インタラクティブについて
先日、友人の平原真さんに誘われて、大阪芸大の講義で喋った。ちょうど宮崎に出張してるときで、宮崎のピーマン農家のプレハブでzoomごしに講義。なんというかすごい時代だ。
その中で、平原さんに質問されて考えたことをここに書いておく。
過去に作っていたものと最近作っていたもので作風というか受ける印象が違いますが、なにか本人のなかで違いはありますか?
なんというか、良い質問というか、その昔一緒に作ってたからこその質問かなとも思うけど、これを言語化するのは自分にとっても「はっ」とするような出来事だったので書いてみる。
そもそも昔何作ってたか
自分の知名度なんてゼロ付近なので、昔のことから説明しておく。
AWAMOJI
大学生の卒業制作で作った。以下の動画は2013年に富山のワンダーラボに納品したものをバージョンアップしたときの動画。学生の時作ったのは幅が半分だった。解像度も半分。泡で文字がでる。
RippleMaker
大学院のときの修了制作で作った。波紋で模様を描ける装置。
fuwapica
八木澤さんとのコラボ作品。空気圧を検知して光が変化するシリーズ。いろいろ作った。
色注入できるfuwapicaもある(あんまり発表してない)
RGBy
平原さんとのコラボ。色を取り込むライトシリーズ。いろんなバージョンがある。売ったりしたときもある。
過去の作品はこんなところでいいか。
最近作ったもの(作品は少なく仕事が多いが)
siroサイトへのリンクにしておきます。MOMENTum以外はクライアントワークですが、割と自分がアイデアも出したりしたもので、雰囲気は出てると思う。
昔と今の違い
そもそも、過去のものは自主制作ばかりだし、メディアアート文脈の意識が強いころなので違って当然なんだけど、あえて学生に説明するという意味で説明する。
昔の作品は、「インタラクティブ・アート」という流れがあり、そのなかで何かを模索していた時期に作ったもの。なので、「インタラクティブ」という手法の中でなにかを考えていた。とはいえ、プロジェクターを使うのは嫌だったので、なるべく立体物でやってたけど、それでも制御しやすいLEDを用いたりとか、なんかトーンとしてはかつての「メディアアートっぽい」。
クライアントワークで知ったこと
が、その後クライアントワークをするなかで、様々な人と出会っていく。それは例えば、映像のプロたち。映像の人たちはタイムラインのデザインに長けているので、その完成されたタイムラインというのはやっぱり素晴らしい。人の手で細部に渡って調整されたタイムライン。たとえばグラフィックが動くような表現だとしても、プログラマーが数式を操って作ったアニメーションと手で作った練り上げた動きとは結構質感が違う。プログラマブルに動かすとしても、アニメーションのプロの目と感性、引き出しを使えば同じようなクオリティになるのかもしれないが、少なくとも自分がプログラミングで作る動きでは彼らのそのクオリティとは違うものになる。
他にも、プロダクトデザイナーとか、職人さんのものづくりのクオリティとか、なにか「すげー!!」というのをたくさん「知ってしまった」。
そうすると、全体をプロデュースする立場で考えると、プログラミングとかデジタルとかで全部を構成することがナンセンスに感じてしまう。追い込まれたタイムラインの良さは取り入れたいし、ものとしてのクオリティとか、素材のもつ力とか、そういう「知ったこと」を生かしたいと思う。
すごい!の手柄はどこにあるのか
あとは、デジタル技術的に難しいことに対してチャレンジしてなんとかするっていうのに慣れちゃったのもあるかもしれない。デジタル技術の凄みって作り手以外に響くような要素でいうと、そんなにいろいろなくて、わりかし「おぉすげー、どうなってんの?どうやって動いてるんだろ?」みたいな技術的な興味に行き着くことが多い。例えば、マシンラーニングとかを使って実現したものとかだと「おぉーすげー、コンピュータも進化したなー」という驚きで、その驚きについて、果たして自分は関与できてるのだろうかと疑問に思ってしまう。
かつて自分がかたくなに作品にプロジェクターを使わなかったのは、「おぉ面白い!」って思ってるのは「プロジェクターの手柄」ではないかという疑惑を拭いきれないからで、「素材とか技術に自分の表現とか感性が食われてしまう」のを恐れていた。
一旦そう思っちゃうと、もうそういうのは禁じ手として使いたくなくなっちゃう。
すべてを総合して今の自分の価値観を組み立てると
いい塩梅を探ってる。デジタル的な技術も一つのスキルでしかない。電子回路とかもあるし、メカ的な動くものの設計というのもある。他にも形状のデザインとか素材の組み合わせとか、デザインとか。あとは自分以外の才能をアサインして組み立てるのもあるし、なんかもういろいろ。
すごい多くのパラメータを扱って塩梅を探る感じ。いい味を探る。スパイスきかせてみたり、塩味だけで勝負してみたり。
だから昔作ったもののと今作ってるものは大きく違ってるんだと思う。