「秋の乗り放題パス」で行く!中国地方乗りつぶしの旅 ~3日目後半戦
2023年10月に「秋の乗り放題パス」を使って中国地方の路線を乗り回した旅の記録。
最終日の続き。芸備線で備後落合駅に着いたところから始まります。
2023年10月16日(月)14:30 備後落合駅
落ち合う駅、備後落合駅
その名の通り、備後落合駅は芸備線と木次線が合流する駅になっている。「分岐点」と書いてあるが、ここは語源にならって「合流」と表現したいところ。
備後落合駅からは芸備線の上り下りと木次線を合わせて12本(うち1本は臨時)の列車が出発するのだが、実は、1日で14時台のこの時だけ、3方向の列車が「落ち合う」のだ。例えるなら、太陽と月と地球が一直線に並んだ時だけに起こる日食や月食のようなものだ。いや、それはさすがに大げさか。
乗り鉄視点で見れば、駅に着いてそれほど待たずに乗り換えができるということで、このタイミングを逃すわけにはいかないだろう。山あいの小さな駅が、この時だけちょっとした賑わいを見せる。
芸備線の車両の到着から少し遅れて、木次線の車両が「落ち合う」ためにやって来た。
そして乗客はそれぞれの行先へ向かう列車に乗り込んでいった。
芸備線② ~備後落合→三次
落ち合った列車たちは乗客を乗せて次々に駅を出発していく。
14:39、三次行きの列車も備後落合駅を出発した。
備後落合から次の比婆山までは100m近い標高差がある。これをまた制限25km/hでそろりそろりと下っていく。
備後落合からの5.6kmを15分かけて、比婆山駅に到着。
一瞬「ヒバゴン」の名前が頭をよぎったが、ヒバゴンの由来の比婆山はどちらかというと木次線の方が近いようだ。
ここまで来るとようやく急峻な谷は終わり。スピードを上げて、再び開けた谷に沿って進んでいく。
途中、備後庄原駅に到着。
うっかり撮りそびれてしまったが、駅のフェンスによじ登ってホームランボールをキャッチしようとする外野手の像もあった。アイデアが面白い。
備後庄原では地元の学生がかなり乗り込んできた。時刻は15時半頃。下校の時間帯だ。しかし車内の席は鉄の皆さんでそこそこ埋まっており、ほぼ立ちながら列車に揺られている。いつも鉄の人たちに囲まれながら通学してる、と考えると、いや、なんとも、お疲れさまです…と言いたくなる。
福塩線と接続する塩町駅でも学生が乗り込んできた。自分の周囲も学生に囲まれる。
と、そこで不思議なことが起こった。ネットが繋がらなくなったのだ。
正確には電波は来ているが、通信できない。学生たちは普通にゲームを遊べているようなのだが…しかもGPSも拾わない。これは位置情報ゲームとしては一大事。
結局そこから三次までの駅はいくつかチェックインできず、アイテムを使って論理的にアクセスせざるを得なかった。彼ら、いったい何を使ったんだ…
何はともあれ、この列車の終点、三次駅に到着。
…ごめん。滞在時間30分しかないんだ。
駅の近くに観光案内所と併設されたお好み焼きの店があって惹かれるが、あいにく時間がない(そしてそもそも営業時間じゃなかった
しかしここには絶対来ることになるだろう。というのも、三次から直通で福山へ向かう福塩線と、三次から島根県の江津を結び、現在は廃線となっている三江線の攻略が残っている。三江線は実に108.1kmもの距離があり、しかも現在は一本で直通するバスがない。
ここを攻略する手立ては実は既に考えていて、あとはそれをいつ実行に移すか、だけである。三次の「楽しみ」はそれまで取っておこう。
芸備線③ ~三次→広島
さて、ここからはラストスパート。広島まで直通の列車で一気に向かう。
やはり学生が乗っていたが、先ほどのトラウマから、ちょっと距離を取って席に座るw
16:34、広島行きの列車は出発した。
…と思いきや、進むにつれて山が低くなり、再び夕日が現れたりする。
