![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52278634/rectangle_large_type_2_0b08d628dc74aced9b7f4a4bb5f2946d.jpeg?width=1200)
Photo by
5499501176_52929
オレアンドリン。
職場の駐車場でMさんと会った。
同じフロアなのに今日は姿が見えなかった。私
も外出したり監事会の準備に追われていたし、MさんはMさんで社用車の予約簿を触っていたから外回りしていたのだろう。
Mさんが隣接する民家の庭から伸びる低木を指さした。
「これなんて花咲くか知ってる?」
「知ってますよ」
「…さすが。ぐぐちゃんみたいな花、だよね」
嫌味のつもりだろうか?
夾竹桃。
6月になれば、鮮やかな明度の高い赤い花を咲かせる。
「触れない限り安全ですよ」
小首を傾げて笑ってみせる。
触れたりしなければ、ただの綺麗な花だ。
私みたい?気の利いた褒め言葉として受け取っておくに決まってる。
「知ってます?この花は、原爆から一年後、70年は草木の生えないと言われた広島の焦土に、最初に咲いた花ですよ。それを私みたいなんて、光栄です」
「勝てないね、俺」
マスクで見えないだろうけど、きっと私の唇は今鮮やかな赤な気がする。
花が綻ぶように、私も笑ってみせようか。
今や有名な話だけれど、夾竹桃は強い経口毒性を持つ花で、花だけじゃなくて木も葉も実にも毒があり、土にすら毒を持たせるほど。
勿論、見ているだけなら毒は回らない。
触れない限り大丈夫。
勝てない、なんて当たり前じゃない。
「だってもう、Mさんは触れちゃったじゃないですか」
「え、俺死ぬの?」
「夾竹桃みたいって嫌味言ったの、Mさんですよ?」
もう一度言うね。
見てるだけなら、毒は回ったりしない。
触れない限り大丈夫。
ただ口に入れたら最後。
オレアンドリンの致死量は青酸カリをも上回るんだよ。
いいなと思ったら応援しよう!
![ぐぐこ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/54175730/profile_fef22ea8d3684032ccae0cd9a0c391a4.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)