宇宙戦艦ヤマト ヤマトよりアンドロメダが好き

 知り合いがSNSで「ヤマトよりアンドロメダが好き」的な呟きをみて記事を書いてみる気に。

 実のところ「さらば宇宙戦艦ヤマト」で颯爽と登場もヤマトの引き立て役、やられキャラとして見られる不幸な艦だが、それがまた良い。
 敵が強力なほど主役が映えるものだけど、やられキャラにここまでの手間暇掛けて構築した制作陣の気合が見えた気がした。

・アンドロメダの立場

 アンドロメダが上空を通過した際に佐渡先生が「こんなもの」的に吐き捨てた一言でこの艦の立場を決めてしまった様に思える。

 「これはいらないものなのだ」

ってイメージを。

 ただ冷静に見ると佐渡先生の言い分ってかなり一方的な見方である。
 彼は曲がりなりにもヤマトに乗艦して戦って血路を切り開いて帰ってきた。
 だが生き残った大部分の市民はそうではなく、ヤマトが旅立って情報途絶した後、地下都市に籠って明日の保障のない毎日を息をひそめて暮らしていくしかなかった訳で、ヤマト帰還から地表に戻って何を思ったか?
 力さえあればこんな目に合わなかったと思っても不思議ではない。
 復興と並行して軍備を進められたことに対してさしたる反発が無く進んでいた背景はこんなところだろう。

 「より強く」

 たった一年かそこらで都市の再生と強力な艦隊を整備できた地球連邦の指導力は異常だと思うが。
 リメイク版はこのあたりの描き方はもう少し現実的にしているようだけど。
 そんな状況で産まれたアンドロメダは、戦時中で就役即出撃とは言えそれなりに時間をかけて建造されたヤマトよりも戦時急造艦の色合いの濃い艦だと思うのだ。
 
 アンドロメダは弱いのか?
 と言われるとスペック的にはヤマトを凌ぐ戦闘力を持っている。
 ヤマトを建造時の設計やノウハウを流用しているだろうが、企画そのものは何時から立てていたのか?となると、ヤマト帰還後ではなくヤマトが旅立った直後位には建造に向けた具体的な動きが連邦軍内であったのではないかと考えられる。
 
 何故か?

 ヤマトが帰ってくる保証が全く無いからと言うのが大きな理由になる。
 太陽系すら出たことのないのに、銀河系を飛び出して大マゼラン星雲まで未知の宇宙を往復。
 しかもガミラスとの戦闘を繰り返しながら、1年と区切られた期間内で。
 普通に考えたら、波動エンジンの設計図を示されたとは言えどこの誰かも判らないスターシャの呼びかけに全てを委ねるとは思えない。
 リメイクだとヤマトは地球脱出計画で建造されていたのを流用した設定になっているが、オリジナルではそこまでの描写はなかったと記憶している。
 だがヤマトがしくじった時のBプランはあったのではないか?
 艦の制御はヤマト以上に自動化が進んでいるのは、少人数での運用を考えてのことだがヤマトに連邦軍の最後の人材を出してしまった言わば残りカスの乗組員でも運航しなきゃならない苦肉の策と言う気がする。
 艦のデザインもヤマトはベースになった大和そっくりになるのは解るが、アンドロメダや主力戦艦のデザインはヤマト以前のキリシマ等と比べても同じ系統に見えにくい。
 艦首に波動砲口を設けて艦中央に波動砲を設置しているというのはあるが、どちらかと言えば曲線を主体としたヤマト以前の大型艦と違って、直線基調のデザインになっている。
 現実の艦艇でもこういったデザインが発生する場合がある。
 戦時急造艦である。
 すでに就役している艦の設計図を元に装備や機構を簡略化や省略化を図り、デザインも効率の低下はわかった上で製造期間短縮のために直線主体で建造して数を揃えるのを優先させる。
 ヤマト後の新艦隊のデザインに統一性があるのはやはり数を揃える事を優先したのではなかろうか。
 
 アンドロメダは何故弱かったか?
 
 艦と言うハードウェアの戦闘力はヤマト以上ではあった。
 ただ戦術と言った点で稚拙だったと言える。
 ヤマトが持ち帰った対ガミラス戦闘の分析や戦訓と言った作業は行われていたと思う。
 ただ、ここで気をつけないと行けないのは、ヤマトの対ガミラス戦闘は1対多でどちらかと言えばヤマトがアドバンテージを握れる状況でのものが多いということ。
 ヤマトが真正面から飛び込んだのは、七色星団のドメルとの戦闘とガミラス本星の戦闘で、どちらも波動砲でケリがついたものではない。
 波動砲は強力な絶対的な切り札ではあるが、沖田艦長は極力使わずに戦闘を進めている。
 伝家の宝刀ってのは抜かないからこそ恐れられる。
 ヤマトの戦闘分析が甘くてアンドロメダを旗艦に据えた艦隊戦に反映が出来なかったのだろう。
 沖田艦長が生還してれば別だが仮死状態で話しが出来ない訳で。
 イスカンダルへの大航海で大きく成長したとは言え、士官候補生から戦闘班長に据えられた古代に沖田艦長の深謀遠慮の策をどこまで理解してたか解らない。
 戦闘となると先頭切って出ていくような奴だし。
 むしろ常時艦橋にいた島や真田の方が理解してたかもしれない。
 沖田艦長しても初体験な宇宙での戦闘だった訳だし、現場指揮官がうまくやれてればまた話しは変わったかもしれないが、ここに人材不足が影を落とす。
 ガミラスとの防衛戦で現場指揮を取る高級指揮官がほぼ全滅に近い被害を被ったのだろう。
 ヤマトの首脳陣に幹部候補生をあてがわなきゃならない状況からもそれが解る。
 アンドロメダは旗艦だからそれなりの人員を配したが、他の艦は上からの指揮をこなすのが精一杯だったのでは?
 
 人が居ないならヤマトの乗組員を中心に戦闘組織を作ればとなるが、沖田艦長がいればともかく生き残った古代や島が組織上は使えないのだから仕方がない。
 冷や飯食いというのは言い過ぎかもしれないが、普通に考えると戦時任官で本来なら佐官クラスがつくべき役職に付いてた訳で平時になったら任官した年数に応じた階級にされるのは仕方がない。
 しかも士官になる前の立場だから、歳を考えたら大尉は無理で中尉がいいところでパトロール艇の艇長ってのは応分のポジションだろう。
 とても艦隊中枢に据えられるものではない。平時の軍隊ってのはどこでもこんなもん。
 仮に艦隊中枢に古代が居ても結果はあまり変わらなかったと思われる。
 デスラーとの戦闘を経験してない古代は彗星帝国の攻略点を教えて貰ってないしね。
 かと言ってヤマトを艦隊に組み込むか?
 ヤマトに艦隊指揮に同調する設備がついていない、ヤマトを入れた艦隊行動の訓練をしていないと否定できる項目はいくつか出てくる。

 アンドロメダを旗艦とした艦隊にとっての不幸は、新型艦故に必要な完熟期間や艦隊としての戦術の熟成がされずに即実戦であった事に尽きるだろう。

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