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コングのグルメ〜第4話〜

ついている。


前回の大阪から1ヶ月もしない間に、再度大阪に宿泊する機会がくるなんて。


小さく拳を握るKONG。



「うむ。リベンジだ。」



この場合は『リトライ』の方が正しいだろうが、『リベンジ』の方が気合が入っている感じがする。



前回の大阪は"コンビニ"で晩酌の食べ物を調達する状況になったKONG。



アレはアレで楽しかったが、まるで上級者のスキーコースを初心者が滑るような感覚だった。



「今日こそはスーパーマーケットで夕飯を手に入れる。」



幸い、今回チェックインした時間は前回よりも早い。


とは言っても、23時頃までオープンしているスーパーは限られている。


その為、
KONGはホテル近くの徒歩10分前後のスーパーをいくつか絞っていた。


チェックインを終わらせるやいなや、翌日の準備と遠征時に毎回持ってきているKONGセットを机に広げる。

スキットル。(ウイスキー)
タンブラー。
蒲焼さん太郎。
カルパス。



うむ。


抜かりない。



さらに、エレベーターに乗る際"KONGセンサー"を張り巡らせていたので、1階に『製氷機』がある事も確認出来ている。



コチラの準備は万全だ。



あとは食べ物のみ。



なんと、
今回はVoの湯口翔平も一緒にスーパーに向かうと言う流れになっている。


ロビーに集合して、二人の宝探しがスタートした。


ホテルから徒歩14分のスーパーを目指した男2人。



途中で

「暑い。」


「お腹空きましたね。」



等の他愛もない会話が繰り広げられる。



目的地のスーパーに近づくにつれて



「この時間で惣菜ありますかね‥‥。」



と、少しの不安も押し寄せてくる。


『ドキドキ』

『ワクワク』

『少しの不安』


まるで忘れかけていた入学式のような気持ちだ。


‥‥‥


数分後。


目的地のスーパーに到着し、大きな自動ドアからは店内の様子と涼しさが曇ったガラス越しに伝わってくる。


『ここまで来たんだ。』



湯口の心の声が聞こえてくる。


見知らぬ街の夜。


行ったことの無いスーパーを目指して歩いた男2人。


お腹も減っているだろう。

ライブ後で疲れているだろう。


何度もコンビニや飲食店を横目に通り過ぎてきた。



だが、


俺達が目指したのはスーパーマーケット。


不思議と脳内で"ハナミズキ"の一節が再生される。


『僕の我慢が いつか実を結び‥‥。』



うむ。




空腹は最高のスパイス。



頑張って歩いてきた甲斐がある。



『だが、喜ぶのは目的を達成してからだ。』



もはや言葉は必要ない。



男2人は無言で入店し、



買い物カゴを握り締め、



勢いよく店内を一周し、



そのままの勢いで買い物カゴを元の位置に戻した。




滞在時間60秒。



言葉以外にカゴさえ必要なかった。



そう。



向かった惣菜コーナーは台風が過ぎ去ったかのように何も無かったのだ。

あったのは、

選ばれし者(購入者のみ)が持ち帰る事が許されている、小さな袋に入った『ガリ(生姜)』『醤油』のみ。




予想はしていたが、いざ目の当たりにすると思考が停止する。



チラリと見た湯口は、



楽しみにしていたバス遠足で、昼食時にシートを広げた時、『お弁当』を忘れてしまった事に気付いた児童と同じ表情だった。





旅先のチョットしたアクシデント。


 

「こーゆーのでいいんだよ。。」




KONGが湯口に提案をする。



「ここから5分先にもう一店舗ある。

閉店時間はあと10分後。」



湯口は答える。


「行きましょう。」



早歩きで向かう次のスーパーマーケット。



振り返るな。




足を動かせ。




体に鞭を打ち、進む事数分。



目的地のスーパーマーケットが姿を見せた。



その横に見慣れた看板も目に飛び込んだ。




『ほっかほか弁当』




湯口の足が止まる。



「やったぁ!!!

ここにしましょう!!」




進むKONG。



「俺達の目的はスーパーだ。」



『ほっかほか弁当』の前から動けない湯口。


「ここもあと7分です!!!

ここなら確実ですよ!!!」



おいおい。



らしくねぇじゃねぇか。



何を聞いていたのか。



もう一度KONGが言う。


「俺達の目的はスーパーだ」

小走りで湯口が近づいてきて、

「なら!2分ですよ!!

スーパーの時間は2分です!!」


2分?

(スタスタ)

そう考えながら店内に突入して、惣菜コーナーに一直線。

(スタスタ)

120秒あれば十分だ。

(スタスタ)

なんせ、

(スタスタ)

このスーパーも選べる程食べ物がないのだから。

(スタスタ)

そのままノンストップで惣菜コーナーで唯一の残った一つの商品を手に取り会計を済ませる。



KONGは小さなガッツポーズをした。


『これで目的は一つ達成した。』



大阪の人達が日々足繁く通うスーパーマーケット。



そこで地元の人達が口にしているスーパーの惣菜を手に入れたのだから。



チラリと商品を確認するKONG。



『国産蒸し鶏の中華クラゲ』



これじゃない感半端ない。



だが、



急がねば。



待っていろ。


『ほっかほか弁当』


回転寿司のレーンに流れる皿の如く、止まることなく閉店数分前の『ほっかほか弁当』に向かう。


汗だくの男2人。


なぜがお姉さん走りの男2人。


こうして、


『ほっかほか弁当』のおかずを手に入れた2人。


湯口がホテルまでのマップを調べる。


「徒歩20分ぐらいです。」


‥‥遠い。


しかし、後は歩くだけ。


男2人は和かに和気藹々とホテルに向かって歩く。


暑いのに、疲れているのに、心はこんなに


『ほっかほか』


「いい名前だ。」



アッという間にホテルに着き、シャワーを浴びて夕飯の準備をする。


「こーゆーのがいいんだよ。」


アルコールで喉を潤し、唐揚げを口に運ぶ。

「うむ。 


うまい。


揚げ物って感じの唐揚げだ。」



なんて楽しいのだ。



この『国産蒸し鶏の中華クラゲ』もいい仕事をしている。

つまみに最高だ。

箸が止まらない。


次はキミを一番に探そう。


幸せな気分を味わったKONG。


毎度の事ながら、炭酸をがぶ飲みした結果、

フワフワしているKONGの腸内が活発になり、案の定トイレに駆け込む。


なかなか波が収まらない。

ここにきて、


再び"ハナミズキ"が再生される。

『僕の我慢が 

いつか実を結び 

果てない波がちゃんと 

止まりますように‥‥』


なるほど。


こりゃ。


100年続きそうだ。

それでは!

また!

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