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経営に興味を持った日の話
私は16歳から窓拭きの仕事を始めて20歳で独立した。
最初から自分で会社をやるつもりはなかったのだが、転機は17歳のときだったと思う。
バイトしていた会社は、当時社長も含めて5〜6人。
渋谷区にある小さな会社だったのだが、社長が会社に来ることは滅多になかった。
毎日ゴルフ三昧という噂は聞いてたのだが、実際に何をやってたのかは知らない。
しかし現場では「社長は毎日ラクしてる」って話になる。
俺たちは現場で汗水流して働いてるのに、あいつはゴルフ三昧かよ。おまけにフェラーリ乗ってるらしいぞ。
なんてことを毎日言っていた。
「あいつはケチだ」とか、「えげつないくらいピンハネしてる」なんて話をしてたのだが、ある日それを確かめることになったのだ。
バイトしてた会社は現場終わりに事務所で酒盛りをするのが通例だった。
そんなある日、誰かが「社長の引き出しを開けよう」ってことを言い出した。
事務所には、重要書類が入った引き出しがあり、そこには鍵がかかっていたのだ。
しかし事務所の2軒隣は鍵屋である。
酔った勢いもあって、そこの鍵屋に依頼して、引き出しを開けることになった。
開けてみると、引き出しの中には現場の仕様書や発注書、借りてる駐車場や事務所の契約書などがあった。
つまり、会社の売上と経費がザックリ分かる状況だったのである。
あれこれ読み漁ってると、現場によっては、確かにえげつないピンハネがあった。
しかしほとんどの現場ではそんなこともないし、むしろ全然儲かってない現場もあったのだ。
だから皆の話も段々と変わってくる。
「この現場、普段8人入ってるけど、これ7人でいいよな。この金額じゃ8人入る意味ないだろ」
みたいな会話が繰り広げられるようになった。
すると社長への評価も、少しだけ変わってくる。
もしかして、あいつ意外と健全に経営してんじゃね?
思いもよらぬ展開だが、そんな考えも芽生えだした。
冷静に考えれば、そのとき飲んでたビールも、前借りした金で買ったビールだ。
自分たちが思ってたほど、社長はケチでなかったのかもしれない。
(ほぼ毎日誰かしら前借りをお願いする会社だった)
とにかく、その日を境に仕事への意識が変わったのは確かだ。
やってる仕事の売上と経費が頭に入ったので、当然得られる利益額も分かる。
するとそれまでやってた仕事も全然違う角度から見えるようになった。
経営に興味を持った日の話だ。