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キャラクター②華鳥蘭子、"優しさ"の行方(『トラペジウム』アドベントカレンダー2024・全25回の5)

映画『トラペジウム』に2番目に出てくるメインキャラクター、それが華鳥蘭子である。主人公・東ゆうが劇中で最初に友達になり、(勝手に)「南の星」とされる女の子である。
公式のキャラクターPVはこんな感じ。

華鳥蘭子。8月28日生まれ。聖南テネリタス女学院2年生。16歳。
山本鈴美香のテニス漫画(およびそれを原作としたアニメ)『エースをねらえ!』の登場人物・お蝶夫人に憧れ、テニス部に所属している。また、お蝶夫人を意識した髪型とリボンをしていたり、お蝶夫人のセリフ「きなさい 死にものぐるいで」をココゾという時に口走ったりする。そのような行動も含め、何事も「形から入る」ようなところがある。
メタな情報としては、南の四神、すなわち「朱雀」を意識した「華鳥」という名字を持つ。(朱雀→火の鳥→火鳥→かとり→華鳥。)

彼女はお嬢様学校である聖南テネリタス女学院に通う正真正銘のお嬢様で、そのことが物語上でもフィーチャーされる。
田舎の方でもちょっとなかなかないような豪邸に住んでいたり、(映画劇中には出てこないが)明らかに関係のありそうな名前が地元の城の寄付者ご芳名の筆頭に並んでいたり、(これも映画劇中には出てこないが)人生を左右する決断のバックに実家の資力を匂わせるなど。
また、原作小説が単行本・文庫本になる際に大幅に修正された、雑誌「ダ・ヴィンチ」における連載版においては、わりと性格にエキセントリックな味付けがあったりもする。
しかし、あくまで映画の作中に限れば、彼女は「経済的には何不自由ないお嬢様」くらいの描写に留める調整がなされている。

彼女は「何不自由ないお嬢様」で、また作中随一の「優しさ」の持ち主ではあるのだが、一方で自己肯定感は境遇に対して低く、ある種の「退屈」を抱えてもいる。少し踏み込んだ言い方をすれば「不満がないのがとても不満な日々を送っていた」とでも言えるか。
そんな彼女は主人公・東ゆうと出会い、友達となることで、他の登場人物とも交流しつつ、様々なことに挑戦していく。
最初はそれを「受け入れて」、ある種「流されつつ楽しむ」だけだった彼女が、終盤では物語を左右する決断を下し、そして最後には「形からではない」、すなわち「他人の真似事ではない」自分の未来を選ぶ決断をしていく。

ネタバレにならないようにはこの程度の書き方しかできないが、作中人物の中でも大きく成長する人物である。
東ゆうの「夢」は、華鳥蘭子抜き……いや、少しいやらしい言い方をするならば「華鳥蘭子がお嬢様であること」抜きでは成り立たなかったところがあるが、し かし、最後には器以上に中身の大きさも備えた人物となり、世界に羽ばたいていく。
その姿は劇中ではほんのちょっぴりしか見れないが、それでも「蘭子なら描かれていない部分でも立派にやっているだろう」と思わせるには十分。

余談の部類ではあるが、映画鑑賞後はぜひ雑誌「ダ・ヴィンチ」連載版の1話を読んでほしい。テニス部の活動内容でフェイントをかけたり、「この学校で一番の美人はおそらくこのわたくしよ。」と言い放って東ゆうを翻弄するお茶目な姿が見れるので。


『トラペジウム』関連BDDVD・原作・サントラ:

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