アメリカ人の夫からリクエストされている日本の朝ごはん
いまの家に引っ越してくる前に住んでいたところは、日本から駐在で来ている日本人ファミリーが比較的多く住んでいる地域でした。
まだアメリカに来て数年しかたっていない頃です。子どもが小さかったので、同じような年の子がいる人たちで自然とグループを作り、子どもたちを一緒に遊ばせたりしていました。
彼女たちとの付き合いの中で、わたしは、純日本人家庭と国際結婚家庭である我が家との間には、いろんな面で違いがあることに気づかされました。
その一つが、朝ごはんです。
当時よく会っていたM子さんと話していたとき。どんな流れで朝ごはんの話になったのかは忘れましたが、M子さんが、その日の朝、魚を焼いて、旦那さんの朝ごはんに出したという趣旨のことを言ったのです。
わたしは、聞き逃せなくて問いただしました。
「え、ちょっと待って。朝から魚焼くの?」
M子さんは、一瞬きょとんとして、うんと頷きました。それの何がびっくりなの?という顔をしていました。
我が家では、そもそも朝ごはんは各自が準備して食べます。子どもの分は、かつて赤ちゃんの離乳食だったころはわたしが作っていましたが、いまは夫が子どもの要望を聞いて準備しています。週末だけは、わたしか夫のどちらかがみんなの分を用意していますが。
だから、旦那さんのために早く起きて朝ごはんを作っているというだけでも、へえ!と思ってしまうところがありました。でも、まあ、それは小さい頃から母がやっているのを見て育ったので、珍しいことでないことはわかります。
それよりもわたしが驚いたのは、朝から魚を焼くという本格料理に取り組んでいることでした。M子さんの朝ごはんにかける労力です。それも、特に頑張っているという認識もなく、当然のことのように、さらりとやっていることです。
もしかして、わたしがさぼり過ぎなのか?
夫と結婚して以来、朝ごはんの準備を夫から期待されたことが一度もないわたしには、軽いカルチャーショックでした。
わたしも日本人と結婚していたらM子さんみたいにしていたのだろうか。朝早めに起きて、魚を焼いて、「朝ごはん、できたわよー」なんて声をかけて。
……いや、ないわ。朝から魚を焼くっていうのはないわ。夫が日本人だったとしても、わたしは焼いてないわ。
妙な自信とともに、確信しました。決して、料理が嫌いなわけではないんです。ただ、朝から火を使って料理をするなんて、ハードルが高すぎるのです。夜なら焼いてあげる。でも朝はノーサンキュー。
その日の夜、夫にこの話をしました。日本からきた日本人の奥さんはね、朝旦那さんより早起きして、魚を焼いて出してあげるんだって。うちとは大違いだねって。
そのとき夫は、
「君にもできるよ」
とさらっと言った。
はい?しないけど?
夫は、そこから滔々と話し始めました。
「よく日本の旅館にいくと出てくる朝ごはんってあるだろ。あれ、僕大好きなんだよ。小っちゃいお皿にちょこちょこいろんなものが乗っていて、小っちゃい魚が丸ごと一尾焼いてあって、小っちゃい一人用の鍋に肉と野菜がちょこっと入ってて、小っちゃい燃料に火をつけて食べるようなやつ。あれを一回家でもやってほしいな」
「……」
おもしろいことを言うじゃないか。どこまで本気なんだい?
いま「小っちゃい」って何回言った?その「小っちゃい」の数だけ手間かかっとんねん。それに、朝からそんな品数そろえるのにいったい何時に起きなあかんと思ってんの?
「5時くらいじゃない?」
いけしゃあしゃあと夫が答えました。
レシピ検索して自分でやれ。
読んでくださってありがとうございます。
夫はいつも書くネタを提供してくれるので、感謝を込めて、旅館の朝ごはんを一回限りならやってもいいかもしれません。子どもたちも喜びそうです。
文中の写真は、こちらから借りました。
https://www.tabirai.net/hotel/oita/hotel144000139/00008/
《家族について書いた記事》