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【ゲス顔のマンガレビュー・note版】#01『悪役令嬢転生おじさん』    ※ネタバレあり

どうも皆さんこんにちは、漫画系YouTuberのゲス顔です。
今回は広告でよく見るあの漫画レビューでございます。
 
今回、取り上げる作品は『悪役令嬢転生おじさん』
こちらの作品の漫画版2巻まで読んだレビューとなっております。

 
この作品に対する僕の感想を一言でまとめるなら、やっぱり「おじさんがどうして、おじさんなのかがわかる漫画」という点です。
 
本作の主人公は、「グレイス=オーヴェルヌ」という侯爵家の令嬢です。
しかし、それは外見の話。その中身は52歳公務員・屯田林憲三郎というおじさんでした。

そして憲三郎の記憶には、グレイス=オーヴェルヌという女性が、乙女ゲームの悪役令嬢であるという情報が含まれていました。
 
「どうして自分みたいなおじさんが、悪役令嬢なんかに転生してしまったんだ……」

と思いつつも、そういう役割のキャラクターになったのなら、それをやりきれなければならないと思い、何とか悪役令嬢としての生き方を貫こうとするのですが、悪役令嬢を演じるというのは、おじさんにとってそれは難しいことだったのです。
 
なろう作品では、もはや定番になった悪役令嬢ものを、前世がおじさんでしたって形にすることで笑いにつなげる――というストレートなコメディものですが、これが面白い。
 
その理由は、主人公がきっちり「おじさん」だからです。

例えば、グレイスが悪役令嬢として相対すべき相手すなわち、ゲーム内における主人公・ヒロインの役割を持っているアンナという少女と初対面するシーンがあります。

貴族が通う学校に、平民として特例で入ってきたアンナ。
本来であれば、彼女に対して辛辣な言葉をぶつけなければいけないという場面で、グレイスこと憲三郎は父親目線で話してしまうんです。
 
また、グレイスには婚約者である王子様がいますが、彼と初めて対面したとき「名前が思い出せない」という事態に遭遇します。
名前が思い出せないことを隠しながら、会話をして乗り切るにはどうするか。

「久しぶり 名が出ないまま じゃあまたね」なんていうサラリーマン川柳がありますが、このような感じで“おじさんあるある”を繰り返していくわけです。
 
正直に言いましょう。
こういうおじさんあるある、僕大好きで面白いなと思うんです。
何より、悪役令嬢に転生してしまった状態でそれをやっているというのが、面白さを一段階レベルアップさせているなって感じます。
 
このことをハッキリと感じたのが、グレイスが学校の授業を受ける直前のシーンです。
まだ授業が始まっていないにもかかわらず、教科書の内容を先に確認し、そして時おり教壇の方へと目を向ける。
 
――という行動をするんですが、その光景を見て、隣にいた新ヒロインであるアロマは「授業が始まる前から準備しているのね」と感心するのですが、実態はこれなんです。
 

 
おじさんになると指先が乾燥しがちになって、本がうまくめくれません。
年をとると目が悪くなって、小さい文字や近くのものが見えづらくなります。
さらに、近くのものと遠くのものを交互に見ると、なかなかピントが合わなくて苦労することになる。

でも、グレイスさんは15歳のうら若き乙女。そんなことは一切関係がない。
 

 
結果、この表情です(笑)。
クスクスと笑えるシーンがめちゃくちゃ多くて、見ていて飽きないんです。
 
そしてこの面白さには、もう一つ仕掛けがあるんですよ。
それはおじさんである憲三郎が、侯爵令嬢グレイスになったことによって得たチート能力。

名付けて「エレガント・チート」と言うのですが、憲三郎は日本のサラリーマンなので、当然のことながら貴族の礼儀だとか、立ち振る舞いなんてわかりません。
 
なので彼自身は、慣れ親しんだ日本の礼儀作法で行動しようとするんです。
そうすると、グレイスの体が自然と貴族流に変換して、それらしい言動になるという能力がエレガント・チートです。
この変換の仕方も、なかなか面白いものがあります。
 
例えば、学食で美味しい料理を食べたので、料理を作ってくれた方に「大将、美味しかったよ」と声をかけるという動作がエレガント・チートを通すとこうなります。

 


「シェフにお伝え願えますかしら、とても良いお味でした」になるわけです。
 
いや、そうはならんやろ…いや、そうなりそうかも――
というのが何とも言えない笑いを生んでいます。
さらに、2巻目以降ぐらいからもう一つの面白い要素が加わります。
それは、憲三郎の嫁さんと娘さんです。
 
この作品のタイトルに「転生」と入っているんですが、普通に転生している状態とはちょっと違うんです。
実は、憲三郎さんは生きています。
肉体的には特に異常はないのですが、意識だけは戻らないという状態で病院のベッドで寝ているんです。
憲三郎さんの意識・魂が、乙女ゲームの中に入ってしまったという設定です。
 
