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【駅メモ攻略】GGGは廃線を取りに行く ~②福井鉄道鯖浦線

駅メモ!に登録された廃線を取りに行った記録を残すシリーズ、その2回目。今回攻略したのは、福井県の「福井鉄道鯖浦線」だ。


福井鉄道鯖浦線について

  • 起点: 鯖江駅(福井県鯖江市)

  • 終点: 織田おた駅(福井県丹生郡越前町)

  • 駅数: 13駅

  • 路線総延長: 19.5 km

  • 廃止日:  1973年9月29日

ぱっと見で読みづらい路線名だが、音読みで「せいほせん」と読む。

路線図と駅。 地理院地図で描画。

1929年に鯖江~織田までの全線が開通。織田から先の越前海岸にある海水浴場へ向かう客で賑わったとのこと。実際に鯖浦線の名前は、「鯖江」と、この路線が繋がる予定だった越前海岸の「四ヶ浦しかうら」から一文字ずつ取って名付けられた。白新線や名松線、札沼線のパターンだ。伝わるかな?

海岸沿いにポツンと置いた青い点が四ヶ浦の位置。

しかし、これ…どうやって路線を繋ぐ予定だったんだろうか。織田の西側には険しい山がそびえており、通り抜ける道はあまりなさそうに見える。ただ、路線の現役当時は終点の織田からバスが出ていて、それで越前海岸まで客を運んでいたそうだ。現在も越前海岸に抜ける国道365号線がある。

複雑なループ線は当時はなかったと思うけど…

鯖浦線は、モータリゼーションの煽りを受けて需要が減り、1962年に先行して鯖江~水落、そして1972年に西田中~織田、翌1973年に残った水落~西田中が廃止となり、全線廃止となっている。

ちなみに、地理院地図から「年代別の写真 > 1961年~1969年」を開くと、当時の白黒写真で路線がはっきりと確認できる。

水落駅周辺(地理院地図)。左側中央から伸びて、弧を描いて南へ抜けるのが鯖浦線の線路。

どう攻略するか?

鯖江、東鯖江、水落の3駅は、現役路線から普通にアクセスできる。その先の越前平井からの駅をどのように取りに行くかがポイントとなる。

福井鉄道バス 鯖浦線

おそらく最も現実的な解がこれ。同じ福井鉄道の路線バスに「鯖浦線」がある。名前を引き継いだ形だが、読みは「さばうらせん」らしく、また起点もハピラインふくいの北鯖江駅になっている。その代わり、織田から先、当時は叶わなかった越前海岸まで路線が続いている。

西田中までが鉄道路線から離れた箇所を走るので若干不安はあるが、最悪アイテムでなんとかなるし、そこから先は路線に沿って走るので、問題なく織田までの各駅にアクセスできるだろう。

なぜか行きと帰りの本数が一致していないのだが、土休日で4.5往復。平日はもう少し本数が増える。

鯖江市レンタサイクル

鯖江駅と道の駅西山公園でレンタサイクルを借りることができる。料金は4時間まで200円、1日で500円。互いのスポットで乗り捨てができるのもなにげに便利。

今回のチョイス

駅メモの福井イベントで西山公園にアクセスした後に攻略を行ったので、自分はレンタサイクルを選択。水落から西田中の途中までは線路跡が自転車道として整備されているので、自転車で走ってみるのも悪くない、と思った。計画の段階では。

2024年8月16日(金)11:20  道の駅西山公園

道の駅でレンタサイクルを借りた。電動アシストのママチャリ。

頼むぜ相棒。

遠くにある台風の影響でどんより曇って北風が強いが、強烈な日差しに照らされない分、コンディションは悪くないと言える。

では攻略開始!

東鯖江駅

鯖浦線の起点は鯖江駅だが、まずは西山公園から東方向に坂を下り、廃止された駅である東鯖江駅へ向かう。

鯖江駅の北だけど東鯖江。福武線の西鯖江駅と対比させたのかな?

鯖江駅から北へわずかに400m。線路をまたぐ道路のΩカーブの陸橋の下あたりにあったようだ。

鯖江からこの先の水落までは、国鉄北陸本線の整備のために先行して廃線となった。その影響か、廃線の痕跡が全く見当たらない。

普通の複線に見える。駅があった雰囲気は全くない。

廃線であれば、その跡が道路になっていたり、区画の形が線路跡に沿った形になっていたりと、航空写真で見れば分かるようなパターンが多いように思うが、鯖浦線のこの区間は全くその痕跡を見つけることができなかった。

