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結局、北米版LB6でオベロンたちは何回「運命」をねじ込んだのか


はじめに

 読んでくださっているのは99.9%フォロワーさんだとは思うが、一応軽く自己紹介をしておこう。私は翻訳を楽しむ目的で、北米版(英語版)fgoを日本版と並行してプレイしている者だ。本編・イベントのシナリオは、サービス開始から最新のLB6戴冠式まで全てクリア・読了している(プレイログまとめはこちら)。
 そんな自分が今回、北米版でLB6を攻略しながら、ずっと意識していた疑問があった。

 今回、運命ねじ込みやたら多くないか? 特にオベロン。

 そんな問いを抱えて数十日、ようやくLB6本編もクリアし諸々落ち着いてきたので、本国で2023年水着イベが始まってしまう前に今回の記事で向き合おうと思い立った次第だ。

「運命ねじ込み」の定義

 「運命ねじ込み」は完全に私の独自用語なので、ここで定義をはっきりさせようと思う。

 ① 日本語fgoの原文時点では「運命」「宿命」の語句が使われていない箇所で、
 ② 北米版fgoで新しくfate・fated等、「運命」やそれに関する単語が使われている翻訳

 以上の①②の条件を満たすものを「運命ねじ込み」と呼ぶことにする。

 本記事では特に、LB6本編シナリオ内の運命ねじ込みに対象を限定して回数をカウントする(鯖のプロフィールや戦闘・マイルーム等でのボイスの翻訳は対象外。LB6関連サーヴァントを全員召喚できているわけではないので、比較としてフェアにするため)。

 ちなみにこの運命ねじ込み、北米版fgoでは前々から観測されている(詳しくはあとで触れる)。だってFate/Grand Orderの翻訳なんだから、隙あらばうまいことfateと絡めて言いたくなるのはもう仕方ないと思う。タイトル回収が大好きなオタクはどこにでもいるのだ。だが、それを踏まえても今回は多い、かなり多い。

というわけで、まずは発言者別にランキング形式でまとめてみた。


第1位:オベロン(8回)

第1節進行度2、藤丸立香との感動の出逢いについて

第1節進行度6、自分が人理の英霊として、唯一カルデアを手助けする鯖であること

第2節進行度2、ブリテンはもともと滅びることになっていること

第2節進行度3、(『夏の夜の夢』の作中で惚れ薬を飲んだ者たちが本来とは違う相手を)永遠の恋人(だと信じてしまうこと)

第3節進行度5、世界の危機(がかかっているのでお金貸して!)

第9節進行度4、(汎人類史という)ひとつの世界の行く末

第11節進行度3、予言の子がブリテンを救うこと

第24節進行度1、(キャストリアに)君の雑な性格ってずっとそのままなの?

参考記録

宝具ボイス3「誰だって、今より少しだけ幸福になりたいんだろ?」の「幸福」がfortune
※微妙に判断に迷うのと、そもそも宝具ボイスは今回の集計対象外なのでカウントせず

第2位:モルガン/トネリコ(3回)

断章/5、「ここで会ったのも何かの縁」
※北米版fgo全体としてみてもfate頻出シチュだと思う

断章/6、予言の子が次にブリテンを救う妖精であること

第24節進行度4、他の異聞の王のたどった末路(が自分にも訪れた)

第3位:該当者多数(2回)

ハベトロット

断章/1、マシュに不埒な妖精が近づけないこと

第7節 断章/4進行度2、ボガードがブラックバレルを使うと決めたことの致命性

レッドラ・ビット

第3節進行度7、「これも何かの縁」

第26節進行度4、カルデア一行がブリテンを(真の意味で)救う(勇士である)こと

マシュ

第5節 断章/3進行度3、予言の子がブリテンを救うこと

第29節進行度5、ブリテンを(その運命から)救う

ホームズ

後編 序、カルデアが予言の子に協力すること

第29節進行度1、創世期のケルヌンノスの身に起きた顛末

ムリアン

第16節進行度4、トリスタンとキャストリアの因縁(の対決)

