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AWAMOJIを懐かしむ
2002年ぐらいから富山の北陸電力のワンダーラボで展示されていました。2023年2月で閉館となりAWAMOJIが見られる場所がなくなりました。
この作品を振り返ってみようかと思います。
自分の初作品とも言える
もともと、マックでアプリケーション作ってシェアウェア(死語か)を作ってました(高専生の時)。大学に編入した後、デザインを学んでましたが、4年生からメディアアートを目指して、そこで作ったのがAWAMOJIの原型のBubbly Visionという作品です。
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この作品は「泡で文字が出る装置」です。そんなのうまくいくかね?って思われるかもしれませんが、うまくいくんです。
制作プロセス
これ、大学の卒業制作で作ったんですが、当時プログラミングのスキルは程々にありましたが、制御関係のノウハウは持ってませんでした。だから、On/Offぐらいの制御で作れるものを考えてました。で、ある日ひらめいたんです。「泡で文字出せるな」って。
で、まず自分が使えそうな基板を探しました。そしたら、これがでてきました。(今も売ってる!!)
で、先生に相談したところ、「電磁弁」というのがあるぞと。
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当時は、電磁弁のこともよく知らなかったですが、とりあえずこれを手に入れたことで、なにか作れそうだなってことになりました。On/Offするには100Vの制御が必要なので、SSRというのがあると教えてもらい、さらに、コイルを使う電磁弁だからサージキラーが必要だとZNRを教えてもらいました。直流の制御で交流の制御をする方法がわかったので、回路関係はクリアできました。
実験
学生でお金もないので、まずは1本だけ作りました。アクリルパイプに水をいれ、ゴム栓に穴をあけてチューブを突っ込みエア缶で送る空気を電磁弁でくいとめチューブに接続。電磁弁とチューブを繋ぐのに継ぎ手があるとか、そういうのはホームセンターに売ってるものでなんとかなったので、できました。
空気圧が高まったところで、電磁弁を開けると….
バン!!!!ビシャッビシャビシャ!!!
天井が水浸しになりました….。床も水だらけです。パソコンにもかかりました。。。
空気圧をなんとかコントロールしないとだめそうですね。で、ホームセンターに売ってた「レギューレータ」というのが、ネーミング的に行けそうなので調べて買いました。電気の世界でもレギュレータといえば、「7805」などの電圧を5Vに下げてくれる便利なパーツです。高めの圧力を下げて一定化してくれそうなネーミングですね。
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まさに思ったとおりで、出力側の空気圧を指定した圧力になるように空気を逃して圧力を一定化してくれるものでした。これを間にいれることで爆発はおさまり、泡がちゃんと出るようになりました。
泡の形
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なんかこんな感じで、泡が崩れちゃいます。大きな丸い感じの泡を出したいと思ってましたが、どうもそうはなりません。
「こりゃ粘性だな」
と自分で言ったかどうかは記憶が定かではありませんが、ドロっとした液体なら行けそうと察しました。アパートにあるものだとサラダ油ぐらいでしたが、油をアクリルパイプに入れるのは流石に嫌だったので、もうちょい水性っぽいのを探すことにしました。
見つけました。しかもスーパーで。
「PVA洗濯のり」
洗濯のりってなんか服に使うものだし有害じゃなさそう。そしてPVAとか書いてあるタイプは透明。黄色っぽさとかない。
これをアクリルパイプにいれてやってみました。
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でました。ドット。いい感じです。
あとは泡のサイズがどのぐらい精度たかく一定になるかを試します。それはさっきのI/OボードとSSRを使った感じのでテストします。電磁弁を0.05秒だけ開くとか、そういう感じのプログラムを書いてテスト。
圧力と電磁弁の開け具合である程度できそうですが、もうちょい調整したい感じ。
またホームセンターにいって見ていると、「スピードコントローラー」なるものが売ってることに気が付きました。
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流量調節に使うものです。電気で言うならば可変抵抗でしょうね。
これを間にいれると流量を調整できるので、圧力とこれの関係で調整がもうちょい細かくできるようになりました。理想の泡サイズで、ドットを任意のタイミングで出せるようになりました。
シミュレータ作る
ここまででも何万円か使ってると思いますが、これを何十本も作るとなると結構お金がかかりそうです。本当にうまくいくのかあたりが不安になりました。というのも、アクリルパイプで泡を出すと、上にある泡は下に登場した泡の体積分上にシフトしちゃうんです。
「こりゃダメだ」とそのとき落ち込みそうになりましたが、一瞬あとには「補正したら良いんじゃ」と思いつきます。
それを確かめるにはシミュレータが必要です。
(さすがに当時のデータが残ってない)