そして、そんなお父さんの魂が入ってしまったゲームを娘さんがプレイしているって状況が描かれています。
その結果、何が生まれたかといいますと「突っ込み」が発生するんですよ。
 
憲三郎は自分が本当に転生したと思っています。
グレイスっていう少女に生まれ変わったと、本気で信じているんです。
しかし、それをゲームの内容として見ている家族がいるという状況があるので、
主人公があれこれ行動するってことについて、ゲームの外側の視点(家族からの視点)で突っ込みながら見ていくっていうシーンが生まれるんですね。
 
このあたりは、以前レビューした『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』に似た楽しさを持っています。

 
本当ね、いろいろ楽しませてくれるんですよ。
正直言いますと、一つ一つの要素だけを取り上げるならば、どっかで見たことある面白さなんですよ。

例えば、おじさんあるあるなんていうのは、サラリーマン川柳みたいなものなので、すでに面白いってわかっていますし、悪役令嬢ものが面白いっていうのは、なろうがこれだけ流行っているのを見ればわかります。
 
また、主題となるお話をそのお話の外側から眺めている人物の視点から見るみたいなのは、「ネバーエンディングストーリー」とか、漫画なら「ふしぎ遊戯」とかもそういう要素を持っています。

要素だけをつまみ上げるなら、これまでにあったやつだよね、どこかで見たやつだよねなんですけれども、それをこの組み合わせできっちりと合わせて練り上げて、面白い作品にできるっていうのは、本当にプロの仕事だなって感じがします。
 
ただし、この作品には二つ問題点があります。
一つはこの作品で取り扱われるネタがやや古いってことです。
主人公の憲三郎、そしてその奥さんと娘全員がオタクっていう設定を持っているんですが、オタクであるがゆえに漫画とかアニメとかゲームのネタで会話するっていうシーンがあります。
 
それ自体は普通のことなのですが、取り扱われるネタがお父さんとお母さんのほうの世代に照準が合っちゃっているんですね。
なので、たぶん今の若い人が見たら、「何のこっちゃ」とわからなくなるようなネタが含まれているような気がするんですよ。
 
例えば、自分の父親の意識、魂がゲームの中に入ってしまったという状態でそのゲームをプレイしなければいけないというシーンがあります。
娘が不安を覚えたとき、お母さんが「大丈夫よ、あなたは誰の子なの」と聞いて、娘が「父さんと母さんの子」って言いながらこういうポーズをとります。
 

 
これ、ドラゴンボールのセル編の最終版で、悟飯が片手かめはめ波を打っているオマージュなんですけど――いや、わからんでしょ(笑)
僕と同じ世代の男性諸君はほぼわかるでしょうが、世代が違うと全くわからないっていう可能性は結構ありそうなんですよね。
 
こういうネタが作品の大部分を占めるとかではないので、心配しすぎな気もしなくはないんですが……
やっぱり当たるのはおっさんだけなのかなって、思ってしまう部分があります。
ただ、そんなことを言い出したら、そもそも“おっさんあるある”が面白いと思うのは、おっさんだけなんじゃないかっていうツッコミが入って終わるような気が。。
 
そしてもう一つ、むしろこっちの方が問題ですね。
それは「筆が遅い」という点です。

単行本2巻の発売日が2021年8月2日なんですが、
3巻の発売が2022年の春頃になると書かれています。
仮にこれが4月だとするならば、大体8ヶ月ですね。
 
ちょっと遅いかなっていう印象はあります。
月刊誌連載の作品でも大体は、年2冊ぐらいは出ますから、個人的にやはりちょっと遅いなっていう印象は受けます。

ただまぁ世の中には、1年に1冊も出ないっていう人も稀にいますから、
きちんといつ頃出るのかを明言してくれているという意味では、ありがたいのかもしれません。
とはいえ、待ちたいなと思えるくらいには面白い作品ですよ。
 
というわけで、総評です。
面白いものと面白いものを組み合わせて、ちゃんと面白い作品に仕上げているのがこの作品の大きなポイントです。
なろう系作品だと、面白いものと面白いものを組み合わせて、面白くなくするみたいなことが結構起こったりするんです(笑)
 
これはもう、ベテラン漫画家さんの成せるワザなのでしょう。
きっちり面白いです。
何が良いって、この作品は漫画家さん自身が「悪役令嬢ものを楽しんで描いているんだよね」っていうのが伝わってくるところですね。

あとがきにも、ご本人が悪役令嬢ものにハマってしまったと書かれているのもそうですし、やっぱり実際に作品を見るとわかりますよ。
描いている方も楽しいし、読んでいるほうも楽しいのが一番だと思います。
 
悪役令嬢もの、特に笑えるタイプの悪役令嬢もの好きだよ、読んでみたいよっていう方には、ぜひぜひおススメの作品です。

 
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