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【ゲス顔のマンガレビュー・note版】#9『乙女ゲー転送、俺がヒロインで救世主』※ネタバレあり

どうも皆さんこんにちは、マンが系YouTuberゲス顔です。

今回、僕がおすすめしたい作品はこちらです。
『乙女ゲー転送、俺がヒロインで救世主』

今回はこちら、全5巻を読んだレビューとなっております。

この作品に対する僕の感想を一言でまとめるのならば、「やっぱりマンガはギャグだよ、兄貴」といったところでしょうか。


青年は気がつくと、全く見知らぬ世界にいた。頭の中に響いてくるのは、妹の声。

曰く、ゲームの世界に行きたいと思ってまじないをしたら、間違ってお兄ちゃんをゲームの世界に送ってしまったとのこと。

そして、ゲームの世界から戻ってくるためには、ゲームをクリアしなければならない。普通の一般人である自分にそんなことができるわけがないと抗議する青年でしたが、妹ちゃんは大丈夫だよと言ってくれます。

なぜなら、このゲームの世界は国王や騎士団長、宮廷魔術師などなど、多数の攻略キャラクターの中から誰かと恋仲になればゲームクリアできるという内容だからだというのである。

そうつまり、ここは乙女ゲームの世界

しかも実際のゲームの内容として、結ばれた相手から元の世界に戻ることができるマジックアイテムをプレゼントされるという内容なのだから、本当に攻略しなくてはいけない。

なので、青年は考えた。よし、キャラクターを攻略するより指輪を探そう。
だがしかし、乙女ゲームのヒロインとして、ゲーム世界にやってきた青年に襲いかかってくる様々な恋愛フラグ。

それらを無事回避して、青年もとい山田太郎(仮)は元の世界に戻ることができるのだろうか。

といった形で物語がスタートします。


乙女ゲームの世界の中にヒロイン役として、なぜか男の子が行ってしまう。

性別が変わっているにも関わらず、きっちり好感度なるものはあって、上がりきれば当然恋愛に発展するよという話になっているので、そっちの気はない主人公としてはごめんこうむりたい。

 だから、攻略対象キャラクターを落とす前に元の世界に戻るための指輪を探さなくてはいけない。
というですね、何とも面倒くさい状況に陥っているわけなんですけれども。

そういう面倒くさい設定はこの際忘れてしまって構いません。なぜかと言われたら、基本この作品はギャグ漫画だからです。

乙女ゲームの世界をヒロインとして渡り歩いていく男性の視点という、もうどう考えたってツッコミが入らないわけないだろうという状況で物語が進んでいくので、ギャグになるわけですよ。

何が素晴らしいかっていうと、乙女ゲームをモチーフにした別の作品、そういったものに対するちゃんとした理解があってギャグをやっているなって感じがする。ここがこの作品のいいところだと思います。

この手の作品で、やはり一番大事になるのはあるあるネタです。
主人公が乙女ゲームの中に入ってしまったって作品で、乙女ゲームあるあるをやらないってことはまずないでしょう。

この作品ももちろん乙女ゲームあるある……もう少し広く幅を取って、いわゆる女性向け作品でよく見かける展開や設定、そういったものがいっぱい出てきます。それがきっちりギャグとして成立するっていう形になっているんですね。

例えば、主人公はとある攻略キャラクターから名前を聞かれるんです。

彼はですね、ゲームで自分の本名を使わないというポリシーの持ち主らしくって、山田太郎という安直な名前を口にしてしまうんですけれども、それを聞いた攻略キャラクターがこう言うんです。

「素敵な名前だ、君にとてもよく似合っているよ」って。
あるある!こういう対応されますよね。

太郎くんは誰がモブ顔じゃこらって感じになります。

おそらく実際のゲームでもどんな名前を入れたところでよく似合うねって言ってくるんだろうからそうなるよね、という。

それこそ実際にやる人はいないでしょうけども、変な名前を入れたって褒めてくれるんでしょうから。そういった感じにしかならないですよねっていう。

またですね、救世主としてこの国にやってきた人物として王様とお目通りが叶った後、謎のモンスターが城を襲撃してくるんですね。
うん、ありがち。そしてそれを聞いた騎士団長が意気揚々と出ていくわけです。

うん、ここもよくある。そして秒でヤムチャ

さあここで重要になってくるのが、救世主である主人公が持っている能力。
それがモンスターと戦う力ではなく、抱きしめた相手をパワーアップさせる乙女の抱擁(メイデン・ハグ)

そう、この流れはつまり、騎士団長にやれってことですね。でも、主人公はめっちゃくちゃ嫌なんです。

そりゃ嫌ですよ。いくら相手がイケメンでも初めて会った男、抱きしめたくないよ男は。しかし自分のことを守ろうと必死に戦ってくれている彼の姿を見て太郎くん決意します。

ガバッと抱きしめて、「お前ならやれる!自分を信じろ!大丈夫だ、お前なら勝てる!気合だ!」と鼓舞します。

とにかくハグをハグではないとごまかした太郎くんの機転によって無事にモンスターを倒した騎士団長。めっちゃ上がります、好感度が。

そして妹からこのゲームの世界では好感度が一定値を超えた時点で、その人物との恋愛ルートに強制的に突入するぞということを教わり、これではまずいと差し伸べられた握手の手を振り払います、

