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フィクサー

雇う側と雇われる側

養う側と養われる側

私の家族は明確だった。何かにつけ誰のおかげで生活できていると思っているんだ。と言われた。

しかし、当の本人にその自覚はない。

小さい頃すごくよく怒られた。

正直毎回びっくりするほど長い時間

お箸の持ち方ひとつで何時間も怒られた。

父の決まり文句は「いつから直す?」

「今から」と答えなければ説教は終わらない。

そして質問に対して黙ると怒鳴る。

時計をチラ見すると怒鳴る。

長時間立ちすぎて倒れたことがあった。

叩き起こされた。

小さい頃の思い出は怒られたことばかりだ。

ずっと思っていたのは、この人に逆らったら何されるかわからない。

そう思っていたから逆らえなかった。

ろくに文句も言えなかった。

悔しかったが、仕方なかった。本能的に自分を守っていたのかもしれない。

自分が怒られると決まって夫婦喧嘩に発展した。

そして「お前に使うエネルギーがなくなったら離婚する」

そう言うのが父のお決まりだった。

社会人になった頃親が離婚した。

そして父は再婚した。

「ずっといい父親、夫を演じてきた」

そう言った。

あまりにも衝撃的で言葉が出なかった。

演じてきたことが許せなかったというより、見抜けなかった自分に腹が立った。悔しかったし少しでも父ことを良い人だと思った自分が情けなかった。

文句を言わせない状況を作り上げ、自分の思う通りにことを運んでいく。

まさにフィクサーだった。

その人物が一番近くにいた。

演じるぐらいなら最後まで役になりきってほしかった。

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