西から昇ったお日様が…じゃないけど、見えるか隠れるかのせめぎあいがどこか面白い。
やがて、島根県に向かって流れる江の川を離れる。向原駅から先は、広島に向かって流れる三篠川に沿って進んでいく。中国山地の分水嶺を越えた、ということか。
ところで、この三篠川、流路が大きく曲がるところなどで堤防の工事をしているのが気になった。せっかく景色がいいのになー、とも思ったのだが、ちゃんと理由があり、平成30年7月の豪雨、いわゆる西日本豪雨の被害に対する復旧工事を行っているから、ということだ。
西日本豪雨では、倉敷市の真備町が大きな被害を受けたのを覚えている人もいるだろう。芸備線にも被害があり、三篠川にかかる橋梁が流失し、復旧まで1年以上を要した。今こうやって乗車ができるのも復旧の努力の賜物である。ひたすら感謝の言葉に尽きる。
広島駅が近づいていくにつれ、次第に車内にも客が増えてきた。下深川駅から先は、三篠川と合流した太田川の堤防に沿って進む。
堤防の上を走る道路を見上げることになるのだが、日没後のいわゆるマジックアワーを迎え、夕暮れのオレンジがまだわずかに残る薄暮の空をバックに走る車や自転車がやたらエモく見えた。
途中駅で降りて写真を撮りたかったのもやまやまなのだが、いかんせん帰りの新幹線まではあまり時間がないので、車内から眺めるだけに留める。
途中の玖村駅周辺の画像をGoogleストリートビューから。正面の低いところが線路、その隣に堤防があり、その上を車が走っている。これが夕暮れだったら…と考えてみてほしい。どうだろう。エモくないだろうか。
太田川から離れ、しばらく住宅地を進み、大きく右にカーブしたところで、ついに芸備線終点の広島駅に到着。
時刻は18:14。三次からは1時間40分。そして新見からは実に5時間以上過ぎている。これにて芸備線制覇。そして、秋の乗り放題パスの旅、完結!
あとは新幹線で帰るのみだ。
新幹線に乗る前に、お土産を物色する。
今回の旅は岡山をメインに動き回った印象があるので、岡山のお土産を買いたい。広島の土産物屋でもちょっとくらいあるんじゃないか?と思いきや、これが全然なくて困った。岡山市電で広告ラッピングされていたきびだんごくらい。
岡山と広島は仲が悪い、みたいな噂もチラッと聞いたことがある。まさか、その影響…?そもそも単純に、広島県でも割と西の方の広島市で岡山県のお土産を物色するのが間違い、という説もあるけど。
そんな中でも、なんとなく岡山と広島のコラボレーションになりそうなものを選んでみた。何を買ったかは後ほど。
新幹線で帰京
19:06発ののぞみ58号で帰る。
到着は23時。4時間近い旅になる。朝の8時からこれまで乗りとおしだった自分の最後の試練だ。
シンカンセンスゴイカタイアイス
発車からしばらくして、車内販売のワゴンがやって来た。10月末をもって通常車両では終了となる車内販売。「アレ」を買わなければ。
実はスジャータのアイス、通称「シンカンセンスゴイカタイアイス」を食べるのは初めてだったが、マジで硬くて驚いた。買ったはいいが、アイスが程よく解けて食べられるようになるまでだいぶお預けを食らった。しかしそういうエンターテインメント性?が楽しい。
谷村新司さんの訃報にふれて
アイスを待っている間、スマホを眺めていて、谷村新司さんの訃報を知る。
たまたま乗っていた新幹線がJR西日本所属のもので、到着前のチャイムが「いい日旅立ち」だった。まさかこんな日に聴くことになるなんて…
この曲を歌ったのは山口百恵だが、作詞作曲が谷村さんだ。元は国鉄のキャンペーンソングだったというこの曲。歌詞に鉄道を思わせる単語は何も入っていないのだが、なぜか鉄道旅のイメージが強い、と思う。
旅情をかき立てる歌詞とメロディーの美しさ。わずか5秒ほどのチャイムの間に今までの旅の様々な思いが去来して、うるっとくるものを感じた。
