います。繰り返しになりますが、素人が他人の(心内を含めた)プライベートに関わるべきではないからです。
 最悪なのは、「気を使ってやったのに」と他人の家に土足で踏み込んだ上に被害者意識を発動させる人ですね。
 そしておそらくこれは、誰もが経験している筈です。学校/社会生活でストレスが蓄積され、身体的/心的病気に罹った時、体外的に露出した時に初めて嫌な人間が優しく振る舞ってくる。いっそのこと舐めている自分を思い切り叱ってくれた方が楽なのに。私の中でその人が悪人なら悪人のままでいてほしい。感情をさらに引っ掻き回さないでほしい。
 この手の一連の流れのもどかしさ/気持ち悪さは、悪人が居ないことです。誰も悪くない、寧ろ、誰もが優しいからゆえに成り立つ歪な関係の形成を上手く体現しています。

Lda048:
 赤ん坊の死体の画像をメールで送られる。
 中1でそれを見るなんて、と思いましたが、私自身も中学時代、ネットを触りたての頃にそんな画像のURLを踏みまくりました。今やGoogleでセンシティブなワードを検索したくらいではグロ画像は出てこないし(出てこないよね?)、綺麗な世の中になったと思います。
 しかして18歳までの偏見を常識というように、アングラ感に帰巣本能を見出してしまうのが私の性なのか、綺麗すぎる在り方はディストピア的で危険に思えるのか、少しだけその在り方に危険信号を傍受してしまうのです。ネットの大海原を出航した矢先、2ちゃんねるでボコボコに叩かれて半年ROMった厨房であった過去があるからこそなのか、歩き方は身に着けたと思います。そんな環境で育ったため、それが私の中の「ネット」の在り方です。嘘を嘘であると見抜けないと(ry
 Lain発売当時のネットの雰囲気/アングラ色は、私が経験したものよりももっと混沌とした、統制の取れていないものだったと予想します。黎明期特有の、殆どが定まっていない世界です。
 むしろ、そういう時代を知っていないとこの作品の純然たる雰囲気は味わえないのでは?と思ったのです。一寸先に建物のgifがキラージェフに変わるかもしれない、リロードをしたら、私怨なのか個人の住所に大麻の種をいきなり送る投稿が現れるかもしれない。そんな未知の恐怖が本作にもちらほら出てきますね。玲音ちゃんが言う、「他人の嫌がることをして何が面白いのかわからない」旨の台詞がありますが、玲音ちゃん自身にも、感情の起伏が激しいゆえ、嬉しさの矢先に鬱気がやってくるのがしょっちゅうです。

 余談ですが、私はVRChat(以下、VRC)なるゲーム(コミュニケーションツール?)が好きです。理由として上にあげたような混沌/アングラ感がまだ残っているからですね。
 ワールドに存在できる容量(主にポリゴン数)の上限を超えないように、一定のポリゴン数以上の高クオリティなアバターは使用を控えるよう促されていますが、それでもクソデケェドラゴンやクソデケェロボットのエフェクト盛り盛りのアバターを使用してワールドをクラッシュさせる奴もいます。日本語サーバーにきてわけのわからない母国語とナルトのOPを割れんばかりの大音量で流す奴もいます。大きいワールドの管理者がクラッカーと癒着して一ユーザーに面白半分という理由だけで嫌がらせしているなんてこともあります。なんだか、在りし日のネットを思い出すとともに、匿名性を得た人間本来の性格なんてこんなものが限界だという捉え方もできるのです。
 私はそのゲームを経て沢山の海外のユーザーと繋がれました。といってもあちら側が日本語に堪能で、私はただ日本語で話をしていただけなのですが、ともかく友人ができ、相手の母国に海外旅行に行くとなったら相談もできる程に仲良くなりました。さてここでの話で注目すべきは、二人ともVRCという世界から逃げていることです。
 決して、その世界に100%身を委ねることは出来ない。安心できない。だからこそ話の舞台をDiscordに移した。本来であれば、VRCにログインし、Onlineのフレンド欄を覗き、話をしたい人間がオフラインであれば終わり。オンラインであれば話し、次にいつ会えるか分からない。VRC側の肩を持つとするならば、刹那的なプラットフォームの美しさはありますね。
 なんというか、この美しさをLainにも感じるのです。昔のネットの在り方と似た、自衛せねばならない、裏を返せば束縛がないエントロピーが高い無造作な世界。安全は担保されていないが新たな出会いの場としてなら高性能、しかしその中からしかと自分の意志を持ってネット世界を味方に付けなくてはならない。さもなければその強大な力/悪意によって呑まれる……そんな空気を双方に感じます。

 それと玲音、ゲームだと一人っ子ですね。アニメだと姉がいました。(実姉かどうかの問題はあるが)
 この兄弟姉妹がいるかの差は人格形成にかなり影響を及ぼしそうな気がします。日記しか自己を映して見るものが無い、基本的に孤独な人間ゆえ、トウコ先生に妹として見られた時、玲音は嬉しかったんじゃないかしらん。

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