「たちばな」のあんころ餅が食べたい

ラジオ好きなこともあり、「ごちそうさん」以来朝ドラを見る習慣が出来てしまった。「カムカムエヴリバディ」だ。とはいえ、毎朝8時に起きてテレビにかじりついて視聴しているのではなく、NHKプラスでいつでも好きな時にドラマを追っかけ再生している。いい時代になったもんだ。

しかし人はなぜ、年をとると涙もろくなるのか。小田和正の曲をうっかり耳にするたび泣いてしまうのだ。かつてOAされていた保険会社のCMが脳裏にこびりついているせいだろう。「時を超えて~」が聞こえてしまうと、悔しいくらいに落涙。パブロフの犬のごとく。最近はAIの「アルデバラン」を耳にすると小田和正現象が発生する。それくらい、このドラマに毎回泣かせられるのだ。

久しぶりに楽しむ朝ドラは、テンポよく無駄なく描かれている。特に安子と稔の出会いから交際、結婚に至るまでは秀逸。起(出会い)承(惹かれゆく二人)転(二人を阻む壁、別離からの)結(困難乗り越え結婚)と、非常にスタンダードな構成だけど、安子のおぼこさとけなげさ、稔の清廉潔白さ、戦前という時代からそのまま飛び出してきたような雰囲気を纏った配役の妙もあいまって、気持ち良いくらい物語に没入できる。

偶然が重なり、やがて距離が縮まる安子と稔。離れていても手紙が来れば相手を想う。その想いをまた言葉にしたためる。思い立って遠く離れた場所まで会いに行き、「顔が見れてよかった」と帰る安子を心配して列車で追いかける稔。親の反対にも負けず、互いの一途な想いを添い遂げて、無事夫婦に。この後のストーリーはハードな展開が予想されるのだけど、ここまでの「清らかな恋」の描かれ方に、打ちひしがれた。

黒歴史で失敗だらけの恋愛を重ね、思い出すたびにゲンナリするばかりの私を安子と稔の恋模様が涙と共に浄化してくれた。コンビニで買ったあんころ餅を食べながら、ふと思う。「私もこんな恋がしてみたかった」。また泣けてくる。


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