ビジョナリーキャンプの話(後編)
2019年の3月に未来館で実施されたビジョナリーキャンプですが、そこでメンターというポジションで参加させてもらいました。前編はこちら。
チーム葛藤の思考のプロセス
4月から議論を始め、10月には展示として未来館に設置しないといけません。チーム葛藤のビジョンに磨きをかけるために議論をはじめました。
いろいろ聞いていくと、ビジョナリーの3人はわりと優柔不断なタイプで葛藤しがちな若者であるということがわかります。そして、仕事を頑張りたいタイプ。
ここでメンターの自分としては、どうしても気になることがあって聞いてみました。ビジョンの内容を見るといくつかのテーマが見えてくる。
1. 育児というテーマ
2. テクノロジーによる葛藤というテーマ
2つが合体したテーマになっていると思ったわけです。どっちにとくに興味があるんだろうなと素朴に疑問になったのです。もちろん2つをかけ合わせたものについて掘り下げたいという選択肢もあると思います。
それぞれに聞くと、2番が興味があると意見が一致しました。が、いろいろ議論があった末、育児は外せないということになり、いったんその方向で掘り下げていくことになりました。「育児における葛藤」をまずは調査してみようと。身近な人に聞いてみたり、ネットで募集した人に聞いてみたりですね。みなさん真剣に協力していただけ、いろいろな声が聞けました。
議論した末
育児における葛藤、テクノロジーに頼ることで親のアイデンティティが失われるのではないか、など様々なテーマで議論を重ねました。
と言いつつもそろそろ展示の内容を決めなければならない時期に入ってしまいました。そこまでの議論を踏まえて展示の側から考えてアイデアを出し合ったところ、「ベビーテックストア」というアイデアがでました。育児に関する未来のアイテムを考案し、それを使うべきか否かを体験する来館者のみなさんに考えてもらう。
そして更に議論を重ねた結果、育児というテーマを外すことに!
ビジョナリーたちにいろいろ聞いたところ、結局そうなることになりました。確かに一番最初に質問したときに、「テクノロジーによる葛藤というテーマ」の方を選んでましたからね。
つまりは、「未来のテクノロジーショップ」みたいなのがあって、そこに並ぶ商品をみて使うべきか否かを葛藤させる。そういう展示です。
展示設計をまとめていく
ここはきっと自分の仕事なんだろうと思い、ビジョナリーをリードする形で進めていきました。日頃から付き合いのあるプロを集めてチームを作りました。
松山 全体ディレクション。システム構築、プログラミング。一部画面デザイン
TANGRAM 永倉さん 企画について。UXも相談。
荒牧 悠さん アイデアなど。アートディレクション、イラストも。
松下 裕子さん グラフィックデザイン、会場の構成など。
中尾仁士さん ビジョナリーの思考のプロセスをイラスト化。
Satoshi Yoshitakeさん 会場に流れるBGMやUIにつけるSEなど。
ビジョナリーをクライアントに見立て、上記チームでプランを形にしていきました。
上記映像で議論してる風景とかも登場します。
完成
この派手な髪色のお姉さんの表示された端末で、質問に答えていきます。すると、未来の不思議なアイテムがおすすめされます。
例えばこんな具合です。最後にアイテムを決めると、紙が印刷されます。
これを持って、お支払いのコーナーに行きQRリーダーにかざします。
すると、画面には注意がたくさん表示されます。
同意を押して購入。この注意書きの画面、やっぱり多くの人はろくに読まないで同意ボタン押すんです。なんていうか反射ですよね。日頃からそうやって読まないで同意しちゃってるんだと思います。それってとっても怖いことですよね。
様々なアイテム
お店なんでカンバン作りました。Life Assistance Store。
ポスターも作りました。荒牧さんのイラストと松下さんのデザインでめっちゃいいのができた。
ポスターの下には未来のアイテムのモックのようなものも。
中尾さんに書いてもらったビジョナリーの思考のプロセスがとてもいいです。ビジョナリーたちにヒヤリングし、その場でどんどん書いていってました。仕上げでポスター的なサイズにまとめてもらいました。
チーム葛藤のビジョン
最終的には以下のような短い文章にまとまりました。
テクノロジーを使うときに生まれる葛藤を大事にする
ビジョナリーからのメッセージ。
未来には、どんなテクノロジーがあるでしょうか。それをどのように使えば、私たちは「幸せ」になれるのでしょうか。未来のコミュニケーションには、今よりさらにテクノロジーが介入していると考えます。この展示がみなさんにとって、テクノロジーとの向き合い方についての、自分なりの正解を探るきっかけになれば幸いです。
世の中を一変するような強く大きなビジョンではないかもしれませんが、実はすごく重要なことを言ってると思います。SNSが発達し思いがけず変なことがいっぱい起こってる現在。ここから10年の未来2030年に起こってることはまだ予想がまったくできません。テクノロジーによって恩恵も多くあるでしょうが、想定外の問題もたくさん発生しそうです。テクノロジーとの向き合い方という重要なテーマについて問題を投げかけるようなビジョンにまとまったと思います。
まとめ
ビジョナリーキャンプ。とっても難しかったです。自分自身がビジョンということにちゃんと向き合ってきてなかったこともあり、考えさせられることが多かったです。そして、若いビジョナリーといろいろ話し、考えるというのは日頃なかなかない機会で面白かったです。そして、実はなにげに未来館の方々や他のメンターの方々などとも様々な話をしました。未来について真剣に考え、その表現について議論する。とても有意義で刺激的な時間でした。