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千葉駅前、ああ無常

先日、久々にJR本千葉駅からJR千葉駅まで歩いてみた。
そういえば小・中学生の頃、バスケ部に所属していたのだが、バッシュ(と今でもいうのか?)とバッシュケースは京成千葉駅前の雑居ビルにあったスポーツ用品店で購入するのがお決まりだった。当時、京成千葉駅には映画館があったのだけど、跡形すらなく代わりに立派なホテルが立てられ、駅前もキレイに整備されていた。数十年ぶりだから無理もあるまい。バッシュを買ったあの雑居ビルの跡地は駐車場になっていた。

千葉の郊外に住んでいた私は千葉駅といえば都会。中学生になり、洋服を買うのはそれまでの地元のヨーカ堂ではなく、選択肢の多い千葉まで行きたいお年頃だった。なんせ小学6年生から読み始めたファッション誌「mc sister」に思いっきり影響されていたので、「ナイスクラップ」や「アニエスベー」「イーストボーイ」といった地元にはまずないショップやブランドの服を手に取り、眺めるだけでも至福の時だったのだ。

千葉駅の改札を出て、高架下にある「ペリエ」と呼ばれていたショッピングモールをパトロールし、その先にあるパルコめがけて一直線。それから千葉駅に戻る途中にあった「三越」「リーガル」をウロウロして、小腹が空いたら三越前にあったケンタッキーで小休止。そういえばジェラートを初めて食べたのは多分、その三越の駐車場そばにあったアイスクリームショップだった。

高校生にもなると、買い物は都内に出かけるようになったけど、それでも女子高生には欠かせないアイテム揃いの「ソニプラ」みたいなショップやケーキバイキングで有名になった「イタトマ」は千葉駅周辺にあったので、なんだかんだで千葉も足しげく通っていた。10代後半で渋谷や銀座を知ったけど、それでも千葉市中央区は私の中でまだ都会で、使い勝手のよい街だったのだ。

パルコがあった場所にはタワマンが立ち、三越は取り壊されて更地になっていた。ケンタッキーもない。ただ、リーガルだけは踏ん張るように営業を続けていた。更地になったのは本館だったが、2号館?が入居していたビルにはヨドバシカメラとゲーセンが入れ替わり、けたたましいBGMに人が吸い込まれている。本千葉駅から千葉駅に向かう途中、やたらとコンビニやドラッグストアが目に入り、駅前になればなるほどチェーンの飲食店が軒を連ねていた。時々閉店のお知らせの張り紙がそのままになった路面店も少なくない。個性的なブランドも入居していたそごうでさえ、ユニクロとGUに占拠されていた。

かつて私が胸をときめかせた街の景色は様変わりしすぎていた。もちろん年を重ね、経験値もあがっているので10代の時と同じように捉えることはできないのだけど、それでも驚いたのは当時より今の方が選択肢が少なくなっていることだった。三越とパルコを使い分け、歩く道すがら「こんな店が出来たんだ、あったんだ」といった発見もあった。でも、数十年ぶりの千葉散策は(極端にいえば)右を向いても左を向いても同じような店ばかりという印象だけが強く残った。

数年前、千葉駅はリニューアルし、いわゆる「駅ナカ」ショップが充実した。そごうもあるので衣食住に関するショッピングは駅ナカ、駅前だけで事足りる。今やこの街は点と点でつながっているのではなく、1点集中型で終わっている。

「千葉は都市計画に失敗した」なんて記事を目にしたのだけど、街が私をこれだけ寂しい気持ちにさせるということは、やはり報道の通りなのだろう。そういえば千葉駅発の下り電車の窓からレンガ造りのモダンな建物が見えるのだが、その景色だけは昔も今も変わらない。

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