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機動戦士ガンダム 『ザクとは違うのだよ』に対する私論

 YouTubeで「哀・戦士」の動画がお勧めで出てきたので久々に観た。
 映画は丁度地球巡行の総集編だったので、ランバ・ラルや黒い三連星のカットがあったのを見てあのセリフを思い出したので記事にしようと思った次第。

 ランバ・ラル隊にガルマの仇討ちを命じたドズル・ザビが与えたのが「グフ」
 試作機なのか先行量産機なのかは判らないが、最新鋭機ではある。
 ドズルとしても連邦のMSはシャアでも落とせなかった事実を重く見ての支給だったと推測される。
 ザク自体が宇宙での運用を前提としている以上、地上戦では能力を発揮しきれないのと、ザクの一番の問題は「対MS戦闘が考慮されていない」がある。
 ザクが戦場に登場した時点で連邦はMSを持っていなかったのだからある意味当然である。
 現実の話として、F-22が新世代のステルス戦闘機として出てきたがそれまでにまともなステルス戦闘機が出ていなかったので、対ステルス戦闘能力を欠いている。
 F-35は既に敵国も性能はともかくとしてステルス機を持っているところに出てきたのだから、対ステルス戦闘も視野に入っている。
 勿論ステルス機が格闘戦に陥ったらもう終わりだけれど。
 だからザクの後継機開発には「対MS戦闘能力」が加わっていなければならない。

 問題はグフってどうやって使えば強かったのか?というところ。

 重力戦線と称された地上戦を行うのに必要な能力として、ザクと比べてまずパワーアップされている。
 プロペラント機構の性能が移動速度に反映される宇宙と比べて、自分の足で移動することを想定したらパワーが必要なのは判る。
 シャアが3倍速いというのが足でデブリを蹴って加速してるからって説明があったけれど、ザクのパワーを加味できたら移動は速くなったのだろう。
 そして近接戦闘の為に装甲も厚くなっている。
 当然重くなるから更にパワーがいる。
 ここまで地上戦特化って目的を考えれば問題はない。
 ガンダムのビームライフルやビームサーベルの前には装甲の厚みは効力は疑問がついてしまったが。

 ただ武装についてはかなり浪漫を求めてないか?ってなる。
 固定武装が左腕のフィンガーバルカン。
 電磁ムチとしても使えるヒート・ロッドやヒート・サーベルもランバ・ラルの機体では使われている。

 ここで問題。
 装備の武装が全部近接戦闘でしか効果がない。 
 近接戦闘に持ち込むには、敵のすぐ近くまで行かなければならないのだが、その時点で敵を撃破までは行かなくても牽制できる武器がない。
 装甲の厚みを頼りにジリジリと近づいてヒート・ロッドを振るうか、ドダイに乗って一気に敵MS部隊のど真ん中に突っ込んでフィンガーバルカンを撃ちまくる以外の戦法が無い。
 フィンガーバルカンのスペックがザクマシンガン以下の口径・装弾数で、どちらかと言えばガンダムが装備した60mmバルカン砲に近いので、歩兵や軽車両なら撃破できるだろうが、対MS戦闘では牽制以外の使い道は無い。
 ヒート・ロッドも懐の深い武器ではあるけれど、鞭って威力があるのは先端部だけで中には入り込まれると威力は激減する。
 電撃があるけれど敵のMSに耐電能力があったら‥宇宙で使う以上無い方がおかしい‥威力はやはり激減する。

 ザクならば120mmマシンガンやバズーカって射程のある武装があるが、作品を見てるとマニピュレーターの右腕一本で扱えるものではないので、左腕がバルカン砲になってるグフでは使えない。
 ガンダムは右腕1本でビームライフルを扱っているが、あれは反動が少ないビーム兵器だからというのが大きいだろう。
 片手打ちを想定した設計もなされていると思うけれど。

 むしろホバー機構を使っての高速移動が出来て射程のある武装を装備できるドムの方が、対ホワイトベース戦では戦術の幅が広がったのではないか?
 老獪なランバ・ラルが指揮する部隊の戦術があったからあそこまでやれたが、他の部隊でグフを受領しても度重なるシャアとの戦闘で戦闘スキルを上げたホワイトベース相手にどこまで成果が上がったかは疑問。

 ドズルはランバ・ラルにグフではなくドムを渡すべきだったし、それが出来ないなら数で押せる様にザクを複数機渡していたら、ガルマの仇討ちは出来たかもしれない。
 ここでホワイトベースを撃沈していれば、重力戦線を失わずに済んだのだが、ドズルからすると重力戦線は「キシリアの戦争」であってあれこれ口出し出来なかったのかもしれない。
 ランバ・ラル隊残党へのマ・クベの冷淡な支援を見るとそう思えてならないのだ。
 
 軍の総指揮をドズルに一本化しなかったギレンやデギンの戦略ミスが生存を賭けた戦争を失った一因だろう。
 ドズルとキシリア双方に可愛がられていたガルマが生き残っていれば、まだ巻き返しは出来ただろうが、ガルマの死でザビ家はそのチャンスをなくしてしまった。


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