日本人の心に深く染み入るような数多くの名曲を作った谷村さんに改めて感謝すると共に、冥福を祈りたい。
そしてJR西日本にはこの曲を末永く使い続けてほしい、と思う。
…北陸新幹線のW7系のメロディー…あれはちょっと悪い意味で鳥肌立っちゃうけどw
曲は素敵なんだけど、ギラギラした音色のせいなのかなぁ。
旅の終わり
そんなこんなで、22:57、のぞみ58号は予定通り東京駅へ到着した。
既に新幹線の終電は出発しており、東京駅は到着する新幹線を迎え入れるのみとなっている。
家に着く頃には日付が変わっていた。
あぁ、明日(というか今日)も仕事か。ちゃんと起きれるかな…
おつかれさまでした。
本日の成果
アクセス駅数: 378
獲得新駅: 59
通算アクセス駅: 5,490
移動距離(駅メモ!基準): 1,082km
なんと移動距離は1,000kmを超えた。北海道旅行の時に飛行機を使って移動した距離を上回り、純粋に鉄道のみで記録更新。改めて、良く乗ったなぁ、自分。
後日談 ~お土産
広島で帰り際に買ったお土産について。
まずはこちら。
もみじ饅頭は言わずと知れた宮島の銘菓。じゃあピオーネって?となるが、ブドウの一種で、岡山県でも生産が行われている。
実際に新見産のものが使われているかは分からないが、無理やりコラボさせてみたw
続いてこちら。
ホルモンの天ぷらは広島のB級グルメ。これはおつまみだなー、と思いながら(そして車内にニンニクの匂いが充満しないか気にしながら)買って帰り、翌日焼うどんに入れて食べてみた。
そう、津山のホルモンうどんの(無理やりな)再現。
天ぷらの衣が取れ、黒いキノコのように見えるのがホルモンだ。
さすがホルモンだけあって、様々な部位の異なる食感が感じられて面白い。でもこれ、本番のホルモンうどんにどれくらい近いのかな…?いずれ食べに行かねば。
旅を終えて
ということで、3日間ぶっ通しで鉄道に乗りまくった旅が終わった。帰ってからはしばらく腰痛に悩まされたがw、その分、濃密な3日間を過ごせた。
今年は気候的にはまだまだ暑さが残る日が多かったが、少しずつ紅葉していく山々や、家々の庭に植えられた柿の木(写真には撮れなかったけど)など、秋をあちこちで感じられて良かったと思う。
来年も「秋の乗り放題パス」を使って、どこかに旅に出てみたい。また平日1日つぶしてもいいか職場で相談することになりそうだけど。
駅メモ的には、今回の旅で新駅150駅アクセス、路線は8路線を制覇できた。3日間ローカル線だけを回った割には上々の成果だ。
中国地方の山陰と山陽を結ぶ路線(陰陽連絡路線という表現があるそうだ)は、伯備線、因美線、木次線、福塩線、そして廃線の三江線と、まだまだある。次はどれを攻略しようか。また時が来たら計画を立てたい。
ふと思ったこと
今回、芸備線の経営指数が20,000を超える区間(東城~備後落合)に乗車して、ふと思ったことがあったので、ここに書き記しておく。
今回、自分は東城~備後落合の510円(意外と安い!)の区間を「秋の乗り放題パス」を使って乗車した。おそらく列車に乗っていたほとんどの人が同じだったろう。
確かに車内はそれなりの盛況だった。しかし、我々は実際この路線の売上に貢献できたと言えるのだろうか…?
廃線が近づいた路線を「乗って応援」とは言うが、(正当な方法ではあるが)設定された運賃を支払わずに乗って、それは本当に応援したことになるのだろうか…?
今後の自分の乗り鉄としての立ち振る舞いを少し考える機会になった。
旅の者が1回乗っただけで経営状況が改善するようなものでもないし、単なる自己満足に過ぎないのは重々承知なのだが、もし「乗って応援」の心が自分にあれば、少しでもその路線(せめて会社)の利益の足しになる乗り方ができたらな、と思う。
「秋の乗り放題パス」で行く!中国地方乗りつぶしの旅
~完~