2024.7.26 UP「鬼柳」ー新世界掛け将棋少年備忘録ー
「お父はん?今日はどこいくの?」
「そやな?勝男どこいきたい?」
「僕、通天閣の将棋場いきたいわ、坂田のおいやんにしばらく会うてへんし?」
「おお、坂田な、よっしゃほな今日は懐も暖かいしいくか?」
「うんうん」
勝男は手をつないでもらって左足で下の段、また左足で下の段へとおりていった。」
「おう、浪平さん?おお勝っちゃんも?」
「おう、しばらく、坂田いてるか?」
「うんうん、一番奥でなんか土谷とか言うゴト師とやっとるわ、」
「ほうほう」
「お父はん?ゴト師て何や?」
「ああ、まあええ、お前にはまだ早い」
「ほら、これ、おいやん渡し、160円」
「うんうん」
勝男は両手で受け取って、自分の背丈以上のカウンターに万歳状態で手のひらだけでお金を伏せた
「おおきに、えらいなあ?はては吉本やな?」
小平「そんなもんにするかい。」
「おいで勝男」
「うん」
「ちょっと邪魔するで?」
「おう、邪魔するんやったら、よそいってや?大事な一局やねん」
土谷が相席を遮った。
坂田が口を開く
「おう、小平の、久方やな?この人はええんや、お前のやり口ようみてもらい」
「おう!知り合いか?それはすまんかった、まあまあ、よろしゅう」
「なんぼ賭かかってんの?」
小平が口をひらく
坂田「5000円や」
「おう!そら大層やな?みてみ?勝男?この缶にお金いれるんや。」
「ふーん」
土谷が口を開く、
「大事な一局でっしゃろ?まあ静かに見といてよ?」
「うんうん、拝見させてもらうわ」
坂田「ほな続き」
「あいよ」
勝男は正座して、盤面を凝視していた、
もう中盤から終盤に指し掛るところで、坂田優勢とみたところであった。
小平が顎に手をやる。
土谷は穴熊に崩れたような守りで、小平ももう終わるなと思いつつ
続いてから5巡をまわったころの、坂田の思案中に、勝男が大声をあげた
「おい!おいやん?何しとのや?」と盤の向こう側の坂田の成金をくすねたのを指摘した。
土谷が口を開く、
「な、何や坊主?」
間髪いれず、坂田が勝男の手を押しのけてこういった。
「ええねや」
勝男がすごい剣幕で怒り出す。
「なんでや?このおっさん?駒くすねたで?」
土谷が爆笑する。「ようわかったな?坊主?ほやけど、ここはこういうとこや。」
坂田「そうや、こういう奴はこんなもんや、所詮しれてる、お前はせんかったらええ」
土谷「なんや、嫌な言い草やな?まあ坊主、あ〇この毛生えてきたら、相手しちゃるわ」
勝男はうつむいて、ブツクサと拗ねていた「なんでええんや?あんなん?・・・」
坂田「それでもあと2手や」
小平「そうや」
土谷「ええ?ほんまか?」
勝男「ほんまに?」
土谷「ほんまに?」
「ああ、そや、お前の王将から見て3.2に銀下がるから考えてみ?」
「そ、そんなわけあるかいな?」
土谷が盤上の角とにらめっこする、腕を組んで体全身が力んで一回り小さくなっていた。
「な、ないわ・・・,参りました」
「ほな、おおきによ?」
「くーーー、まだこっから巻き返せたのにな?」
「アホか?どう考えても無理や」
「ほな、もう一局」
「悪りけど?この御人といつも手合わせ願ってるねん、また相手したるわ」
小平「ええんか?」
「ええ、ええ、こんなクズほっといたらええ」
「く、クズてかいな・・・」
「おい、勝男、焼きそば買うてこい」
「うん」
「ほないこか?」
「すまんな?邪魔して?」
「何を言うねんこいつが邪魔や、いこいこ」
土谷「また頼むで」
「献上金おおかったらな?」
「あ、アホいうなや?」
《END》
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