水槽内の器具の当たり前『黒』
私のように昔アクアリウムにどっぷり浸かっていた人は、水槽の中にある器具と言えば、色は「黒」が当たり前、、、と思うのではないでしょうか。
フィルター、ヒーターなど、今でもほとんどの商品の色は「黒」です。
今回のお話は、この5年くらいの間で新しく生まれた『白いボディのフィルター』の誕生秘話です。
ジェックスのフィルターで白色のものは、サイレントフロー、ラクフィル。ラクフィルは昨年の新商品、サイレントフローは2015年に誕生しました。
サイレントフローはその名の通り、「静かさ」を追求した設計。本体カバーと中のモーター・フィルター部を二重構造にして、振動音や共鳴音を徹底的に抑えるとともに、水流の出方を工夫して吐出量を確保しながらも緩やかで静かな水流を実現したフィルターです。
静音化のための構造についても設計陣は相当な力を入れて実現。あとは性能以外の商品自体の新しい魅力を加えていく必要がありました。
なにげないユーザーの言葉から大きなヒントが
それは忘れもしない、とある機会をいただきユーザー宅に開発陣とお邪魔したときの何気ない会話。その時は水づくりやお掃除に悩みについて意見交換をしていました。
お客様は女性の方で、ジェックスの2台のデスクボーイでザリガニとメダカを飼っていました。デスクボーイにはコーナーパワーフィルターがセットされているのですが、それを見て
『なんでメーカーのフィルターってみんな黒いんですか?』
と聞かれました。え?と思ったのですが、ごくごく模範解答の「やっぱり水槽の中で目立たないことと、汚れも目立ちますよね、、、」と答えました。
すると、その女性ユーザーさんは
『汚れたら掃除すればいいし、デザインとして黒は合わないですよねぇ』
と。・・・・!!え???掃除すればいい!!??目立つとかじゃなくて、デザインとして合う、合わない!!???
そんな視点があったのか。昔の男性だけのアクアリウムの世界ではないのか。インテリア、と言いながら外側だけに気にしていた、そうではないニーズもあるのか。
結構驚きでした。当たり前のことが、そうではない(という人もいた)ということに気がつく瞬間はいつも驚くのですが、正直なところ、それもすべてが新しいニーズに結びつくわけではありません。
しかし、このときは『これは新しい市場創造に結びつくかもしれない』と感じたのを覚えています。
調査範囲の拡大と実績検証
『これは可能性がある』となると、多くの人に意見を聞く調査を行います。本体色が白いフィルターは、インテリアを意識する人、特に女性からの支持が高いことがわかりました。しかし、女性飼育者は全体の2-3割。市場拡大に結びつくのか、という懸念もありました。
そのときに思い出したのは、ペット用品の購入意思決定者は家庭内の女性の方が多い、という一般に公表されているデータでした。女性からのニーズが高ければ、男性が商品を選ぶ際にも影響が出るのではないか、と。
現在の結果。
サイレントフローにはスリム、パワー、デュアル、と3サイズ☓白、黒で6機種あるのですが、販売数の半数以上が白、という結果。サイズが大きくなるほど、黒の比率が上がっていくのは水槽サイズと男性飼育者の比率の影響のようです。
デザインを極力シンプルに
『フィルターが白くても、きれいに掃除すればいいじゃないですか』という女性ユーザーの言葉をいただきながらも、設計陣は掃除・お手入れのしやすさを追求しました。
たとえば、フィルター表面は拭き掃除しやすく、汚れが落ちやすいように加工。フィルター交換はもちろん簡単に引き出せます。フレームレス水槽であれば、フィルターを水槽にセットしたままでインナーケースを外してモーターのお掃除もできます。
デザインがシンプルになる、ということはさまざまな水槽やインテリアにもマッチする、ということになります。あえてこのようなシンプルなデザインにしてくれた設計・デザインチームには感謝感謝。
新しいフィルターとして、おうちの水槽用に選んでくれているユーザーのみなさまにも心から感謝いたします!