中央の赤線が路線跡。道路もなく、跡地に普通に住宅が建っている。

そのため、正直次の水落までは自転車でどこを走ったらよいか分からず、かなり迷ったw 何らかのナビツールが必要だなと痛感した次第。

水落駅

現在の福井鉄道福武線にも水落駅があるが、そこからは南に少し下がったところにあった。福武線との乗換駅でもあったようだ。ここも線路跡は見当たらない。

申し訳程度に福武線の高架を写す。

福武線の線路をくぐって坂を登ると、下りの先に一直線の道路が見えた。ここは廃線跡が道路として転用されているようだ。しかも、途中からは自転車専用道となっている。ようやく廃線の痕跡を見つけた。

直線だけどけっこう起伏があるな。

うっかりスルーしてしまったが、ここで後ろを振り返ると、通ってきた道の左側に、現在の水落駅へ向かう道がある。

きれいなカーブが描かれているところからみて、これも廃線跡とみて間違いないだろう。鯖江~水落が先に廃線になった後、福井鉄道福武線と接続するための線路跡と思われる。

自転車があしらわれた橋。橋梁を転用したのだろう。
昭和に廃線になっても、名前は「平成橋」。

長野鉄道屋代線とは違い、きちんと整備されていると走りがいがあるなぁ、と思いながら、快調に西へ向けて自転車を走らせる。

越前平井駅

越前平井駅に到着。

小高いプラットフォームの跡と桜の木で、「確かに駅があった」と感じさせてくれるたたずまいだ。

駅名標風の案内板。

案内板では「ひらい」休憩広場となっているが、駅名の読みは「えちぜんへいい」だ。この周辺の土地の名前も「ひらいちょう」なのに、なぜ読み方を「へいい」にしたんだろう。

越前平井から先は、正真正銘、田んぼの中を走る。

右を見ても左を見ても田んぼ。天気が良ければなぁ。

鯖浦線が現役だった頃も、田んぼの中を走る車両はさぞかしいい絵になっただろう。

こんな感じ?(Bing Image Creatorで作成)

しばらく自転車を進めると、横に立て看板があるのに気づいた。

コウノトリ?「巣塔」とは…?

何のことだろう?と思ったのだが、正面に答えはあった。

これか。

田んぼのど真ん中にコウノトリが営巣するための塔が立っていた。コウノトリで有名な兵庫県豊岡市を中心に、全国各地に設置されているそうだ。

周辺を見回すと、大きな鳥が飛んでいるのに気づいた。

コウノトリか!?

しかし巣塔に近づく様子はない。これはコウノトリではなく白鷺のようだ。

しらさぎ…
MaedaAkihiko, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

よもや、新幹線開通により特急しらさぎが見られなくなった鯖江市で白鷺を見るとは。

川去駅

あれかな?

川去駅の跡地は自転車道の休憩所が設置されていた。サイクルラックもあり、しっかりした休憩所になっている。

寄ってみた。

気づかないうちに自転車道が反対側の車線へ移動していた。いつの間に…

比較的大きな通りとの交差点を過ぎると、自転車道は並走していた車道と別れ、北西方面に進路が変わる。

自転車道のマップ。ゆるいなー。

マップを見ると分かる通り、自転車道は「和田川」という小さな川の手前で折れ曲がり、一般道と合流して途切れている。これは当時の線路がこうなっているからではない。川を渡ると鯖江市から越前町に入るためだ。

川の手前が鯖江市と越前町の境となっている。川の中央じゃなくて手前なんだ。

前回の長野電鉄屋代線といい、複数自治体を通じて廃線跡を整備するというのは大変なのかなぁ、と考えながら、車道を走る。

そういえば、このレンタサイクルは手前に「鯖江市レンタサイクル」のマークがでかでかと描かれている。違う自治体に入るのがちょっと恥ずかしい。

西田中駅

屋根つきの建物があるが、駅舎というわけではなさそう。

Googleマップでは「西田中バスターミナル」となっていたが、思ったよりはこじんまりとした建物があった。福井駅方面へ向かうバスと越前町のコミュニティバスが停まるようだ。コミュニティバスの方はここから先の鯖浦線の経路を比較的良好にトレースしているように見える。とは言え平日4本、土曜は2本、日曜は運休なので、利用は難しいかも。

西田中駅から自転車を進めると、目の前にS字カーブが現れた。

何の変哲もないS字カーブのように見えるが…?

地図で見てみると答えが分かる。

道路と路線跡が完全に一致する。ちょっとずれてるのはご愛敬。

向かって奥の方が線路跡を道路に転用したもののようだ。越前町で初めて路線の痕跡を見つけた。

反対側から。線路跡は駐車場にぶち当たって途切れている。
途端に快適な線形になった。

しばらく進むと、専用道にするにはちょっともったいないような広さの自転車道が現れた。右側の車道と路線跡が並走していたんだろう。左右の田んぼ、そしてその奥の山々に囲まれながら、南に向かってひた走る。

佐々生駅

線路跡のまっすぐな道を走っていたところ、目の前に分かれ道が現れた。

まっすぐ進むか、横道にそれるか。

まっすぐ進んでもすぐ民家にぶつかる。「何か」を感じ取り、横道に進入した。民家の裏手を走るような形になり、本当に大丈夫なのか…と思いながら恐る恐る進むと、目の前にそれは現れた。