Macでシミュレータのプログラムを書いて、文字に相当するビットマップフォントみたいなのを作り、それを泡のドットで表現します。その文字が出るように誤差を考慮してタイミングを調整します。泡の上昇速度は一定なのはわかっていたので、シミュレーションはちょろいです。
でやってみたところ、誤差を調整できれば完璧に揃って出せそうです。
誰も信じてくれない
自分はこのプロセスを通ってますので「泡で文字出せる」と確信してるわけですが、周りの学生などは信じてくれなかったですね。
シミュレーションでは満足できず、実験をしました。一本の試作を使います。8列分のデータを順番に出してカメラで撮影しました。(当時はiPhoneとかないので、DVテープのカメラかなんか)
それをMacに取り込んで、QuickTimeとかPhotoshopとか使って編集しました。つなぎ合わせて動画にしてみたところ。バッチリ0~9の数字が出ました。シミュレータとやってることは同じですが、一応映像なんでリアリティありました。
いよいよ制作
当時和歌山にいたので、ハンズとかないし、今みたいにMonotaroとかMISUMIとかもないので、ホームセンターです。ホームセンターに行って、使えそうな部材を物色し、アルミのアングル材を使って作れそうだと考え、イラレで設計し部材を買って組み立てていきました。アクリルパイプが高価ですが、それも買い、エアー関係のパーツ(これも高い)を大量買い。日東工器のやつがホームセンターにあったので、それをちょっと値引きしてもらって買いましたね。
工作も大変ですが、電気の配線も大変。24本もの数で作りました。RS-232Cのリレーボードの制御も数がたりないので、3口使ったんでしょうね。(記憶が定かじゃない)エアの配線も大変だったなー。
で、プログラムを書いて作っていきました。洗濯のりも大人買い。そしてチューニングチューニング。
で、出たんです。
この動画は大学院のときに改めて撮影したものですが、モノ自体は大学のときに作ったものと同じです。当時は液体に色をつけてました。泡だけ白っぽくなるというので視認性を上げたかったんでしょうね。色は万年筆用の水性インク。
ホームセンターに売ってるもので作った手作りですが、それなりにきれいに完成したのが良かったですね。メカは隠さず見せるデザインにしています。アルミのアングル材というのが「ロボコン感」を漂わせますが、なかなかいい材料無いんです。今ならアルミフレームが手軽かな。板金もかんたんに発注できるしなんとでもなりそう。
納品することに
大学で作った作品ですが、なんどか展示の機会をいただき東京にきてすぐに展示をさせてもらいました。「メビウスの卵展」という展示です。大崎のO美術館というところだったと思います。2001年ですかね。
でその展示が富山でもってことになり、富山のワンダーラボで「メビウスの卵展」の一部として展示したところ、富山出身ということもあいまってか、お買い上げいただくことになり、常設展示バージョンを作ることになりました。
で作ったのが、これ。大学院の1年生のときかな。作りました。
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上記の動画はメンテ時に撮影したものですので、パソコンがすでにMac miniかなんかに入れ替えたOSXバージョンですが、初期はMacOS9ぐらいで納品してます。
Macでタッチパネルは良いのがない時代で、費用的なこともあってトラックボールにしました。PowerBookでもトラックボールの時代もあったので、そういう価値観でそうしました。
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で、2002年ぐらいから2013年ぐらいまで動き続けました。年に1回ぐらい不具合がでたりしてたみたいですが、液体交換(常設展示からグリセリンに変更)に定期で行って問題も解決して行く感じですね。
納品時は、23歳とかですね。それが12年ぐらい経過したので、35歳とかのころかな。流石に壊れてもおかしくないので、リニューアルしましょうよって話をして、デザインを変更し名前もわかりやすくAWAMOJIに変更。
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初期はMacのプログラムで電磁弁の開閉もコマンド送ってましたが、最悪のタイミングで通信が切れると弁が開きっぱなしになるので、それをやめることに。マイコンベースで電磁弁の制御をするべきだと考えて、AVRマイコンを使ってgccでコンパイルして動く構成でやってました。Arduinoがすでに世の中にありましたが、なんか気に食わなくてAVRを実装した基板を設計しArduinoとして使わない書き方で。
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iPadでインターフェースをつけたので、念願のタッチパネル化。しかも、iPadとAVRはWiFiで通信です。常設展示でWiFi使うあたり勇気がある。
AVR側がAdHocのWiFi APとなって、iPadがそこにぶら下がります。iPadでビットマップ画像を作るところまでやって、それをAVRに送ると表示時の補正も考慮して電磁弁をコントロール。ビットマップ渡しなんで、手書きも出せるという設計です。
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まとめ
おもいがけず、長文書いてしまいました。制作プロセス公開です。
自分にとって、最初の「スクリーンから飛び出した作品」で、最初の「常設展示作品」。それがつい先日まで動いてたってのはまぁ、考え深いものがあります。なくなるのは寂しいのでまたどっかに納品したいです。