第26節進行度6、妖精國の妖精は滅びる(しかない)こと

マーリン

第17節進行度2、現状のブリテンで王となる者は犠牲の仔羊になってしまうことになること

第27節進行度7、村正の行為でキャストリアが助かった因果

メリュジーヌ(メリュ子)

第23節進行度5、自分が本来の姿に戻ってしまうこと

幕間_3、妖精たちは悪妖精やモースになるのが避けられないこと

その他の用例(1回)

ダヴィンチ:第3節進行度2、キャストリアがブリテンの救世主であること

ボガード:第5節 断章/3進行度3、モルガンがノリッジを見捨てること(運命に委ねる、滅びる運命のままにする)

通り一番の靴屋(ノリッジのモブ):第9節進行度1、モルガンがノリッジを見捨てること(同上)

キャストリア:第12節進行度5、楽園の妖精として鐘を鳴らす際の詠唱

バーゲスト(バゲ子):第13節進行度8、自分がモルガンに罰されること

オーロラ:第14節進行度2、弱者を見捨てる(死んでしまうのをそのまま放っておく・運命に委ねる)こと

パーシヴァル:第24節進行度3、バーゲストが自分たちにブリテンの未来を託したこと

妖精たち(ティンタジェルのモブ):第28節進行度4、キャストリアがブリテンを救うこと

千子村正:第28節進行度7、村正が切る「定め」

参考記録

第5節 断章/3進行度2、語源的にはまあ運命(カウントせず)


集計結果

オベロン:8回
オベロン以外:26回
合計:34回

 やっぱりこれまでのシナリオに比べて明らかに多い。残念ながら、過去章での正確な回数や頻度を遡って調べるのは現実的ではないが、こうして今回の数字が提示できれば目安にはなる。同一章内に30回オーバーというのは、どう考えても異常だ。大まかに言って、運命ねじ込みが単独シナリオ中に10回……いや、5回……違うな、3回以上あった例すら、6周年を迎えた北米版fgoの歴史に存在するか微妙なラインだと思う(そもそも今まで、同じ章の中での回数を数えようと思ったことが無い)。そして、そんな異次元な多さの中でもオベロンが突出して多い。彼単独でLB6までの北米版fgoの歴史全てと拮抗しかねない。
 そんな様相の運命ねじ込みだが、言及された内容として特に多かったのは予言の子(やカルデア)が妖精國を救うこと(6回)、続いて妖精國・妖精・世界など大規模なものの滅び・行く末(5回)だった。全体としてまとめると、回避のできない(難しい)・本来そうなるべき大いなる流れのようなものにしばしば向けられた形だろうか。
 発言者別で首位のオベロンも妖精國や世界の滅び文脈で3回ねじ込んでおり、予言が重要な役割を持つ今回の舞台設定と、序盤に登場して世界について解説してくれる役回りから運命を語る機会が多くなったのかもしれない(2位のモルガン/トネリコも、マシュに妖精國のことを説明してくれたポジションという点では共通点がある)。
 それに加えて、オベロンは彼独自の用法も硬軟ともに揃えており、単独で運命ねじ込み全体の4分の1近くを占める王者の貫禄が感じられる。また、彼の運命ねじ込みは8回中6回が前編中に発生しており、このスタートダッシュの鮮やかさから「北米版のオベロンなんかヤバない?」という印象がより強くなったのだろう。

考察:指す対象や状況によってどの「運命」を使うか傾向が分かれる?

ここからは日本語原文時点で運命だったもの(notねじ込み運命)も交えて、どんな運命がどんな単語で語られてきたのかを見てみようと思う。

キャストリアの(ブリテンを救う)運命:destiny

 運命を示す英単語として代表的なfateとdestinyのうち、ネガティブ・悲劇的なものがfateとよく説明されるが、さらに言うとfateは決まってしまった・自分の意志では変えようのないものとしての運命を示すのに対して、destinyは目指すべきゴール、到達点としての(意志の介在する余地のある)運命を指す性質が強い。もちろん同義語としてカジュアルに・さほど区別されず互換される例もあるが、「キャストリアのブリテンを救う運命」がかなりdestinyに偏って語られているのは、この理解の延長で考えてよいと思う。