小高い盛土と桜の木。
かなり崩れているが、盛土はコンクリートで覆われている。

実はここが佐々生さそう駅。コンクリートで覆われているのはプラットホームの跡だ。

しかし、同じような構造の越前平井駅と比べると、プラットホームが道に対して妙に高い。とはいえあまり気にせず通り過ぎてしまったのだが、実は道路はプラットホームの裏手で、 Google画像検索 で見てみると反対側には立派な対面式ホームが残っているようだ。これは気づかなかった…!案内板か何か立ってれば坂を登る勇気も出たのになぁ。

となると、この一本道も厳密には線路跡ではない…?

この後、線路に沿った道は再び途切れ、車道に出る。車道を進むと、目の前に嫌なものが見えてきた。

道路が山に向かって伸びている。

山である。

ここで改めて鯖浦線の路線図と地形図を。

鯖浦線はS字の線形をしている。これにはおそらく2つ目的があり、越前町の市街地(西田中駅周辺)を通すのが一つ、そしてもう一つが山を極力迂回するのを狙っていると思われる。しかし佐々生から先はいかんともしがたく、山登りに挑まなければならない。この時のための電動アシストだ。頼むぜ。

下りに見えるのが悔しいけど、登ってます。
登り切った…!

陶の谷駅

再び平坦になった道を進むと、次の駅である陶の谷すえのたに駅がある。

到着。

陶の谷駅は、鯖浦線で唯一線路も含めて保存されている駅だ。越前町の指定史跡として登録されている。

案内板。
駅名標。当時のものなのかな?
桜の木の枝が垂れ下がっている。

ホームには立派な桜の木が3本植えられていたが、1本の木の枝が線路近くまで垂れ下がっていた。列車が走っている当時は線路にかからないように配慮されていただろうことを考えると、廃線から50年という時の流れを感じずにはいられなかった。

残りは…

さて、陶の谷駅まで到着して、鯖浦線の駅はあと5つ。ここでこれからのプランを考えてみる。

今回、レンタサイクルは4時間コースでレンタルをしている。予定走行距離は36km。時速9kmならゆっくり走っても十分だろうと踏んでの選択だった。が、陶の谷駅までで既に2時間を要しており、一方で距離は13kmと、想定よりもとんでもなくペースが遅いことがわかった。

しかもこの先、さらに険しい山登りが控えている。

あ…無理だ、これ…

残念ながら、織田までの到達は諦めざるを得ないようだ。

悔し紛れに、駅メモの画面から地図を見てみる。

織田まで紫色の円で覆われている。

紫色の円は、現在地から近い順に特定の駅数だけアクセスできるアイテム「レーダー」が利用できる範囲を表している。残りの5駅はレーダーのアクセス範囲に収まっているようだ。

「行ってないのにアクセスする」のは拒否したいのが自分のプレイスタイルだが…背に腹は代えられぬ。

織田駅までレーダーを飛ばして鯖浦線制覇。

ちょうど、今回レンタサイクルを借りた西山公園まで県道104号線でまっすぐ向かえるようだ。リベンジを誓い、陶の谷を後にした。

さらば陶の谷。

福井鉄道鯖浦線を制覇して

…制覇できてないんだけどね。

鯖浦線は、一部欠けこそあるものの、路線跡が自転車道や一般道として整備されており、当時の車窓風景を思いながら、田んぼの中を一直線に伸びた道を走るのはなかなか気持ちよかった。

今回はレンタサイクルでの挑戦だったが、やはり電動アシスト特有の「リミットのかかったような動き」によりスピードが思うように出ず、快適に走れたとは言いがたいところがある。空気圧も適切でなかったのか、カーブで後輪が滑るような感触だったのも気になった。行ったその足で乗れるのは強みだが、やはり相当の距離を走るときは自前でロードバイクを持っていくのがいいんだろうか、とも思った。

越前平井、佐々生、そして陶の谷のプラットホーム跡にはいずれも立派な桜の木が植えられていたのが印象的だった。桜の時期にこれらの駅を再訪するのもいいかもしれない。素晴らしい景色が待っていることだろう。

また、終点の織田はその名の通り織田家発祥の地であるそうだ。

織田駅跡には織田信長の像が立っているらしい。是非ロードバイクで走破して信長公に迎えてもらいたいところだ。

ちなみに

巣塔の周りでは見られなかったコウノトリだが、陶の谷からの帰り、鯖江市の田んぼの中で発見した。巣塔からは直線で2kmちょっとのところ。

白と黒の羽、黒いくちばしが特徴。
コウノトリ、白鷺、アオサギ。野鳥天国。

特別天然記念物が間近に見られる鯖江の地。これからもその豊かな生態系が維持されることを願ってやまない。


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