そして、「馴れ馴れしくするなよ、俺はまだお前のこと認めてねぇぞ」って言うんです。

すると騎士団長は「うん、面白い。すぐに俺のことを認めさせてやるよ」と好感度が上がるんですね。

その光景を見て、しまった!おもしれえ女が発動した!ってなるわけです。
といった具合にですね、この乙女ゲームあるあるというか、少女漫画あるあるというか。

そういったものを本当に綺麗に、ギャグネタとして仕上げていると、これがね本当に面白いんです。

当然、展開や設定が乙女ゲームっぽいだけではなくて出てくるキャラクターも、乙女ゲームとかに実際にいそうなキャラクターです。

例えば、先ほどから言っている騎士団長のアルゼリオスくん。
さわやか王子様系という表現がされているんですけれども、実は魔法の名門の家柄に生まれながら、剣1本で騎士団長にのし上がったものすごい努力家という設定となります。

また、宮廷魔術師のザンという男の子は、クール系のツンデレとかいう設定があるにも関わらず和菓子が大好きな甘党だったり。
また攻略キャラ中最も体力がないキャラクターなので、やたらと押し倒しイベントが豊富に存在しているキャラクターという設定の持ち主。

また前述のアルセリオスとは仲が悪いので、仲直りイベントをやっておかないと、一方の好感度が上がるともう一方の好感度が下がるという面倒くさいシステムが搭載されていることも。

一方、人懐っこいワンコ系ヤキモチ騎士と評されるデューくんは、どストレートに少年漫画の主人公みたいなすごく気のいい奴なんだけれど、彼の親友であるフィルくんがヤンデレ。

しかも執着の対象が親友であるデューくんなので、デューと変に仲良くなりそうになると好感度が下がるし、だからといってデューを冷たく突き放すと、やっぱり好感度が下がるしという。

完全に地雷キャラとして仕上がっているなんていうのがあったりとですね、主人公の妹ちゃんには申し訳ないけどこのゲームクソゲー寄りでは?と思わなくはないんですが。

そういうゲーム的というか少女漫画的なキャラクターたちが一堂に会し、そしてそれぞれの個性・特性や彼らにまつわるゲーム的なシステムのあれこれがちゃんと、ギャグになってるんですよ。

本当ね、すごいですよ。
キャラクターが出て各々の個性が説明されて、そのキャラクター周りの設定やシステムが説明され、それら一連の説明がきっちりかっちりギャグになって、読者の前にお届けされるんですから。

これはさすがにうまいとしか言いようがないかなって思います。
そしてね、もう1つ。やはり、この作品トレンドを押さえております。

乙女ゲームの中に入り込んじゃったっていうのそのものが1つトレンドを押さえているとは思うんですが、そこにねプラスアルファ、いろいろと入り込んでいるんです。

1つ目は悪役令嬢。
実はですね、この主人公が入り込んでしまった乙女ゲームの世界の悪役令嬢が転生者だったっていうネタが入ってくるんですね。

2つ目が本物のヒロイン来ちゃった、というパターンですね。
これもあるじゃないですか。ヒロイン2人になっちゃうパターン。本作では片方男なんですけども。

こういうトレンドを押さえているところっていうのも、またギャグとして切れ味よく仕上げられておりまして、個人的には非常に好きですね。

特にもう1人のヒロインがなかなかに、キレッキレなキャラクターでして…まぁ登場するのは本当最後の方なんですけれども。

彼女と主人公が絡むところが非常に面白くて、こういうキャラクターを適宜導入して、マンネリ化しないようにやってくれたおかげで最後まで笑って読めたなという感じがしましたね。


というわけで、総評です。
『純正ギャグだ、笑っちゃおう!』といったところでしょうか。

もちろん、ストーリーとしての展開が全くないわけではありませんけれども、とにかくギャグとしての仕上がりが素晴らしくて。

原作者さんの名前に見覚えがあるなと思って調べたらですね、昔僕がまだガンガンを読んでいた頃、『ひょっとこスクール』っていうギャグ漫画書いていらっしゃった方でした。

そうだよね、ギャグわかっている人が書いてるよねというのはあったので、なるほどと腑に落ちましたね。

作画担当者さんも基本的には綺麗な書ける方ではあるんですけれども、ちゃんとギャグを絵で表すことができる腕前のある方なので、ギャグの内容も作画に関しても大満足させられた作品だったという印象があります。

若干打ち切り感のある終わり方だったような気はしなくもないですが、逆にギャグ漫画は長く続けるとグダグダする傾向もありますので、このくらいがちょうど良いサイズだったのかもしれませんね。

そして最後に、この作品で僕が最も笑ったシーンについてご紹介したいと思います。それはですね、主人公の妹もゲームの世界に来たという場面がある4巻。

太郎くんは彼女の一押しである騎士団長のアルゼリオスに劇的な出会いを演出してほしいとお願いします。

ところが、彼の象徴である白馬が今出払っていていないと。
なので、別の攻略キャラクターにお願いして、白い神獣というのに乗せてもらう話になります。

そして、やはり王子様系キャラクターですので、バラを一輪お願いしたいと主人公から提案して、さあ準備は完璧に整った!アルゼリオスくん、登場です!のシーンが一番面白かったんですよね。

この一枚絵があまりにも出来が良くて、個人的には大爆笑してしまいました。

ここの部分読めただけで、僕はこの作品を価値はあったなと思うくらいに笑ったので、ぜひねそこまで読んでいただけると嬉しいかなと思っております。

ただ、一貫して言ってる通り、この作品は乙女ゲームや少女漫画とかそういうのでよく見かける展開を笑いに変えているっていう部分があるので、やや冷ややかな目で見てるところがあるのは間違いないですから、そういうの苦手だよっていう人は避けた方がいいとは思います。

そういうネタにするようなことも全然気にしないよという人だったら、読んでいてつまらないってことはないと思いますので、ぜひ手に取っていただければと思っております。

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