モルガン/トネリコの運命:fate

 ちなみに、北米版運営によるfgo制作秘話掘り下げ企画・Chaldea Breakroomの第18弾には奈須きのこ×武内崇スペシャルインタビューが掲載されているが、

宿命に逆らいながら、最後まで運命に愛されなかった天才と、宿命にあらがいながら、最後の最後で運命を見つけた凡人
One was a genius who defied her fate and was destined to never be loved till the end, while the other was an ordinary girl who resisted her fate yet found her destiny at the very end

 上に引用した部分では、モルガンが逆らい、キャストリアがあらがった「宿命」がfate、モルガンが最後まで愛されず、キャストリアが最後の最後に見つけた「運命」がdestinyと訳されている。

オベロンが「自分の関与する滅び」を呼称しての運命:fate→気のせいかも

 これはプレイ中はすごくそんな気がしていたのだが、きちんと見てみるとfate系もdestiny系も並行して使われている文脈だった。特に「ヴォーティガーンはブリテン島の運命」という重要情報を語る際も運命をdestinyで言っている以上、どうも考えすぎだったようだ(おそらく、妖精國や世界の終わりが高確率でfateと呼ばれていたのと印象が混ざったのだろう)。
 一応、「ヴォーティガーン」とそこから生まれた「彼自身」を区別して語っていると解釈すればまだ説として死んでいない可能性も残るものの、それを差し引いても、オベロンが(彼自身の目的である)妖精國の滅びについて語っている場面でもdestinedは確認できるのがネックだ。

ペペさんの語る運命:確定事項はだいたいfate

 先ほど触れた、fateの運命とdestinyの運命の使い分けを体現しているもうひとりの役者。
 それがスカンジナビア・ペペロンチーノだ。

 (最初のこれはさておき)大まかに言えば、ぺペさんがfateと呼ぶ運命は上で触れたような自分の意志で変えられないさだめ、特に漏尽通案件が多かったように思う。

 ちなみにLB4での令呪「運命に、怒って!」の運命もfateで訳されていた。

 一方、さらに遡るとLB1での「カドックは運命に壁ドンされた、自分は昔から裏切られてきた」発言では一貫してdestinyを使っている。これは主人公補正、星の輝きのような運命ということで、fateにはなりえなかったのだろう。

SN案件の運命:fate(知らんけど)

村正とキャスニキの関係に関して登場。まあそういうことだと思うがサンプルが足りない……

余談:常に日本語→英語で「運命」が増えるわけではない

トリ子:「運命の相手」を夢の相手the partner of your dreamsと語る

恋は夢見る心

村正:運命ねじ込みチャンス回避三連

だいぶフィーリングだが、村正に関しては運命をねじ込むよりも、東洋的?仏教的?巡り合わせ文脈で語らせようとする雰囲気を感じた

補遺:LB6より前にも運命ねじ込みは定期的に観測されていた

CCCイベ終幕

第2部PV

2020年クリスマス

2021年VD

斎藤一チョコお返し

結論

 北米版fgoの運命ねじ込みはLB6で急に始まった現象ではない。むしろ、今までこつこつ地道にねじ込んできたものが、予言や使命、定められたものについて大きく頁を割いた物語である、LB6という比類の無い土壌で満開を迎えたというのが実態に近いだろう。
 中でもオベロンは、運命ねじ込みとの親和性が高い存在だった。これは序盤から登場して舞台について説明してくれる彼の役柄や、彼自身が達成すべく行動してきた目的の性質によるものが大きい。そこから、幅広い登場人物が満遍なく運命をねじ込むLB6の中にあって、彼は突出して運命ねじ込みを発生させるような言動をすることになったのだ。

 随分長い記事になってしまったがまとめると、LB6の運命ねじ込みはヤバい、特にオベロン……という当初の感触を、より解像度の伴った形で再確認できたと思う(一部の印象に関しては気のせいだったのも判明させられてよかった)。やはり、体感だけでないというのは大事だ。
 最後になるが、ここまで読んでくれた、そして(おそらく)Twitter上でLB6の旅路を見守って下さったマスターたちに感謝の意を表して本記事の締めとしたい。

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